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抜け漏れをなくし手戻りを起こさない要求仕様の書き方とその勘所

目次
はじめに:製造業で「要求仕様書」が持つ決定的な意味
製造業の現場では、依頼主であるバイヤー側と、製品供給を行うサプライヤー側が、製品やサービスの要件、品質基準、納期、コストなどを明確に共有し、後々のトラブルや手戻りを防ぐことが極めて重要です。
しかし、多くの現場では「要求仕様書」自体が不十分であったり、作成の手順や勘所が曖昧なまま進めてしまうケースが後を絶ちません。
昭和から続く文化や慣習が色濃く残る製造業では、口頭伝達や『いつもの感じで』といった曖昧な意思疎通が根強く、たびたび手戻りや品質不良、納期遅延などの重大なリスクにつながります。
この記事では、現場目線で培ったノウハウを元に、抜け漏れなく、手戻りを起こさない「要求仕様書の書き方」と、その勘所について詳しく解説します。
バイヤーやサプライヤーだけでなく、調達購買、生産管理、品質管理など製造業に関わるすべての方にとって価値ある情報を提供します。
なぜ要求仕様書は重要なのか? 現場視点からの「あるある」トラブル集
1. 言った・言わないのすれ違いが手戻りを招く
例えば、「この部品はちょっと固めで」といった感覚的な伝達では、サプライヤーごと、オペレーターごとに解釈が異なります。
バイヤーが求める『品質』と、サプライヤーが理解した『品質』の間にギャップが生まれ、出来上がった試作品に対して「こんなはずじゃなかった」が頻発します。
2. 変更指示が現場まで届かず古い情報で生産
設計や仕様変更が発生した際、仕様書に情報がアップデートされていない、あるいは最新版が伝わっていない状態で生産工程が進行してしまうことがあります。
結果として、貴重な工数や材料がムダになり、品質トラブルの火種となります。
3. 記述の抜け漏れが致命的な品質クレームに発展
例えば、「耐熱温度」を記載せずに部品を調達した結果、使用環境下で変形・破損、重大なリコールに発展するケースなど、過去の現場では稀ではありませんでした。
抜け漏れをなくす要求仕様書の基本構成
現場経験者が推奨する、最低限盛り込むべき項目は以下の通りです。
1. 基本情報
・品名、品番(型番)
・発行日、リビジョン履歴、版数
・担当部署、担当者
・納入先、納期
これらは、どんなに“小さな依頼”でも必ず明記します。
2. 製品・部品仕様
・寸法公差(JIS記号含め具体的数値で)
・形状(図面があれば添付、なければスケッチでも可)
・材質(JIS規格やメーカー規格番号まで特定)
・表面処理、塗装
・試験方法、検査方法(誰が・どのタイミングで・どの基準で)
3. 性能要件および使用環境
・耐熱温度、耐湿、水分、油分
・荷重、負荷、サイクル
・特殊環境(防爆、防塵、防水など)
4. 法的・規格要求事項
・関連法令(RoHS、REACH、PSE、食品衛生法など)
・要求される認証(ISO、UL、CEなど)
5. 包装・物流要件
・特殊梱包、ラベル、輸送条件、パレットなど
6. 変更管理
・仕様変更時の連絡方法
・リビジョン履歴の明記
抜け漏れを防ぐ“現場の勘所”5選
1. 「使い方」を必ず伝える
製品や部品は、その“使用目的・使い方”によって、求められる要件や重要な仕様が大きく変わります。
たとえば、同じボルトでも「回転部分用なのか」「固定・締結が目的なのか」「屋外なのか」「高温環境なのか」で、必要な材質や表面処理も全く異なります。
「自分がどのような使い方を目的としているのか」をサプライヤーに具体的に伝えることで、思わぬ抜け・誤解を防げます。
2. NG許容範囲を明確に書く
美観上の傷や、機能に支障のない寸法誤差をどこまで許容できるか明記しましょう。
例えば「外観に0.5mm以上のキズはNG」「寸法公差はJIS H7/h6以内」など、明確な数値基準が大事です。
できれば “サンプル品や現物写真” を仕様書に付けると、より伝わりやすくなります。
3. 不明点はあえて「未確定」と書く勇気
急いで全てを記入しようとして“あいまいなまま”放置するくらいなら、「ここは現在検討中」と敢えてブランクやコメントを残しましょう。
それにより、「提案・質問をください」というサインにもなります。
4. “常識”を疑う:相手は自分とは文化が違う
「前も出した品だから」「同じメーカーだから」などの思い込みは禁物です。
必ず最新版の仕様や、現行要求を明記し直しましょう。
古い仕様書を“使い回し”することも、抜け漏れの温床です。
5. 変更履歴・修正点は「可視化」が鉄則
前回からどこが変わったのか、履歴や修正内容を赤字やハイライトで分かりやすく残しましょう。
定型的な「版管理表」「変更点サマリー」等のフォーマット化も推奨されます。
アナログ文化が根強い現場での工夫
1. 手書き図面の活用・現場同行
IT化が苦手な現場や高齢従業員が多い工場では、手書きスケッチや写真、現物サンプルを使った“現場同行”が有効です。
職人同士、現物を五感で確認しながら仕様を詰めることで、微妙な勘所やニュアンスも共有しやすくなります。
2. 「現行品」との比較記載
「今使っている部品と寸法は同じ、材質のみグレードアップ」など、現行品や従来の仕様との違いを相対的に記載すると、お互いの理解が早まります。
3. 文書の保存と共有を徹底
印刷物だけでなく、データも必ずネットワークやクラウドで共有しましょう。
「誰でも」「いつでも」最新版が使える状態にしておくことで、手戻りや伝達ミスを防げます。
デジタル化時代の新しい仕様書活用術
1. Webフォーム・クラウド管理の活用
GoogleフォームやExcel-Onlineといったクラウドフォームで入力項目を標準化し、誰でも必須項目を抜けなく記入できる仕組みを導入しましょう。
同時に、過去の類似案件やトラブル事例をナレッジデータベース化し、検索・活用しやすい環境を用意することも大切です。
2. 画像・動画・3Dモデルの添付で「体感的伝達」
文章や図面だけで伝わりきらない“動き”や“使い方”は、動画や3Dモデルを活用するのが効果的です。
特に最近では、3D CADデータのやり取りが進み、設計上のイメージ違いや見落としも激減しています。
3. AI活用による抜け漏れチェック
最新のAI技術を活用することで、入力項目の抜けや整合性チェック、過去事例との比較提案などが可能になっています。
サプライヤー側も、AIベースのQAツールや自動回答システムを導入し、効率化と抜け漏れ削減を図りましょう。
手戻り・抜け漏れ“ゼロ”を目指すために今日から始める6つのアクション
1. 社内外で「要求仕様書の標準フォーマット」を決め、全員で使い始める
2. 仕様書レビュー会・確認会を、発注前に必ず実施する
3. アナログ+デジタルのハイブリッド運用を進める
4. 「使い方」「NG例」など現物・現場での体感共有の時間を過不足なく設ける
5. 変更管理とリビジョン管理を徹底して運用する
6. 失敗事例をしっかりナレッジとして残し、水平展開する仕組みを作る
まとめ:良い仕様書は、現場みんなの「共通言語」
抜け漏れなく、手戻りを起こさない要求仕様書の作成は、バイヤー・サプライヤーを問わず製造業に携わる全ての人にとって必須スキルです。
単なる書面ではなく、現場みんなが「共通言語」として活用できる生きたドキュメントを目指しましょう。
昭和の慣習やアナログ文化を否定せず、現代のデジタルツールやAIも積極的に取り入れながら、安心して任せられる、「失敗しない現場運営」「高品質なモノづくり」を実現してください。
今日から一歩、「伝わる仕様書=理想のモノづくり」への道を、現場みんなで進んでいきましょう。
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