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設計トラブルの未然検出と効果的な防止策

目次
設計トラブルの現状と課題を知る
製造業の現場では、設計段階で発生するトラブルが後工程に大きな影響を及ぼしています。
「なぜ、設計トラブルは減らないのか?」
これは調達、購買、生産管理、品質管理といった各部門の担当者が一度は直面した問いではないでしょうか。
昭和から続くアナログな管理体制が残る現場では、紙やエクセルベースで情報がやりとりされ、部門横断的な設計レビューの仕組みが十分に機能していないことも珍しくありません。
設計変更の連絡漏れ、仕様書の不一致、部品表(BOM)の最新化が遅れる、検図者による属人的なチェック、さらにコミュニケーション不足による設計意図の齟齬……。
こうした“情報のミス”や“見逃し”が累積し、設計トラブルが現場に持ち込まれるのです。
特に、工程の上流で起きたミスは下流工程で「手戻り」や「ロス」になり、納期遅延やコスト増、品質問題につながります。
この状態を打破するためには、設計トラブルを未然に検出し、根本的に防止する仕組みづくりが不可欠です。
設計段階でのトラブルの主なパターン
図面・仕様書情報の混乱
設計図面や仕様書が正しく管理されていないと、現場は常に“最新の情報”を追い続けなければなりません。
アップデートされたはずの図面が現場に共有されず、古い情報で製作が進行。
その結果、出来上がった製品が要求通りでなく、再製作や改修が必要になるケースが後を絶ちません。
設計意図の伝達ミス
設計者の頭の中にあるイメージや意図が、そのまま生産現場に伝わるとは限りません。
設計者が想定していた使い方や注意点が共有されず、想定外の材料選定や加工方法で部品が作られてしまうなど、意思疎通のミスからトラブルが発生します。
紙・口頭ベースの連絡だけでは限界があるのです。
変更管理の弱さによる手戻り
設計変更は避けられないものですが、変更点が現場や関係部門に適切に伝達されないことで、“手戻り”が頻発します。
部品のスペックや構造が変更されたのに、古い図面やBOMのまま発注・加工されてしまう事例は、古くて新しい悩みです。
トレーサビリティが不足していると、発生箇所の特定や再発防止も困難になります。
設計トラブル未然検出のための実践的アプローチ
多職種・多部門による早期レビュー体制を確立する
設計フェーズから生産、品質、調達、保守などの現場担当者が参画し、それぞれの目線で問題点を洗い出す仕組みを導入します。
「設計部門にお任せ」ではなく、調達目線でコストや納期・部材調達のリスクを、生産管理の目線で工程のやりやすさや標準化の妥当性を、品質管理目線で不具合原因をチェックします。
こうした多様なフィードバックが早い段階で得られれば、設計段階でのトラブル発生リスクを効果的に低減できます。
設計データの一元化とバージョン管理
設計図面・仕様書・BOMなど、設計関連データを一か所に集約し、アクセス権限付きで管理します。
これにより、「どの設計書が最新なのか?」という混乱がなくなり、情報の齟齬を防げます。
バージョン管理システムやPLM(Product Lifecycle Management)など、システム化も有効です。
ただし、ツールを導入するだけではなく、運用ルールづくりと現場への浸透施策が肝要です。
設計変更の即時周知と変更理由・影響範囲の明文化
設計変更があった場合、その情報を関係者全員にリアルタイムで共有し、どの部分がどう変わったのか、なぜ変更が発生したのかまでしっかり明記します。
Excel依存や紙ベースでは周知が行き届きにくいので、グループウェアやワークフローシステムの活用が推奨されます。
また、設計変更のたびに「影響分析」を行い、何がどこまで波及するかを先回りして検証します。
設計標準と過去トラブルのナレッジ化
過去に発生した設計トラブルのデータを蓄積・分析し、再発防止のガイドラインや設計標準を整備します。
同じような設計ミスを繰り返さないために、「なぜ起きたのか」「次はどうすれば防げるか」を具体的な事例として可視化します。
設計者が新人である場合や外注先が変わる場合も、こういったナレッジがあればトラブルを激減させることができます。
工場現場を知るからこそ見える、設計トラブル防止の本質
現場主義で“生の声”を吸い上げる
工場長や生産技術の現場を見てきた立場からひとつ確信をもって言えるのは、「設計と現場は、まだまだ乖離している」現実です。
現場の技能者や設備担当者が図面を見て「このR(曲面)は手加工では難しい」「この板厚は在庫品ではない」など、設計時点では気づきにくいリアルな困りごとがいくつも存在します。
製造部門や協力会社の“生の声”を積極的に設計にフィードバックする仕組みが、何よりも現実的かつ強力なトラブル防止策です。
アナログとデジタルの融合が突破口
いまだ紙データや口頭伝達が根強く残る製造業界にあっても、デジタルシステム導入とのハイブリッド運用が現実解です。
現場で紙に直接赤ペンで書きこむ運用を残しつつ、最終的にはスキャンや写真でデジタル化し、設計チームと即座に情報共有。
シンプルかつアナログな運用を下支えするICT活用が、属人的な暗黙知や伝言ゲームから解放するカギとなります。
サプライヤー・バイヤー双方が持つべき目線
設計トラブルの多くは、川上(設計・開発)、川中(調達・仕入)、川下(生産・品質)の連携ミスに起因します。
バイヤー目線では、「設計変更のタイミング」「情報共有のスピードと正確性」「サプライヤーとの密なやりとり」こそがサプライチェーン混乱の予防線となります。
サプライヤー側も「受け身」のスタンスを脱し、設計意図の確認・提案、過去実績のフィードバック、納期遵守や品質維持に役立つ代案提示などを積極的に行うことで、「協力パートナー」として存在感を高められます。
発注側が何を重視し、どこに困っているのかを理解すれば、サプライヤーとしての価値向上に直結します。
設計トラブルゼロを目指す、組織的な仕掛けとマインド醸成
定期レビュー+事前トライアルによる想定外リスク排除
設計完了前の定期的なデザインレビューを、調達・生産・品質など多職種参画型で実施し、時には現場での“試作トライアル”も組み込みます。
実際にモックやサンプルを手に取り、「理論」と「実作業」のギャップを確認することで、理想と現実のズレを早く発見できます。
部門横断型の“トラブル防止WG”設置
営業・設計・調達・製造・品質・生産技術など多部門混成チームを編成し、“横串”で設計トラブル撲滅活動を推進します。
ワーキンググループ形式で知恵を持ち寄り、「あのミス、どうすれば防げたか?」を率直に議論し、現場目線の具体的なルール化へつなげていくことが大切です。
「失敗事例」をポジティブに共有する組織風土を
トラブル報告が「評価を下げる」と捉えられやすい風土を変え、「失敗を次に生かす」ことを評価するカルチャーが重要です。
日々小さな設計ミスやヒヤリハット事例を集め、負の遺産にせず、部門や世代をこえてオープンに共有。
この風土こそが、設計トラブルゼロの近道です。
まとめ:設計トラブルは「自分ごと」~製造業の未来へ
設計トラブルの未然防止は、「誰かの仕事」ではなく「現場全員の仕事」です。
アナログの利点(現場勘や人の気づき)とデジタルの強み(情報の一元化・可視化)を融合し、組織的な“気づき力”を高めていくことが次世代の製造業に求められます。
バイヤー・サプライヤーを問わず「設計トラブルの真因」を深く理解し、現場および全社一丸となった仕組み改善に取り組みましょう。
小さな一歩が、やがて大きな成果へとつながります。
設計トラブル未然検出と防止策――。
このテーマに“絶対解”はありませんが、現場での実践知と失敗から学ぶ姿勢こそが、製造業の未来を切り開くカギになると信じています。
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