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カバー部材の溶接歪みがシール不良を生む理由

目次
はじめに:カバー部材の溶接歪みとシール不良の密接な関係
製造業の現場では、カバー部材の組立や溶接工程で「どうしてもシール不良が出てしまう」という悩みが後を絶ちません。
この問題は昭和時代から続くアナログな現場でも根強く、今なお多くの現場で頭を抱える課題となっています。
なぜカバー部材の溶接歪みがシール不良につながるのでしょうか。
また、調達する側(バイヤー)や供給する側(サプライヤー)は、どのような視点と対策を持つべきでしょうか。
この記事では、現場目線の実践的な知見を交えながら、工場の自動化時代にも残る「古くて新しい問題」にラテラルシンキングで迫り、より良いものづくりに貢献するためのヒントをお伝えします。
カバー部材と溶接歪みとは何か
カバー部材の役割と重要性
カバー部材は各種機械装置や車両、産業用設備にとって外部環境から保護し、内部を密閉し、安全性・信頼性を支える極めて重要な部品です。
単なる装飾や防塵・防水目的だけでなく、圧力容器やタンクのように「圧力・液体・ガス」などを閉じ込め、確実に漏れを防がなければならない場面も数多くあります。
こうした背景から、カバー部材の「密封(シール)性能」は製品全体の品質・安全性に直結します。
溶接歪みとは何か
溶接歪みとは、カバー部材同士やフレームへの取り付けなど、金属同士を溶接する際に発生する予期しない変形やズレのことを指します。
溶接中、局所的に材料が大きな熱を受け、その後急激に冷却されることで、母材(金属板)内部に“収縮力”や“残留応力”が生まれます。
この力が材料を引っ張り合い、押し合いし、溶接前とは異なる「曲がり」や「反り」、「ねじれ」といった物理的変形を生み出します。
なぜ溶接歪みが起きやすいのか
近年ではロボットによる自動溶接も普及していますが、それでもなお「材料の厚み」「溶接方法」「組付け順序」「治具精度」「材料自体の性質」といった複雑な要因が絡み、完全に歪みゼロにするのは至難の業です。
特にコスト意識の高い製造業では「材料コスト圧縮=材料厚の低減」を志向しやすく、薄板になるほど溶接歪みのリスクが高まるというジレンマに直面しやすくなります。
カバー部材の溶接歪みがもたらすシール不良のメカニズム
1.カバー部材の歪みとパッキン・ガスケットの密着不良
溶接による反り、曲がりで平面性が損なわれると、シール材であるパッキンやガスケットが「一部だけ浮く/一部だけ過大に押しつぶされる」といったことが起きます。
その結果、均一な圧力でシールが効かず、“隙間”が生まれ、ここから空気・水分・油・ガスの漏れが発生します。
2.溶接ビード形状の不連続部がシール面に悪影響
溶接は金属をつなげる一方、溶接ビード(溶接線)が盛り上がり、その近傍が微妙に膨張(溶け増し)した形や、逆に痩せて深い溝になることもあります。
これがシール面・パッキン座に重なると、部分的な高低差が発生し「微細なリークチャンネル(漏れ道)」となるのです。
3.力の流れの変化とネジ締付の影響
カバー部材が歪んでいると、取り付け時に無理やりボルト・ネジで締めつけて「押し曲げ」ながら組付けることになります。
これが、応力集中やフランジ破損、パッキンの局部的な損傷につながり、時間経過とともに徐々にシール性が劣化する、いわゆる「経年劣化リスク」も高めてしまいます。
製造現場でよく見られる具体的な不良事例
水タンクやオイルパンの板金カバーでの漏れ不良
板金プレスで成形し、端部を溶接したカバーにパッキンを挟んで組み付けたが、平面度が狂って僅かな隙間から液体がジワジワ漏れる—という例は定番です。
完成検査の加圧・漏れ試験時に初めて気づくことも多く、「溶接直後には分からない」「工程内検査ですり抜ける」のも特徴です。
産業機械の筐体部品や電気ボックスでの塗装剥がれやサビ発生
溶接歪みがあると、シール部に塗装の浮き・剥がれ、パッキンの防水不良からのサビ発生が顕著になります。
近年はRoHSやREACHなど環境規制強化でシール不良からの漏洩が大問題となることも増えています。
自動車・車両部品でのエンジンルームの密封不良
カバー部材の寸法精度や平面度が悪いと、エンジンオイルや冷却水の漏れ、「クーリング性能の悪化」など安全運用や機能面に直結する深刻なトラブルにつながります。
なぜこの問題は昭和から今も続いているのか
アナログ組織の「現場適応力」に依存した解決策
昭和から続く現場では「歪みはベテランの勘で現物合わせ」「組付け部門が苦労して調整する」といった、“人力”に依存した解決スタイルが色濃く残っています。
組立現場が「合わない部材」をバールやハンマーで曲げてムリヤリ組み付けたり、増し締めで対応したり…という“現物主義”が定番です。
そのため「設計上は大丈夫でも現場で苦労する」「現場の声が設計・購買に届きにくい」状況を生みやすくなっています。
サプライヤーとの連携欠如とコスト優先の悪循環
サプライヤー側では「図面通りに作って納入すればOK」「価格競争でコスト最優先」という風潮が強いことがあります。
一方バイヤーも「コスト低減が最優先」と思われがちですが、実はコストパフォーマンスと同時に「組付けやすさ」「再現性」「現場の手間削減」などトータルでの品質評価も重要視しています。
ここに意識ズレがあると「形にはなっているが、シール不良が多発するカバー部材」が生み出されてしまうのです。
これからの自動化時代にも残る「溶接歪み問題」
AIやIoTなど現場の自動化・スマートファクトリー化が進んでも、物理現象としての“溶接歪み”自体は生き続けます。
むしろ「自動化で人の手が介在しない=現場の“気づき・手直し”が削られる分、従来のアナログ時代以上に設計段階・工程内の歪み対策が欠かせなくなる」というパラドックスをはらんでいます。
どうすれば溶接歪みを抑え、シール不良を撲滅できるのか
(1)設計・調達段階でのチェックポイント見直し
バイヤーは見積りやサンプル評価時、「平面度指示」「シール部寸法公差」「溶接ビード取り位置」の三点を明確化しましょう。
特に「シール性・平面度」を“最重要品質特性”として指定し、サプライヤー側との認識合わせを徹底してください。
サプライヤーも「現場目線で、どうすれば現場が困らない部品供給ができるか」を逆算して提案することが重要です。
(2)サプライヤーとバイヤーの現場連携とフィードバック
図面上だけで完結せず、現場・工場見学やものづくりレビュー、試作段階での「現物確認・意見交換」をこまめに取り入れましょう。
この現場連携が「この治具では歪みが出やすい」「この順番で溶接すれば歪み量が軽減する」といったリアルな工夫共有につながります。
(3)溶接技術と治具への投資
適切な治具設計、溶接順序の最適化、スポット溶接やレーザー溶接など熱影響の少ない方法の採用など、少しの初期投資で大幅な歪み低減が可能です。
自動化設備導入時は「品質確認の自動化」「サーモグラフィーや3D測定装置」による抜き取り検査の高度化も推進しましょう。
(4)パッキン・ガスケット材質選定と組付け仕様の見直し
歪み許容度の高い弾性シール材を選ぶ、ガスケット座をワイドに取る、適度な再締付け余地を残す—といった工夫で工程内不良や納入後トラブルを未然防止できます。
まとめ:カバー部材の溶接歪みとシール不良を「超現場議論」で無くす
カバー部材の溶接歪みによるシール不良は、設計・調達(バイヤー)と供給(サプライヤー)の意識ズレや、現場主義の“改善の文化”が影響となり、昭和から今も続く問題です。
しかし、自動化へとシフトする今こそ「超現場・超時代を超える目線」で議論し直し、知恵とテクノロジーを融合した実践的な改善を行うチャンスです。
バイヤーを志す方は部材選定の本質を学び、サプライヤーは「使いやすい高品質部品作り」を志向することで、工場現場を“安心・安全・高効率”なものづくりの最前線へ引き上げていきましょう。
これからの時代、カバー部材の溶接歪み対策こそが、製造業を底上げする「見えざるイノベーション」の出発点となるのです。
現場のリアルな課題認識と、多角的な改善アプローチを武器に、業界全体で“シール不良ゼロ”を目指し続けましょう。