- お役立ち記事
- 絶縁材料の劣化・絶縁破壊メカニズムと対策技術
絶縁材料の劣化・絶縁破壊メカニズムと対策技術

目次
はじめに:絶縁材料の重要性と現場の課題
絶縁材料は、製造業において安全性や機器の信頼性を支える土台といえます。
しかし、多くの現場では「絶縁さえしていれば大丈夫」という昭和からの刷り込みが根強く残っています。
AIやIoT、自動化が叫ばれる昨今でも、“絶縁の常識”はアップデートされにくいのが実情です。
本記事では、絶縁材料に携わって20年以上の経験から、実際の現場で多発する「絶縁トラブル」のリアル、劣化や絶縁破壊のメカニズム、そして失敗・損失を最小化するための対策技術まで、深く掘り下げていきます。
現場の担当者やバイヤー志望の方、サプライヤー目線で先を読むヒントを求める方にも役立つ情報をお届けします。
絶縁材料とは何か?その基礎知識と役割
絶縁材料の定義と主な用途
絶縁材料とは、電気を流さない性質を持った材料の総称です。
主に電子部品の絶縁体、モーターやトランスのコイル部、基板やケーブルの被覆など、多様な形で製品内部に組み込まれています。
また、耐熱性、耐薬品性、耐湿性など付加価値も求められる点が特徴です。
絶縁材料の種類
主な絶縁材料には、以下のようなバリエーションがあります。
・樹脂系(エポキシ、ポリイミド、シリコーンなど)
・無機材料(セラミックス、ガラス、マイカ)
・紙系、繊維系(絶縁紙、防爆布)
現場ではコストや調達容易性、加工性、耐久性、再現性などを勘案して、最適材を選定する必要があります。
適切な絶縁設計の難しさ
「絶縁仕様が過剰だとコスト高になる。しかし不足すれば重大事故リスクがある」
この綱引きが、30年以上前から続く現場の“葛藤”です。
設計・調達部門だけでなく、生産現場・品質管理・保守運用チームの経験値の結集が肝心なのです。
絶縁材料の劣化・絶縁破壊とは?現象とリスク
絶縁劣化とは何か
絶縁劣化とは、絶縁材料が本来持っている絶縁抵抗や耐電圧性能が、時間の経過や外部環境の影響を受けて低下する現象です。
「新品時は設計通りだったのに、数年後になぜか故障する」
多くのトラブルは、絶縁劣化の“サイレントな進行”が原因です。
絶縁破壊とは何か
絶縁破壊とは、絶縁材料が本来の役割を果たせず、電流が一気に漏れたり短絡したりする現象です。
絶縁抵抗値が基準値を下回ると、小さなリーク電流が徐々に増大し、最終的には一瞬で短絡・発煙・火災につながることがあります。
人命被害・設備損失・生産停止など、製造業にとっては致命的なリスクです。
現場で起きやすい主な絶縁トラブル
・古い設備のケーブル劣化によるショート
・配線層の樹脂劣化によるパターン間短絡
・高温雰囲気下での絶縁材料の脆化・カーボン化
・湿度上昇によるリーク電流増加
いずれも、初期品質が適正でも、材料寿命・運用環境まで考え抜かないと発生します。
絶縁材料の劣化・絶縁破壊の主なメカニズム
熱劣化:高温と繰り返しサイクル負荷
樹脂系や紙系の絶縁物は、長期間の温度上昇やサーマルサイクルで分子結合が切断され、絶縁抵抗が徐々に低下します。
具体的な目安は「10度温度が上がるごとに寿命が半減」と言われています(アレニウス則)。
高温工程、密閉エリア、冷却不良、周囲の発熱体からの輻射熱などは、現場でよく見落とされがちな原因です。
電気的ストレス:過電圧・サージ・部分放電
設計値を上回る電圧印加や、雷サージなどの一過性高電圧、また微細な“部分放電”が絶縁体の内面にピンホール(小孔)を生じさせ、最終的に絶縁破壊を招きます。
特に高圧機器では、目視できない“部分放電”の点検が、品質管理の肝です。
湿度・吸湿:リーク電流と金属腐食
水分は絶縁抵抗を著しく下げます。
高湿度環境、結露、ケーブル端子部の未防水箇所からの水分侵入が、絶縁破壊のトリガーです。
吸湿した材料内部で微細な導電経路が生まれ、徐々にリーク電流が増加します。
機械的破損・外部ストレス
組立ミスや配線引き回し時の曲げ、クランプの締めすぎなど、微細なクラック(ひび割れ)が現場で生まれていることも。
このクラックから局所的にコロナ放電(微小放電)が誘発され、絶縁寿命が一気に縮みます。
化学的劣化:薬品、油、ガスによる損傷
エポキシ樹脂やゴム系の絶縁体は、薬品・オイル・溶剤などとの接触で軟化、膨潤、脆化など多様な損傷パターンを示します。
現場でよくあるのは、漏油設備や洗浄工程などの周辺装置からの影響です。
絶縁材料トラブルを減らす!実践的な対策技術
1. 劣化予測とスクリーニング技術の高度化
昔の“カット&トライ”だけでは通用しない時代。
材料メーカー・サプライヤーと積極的にコミュニケーションして、「経時劣化データ」「ムダを省いた専用材料」などを収集することが重要です。
また、X線CTや赤外線サーモグラフィなどの非破壊検査も、近年は費用対効果がよくなっています。
2. エンドユーザー視点の設計シナリオ
設備の“本当の使われ方”を知るべきです。
・周囲温度/湿度の最大・最小範囲
・メンテナンスタイミング、交換工数を最少化する設計
・現場作業者向けの誤配線防止、取り回し性
“現場に寄り添った絶縁材設計”こそ品質未然防止の近道です。
3. テスト工程の徹底による早期発見
絶縁耐圧試験・絶縁抵抗測定は、目視できない劣化をあぶり出す“最後の砦”です。
量産ラインでのインライン検査、自動絶縁抵抗チェッカー導入、出荷前の全数テストなど、多層防御を主流としましょう。
4. 予兆管理・診断・データ活用
IoTを活用したリアルタイム絶縁抵抗モニタリング、部分放電オンライン監視、経年劣化データのビッグデータ分析など、現場DXも進展しています。
異常兆候の“見える化”が、事故防止とメンテナンス工数削減に直結します。
5. 新素材と高効率プロセスの活用
近年は耐熱性に優れたポリイミド、自己修復型ゲル系、低VOCエポキシなど、多彩な新材料が登場しています。
また、絶縁テープ自動巻きロボットや、型成形の真空注型など、品質バラツキを減らす加工技術の導入も欠かせません。
バイヤー・サプライヤーのための絶縁材料選定ポイント
総コストの見極め(TCOアプローチ)
安価な材料を選んでも、数年後の交換頻度増加や、設備停止・不良品の抜取り費用まで考慮すれば、かえって高コストになるケースが多いです。
「材料費+保守コスト+生産ロス」の全体最適を最初から設計に組み込むことが重要です。
信頼できるサプライヤーとの連携
絶縁材はスペックだけでなく、“ロット毎の品質安定性”“納期厳守力”“トラブル発生時の現場対応力”が重要です。
現場を知る担当者が、カタログだけでなく工場監査やテスト採用をしっかり行い、ベストパートナーを選びましょう。
ムダな“過剰品質“からの脱却
「絶縁厚さはとりあえず大きく」「多層化しておけば無難」などの思考停止は禁物です。
現場実測・故障履歴・統計的手法(FMEA、FTAなど)で“適切な安全率”をチームで見極め、効率的なコストダウンも目指しましょう。
関係部門との円滑な情報共有
設計・購買・品質管理・保守・生産・作業者の現場知見がかみ合ってこそ、最適な材料選定が可能になります。
会議での情報交換や、現場レビュー、定期的なサプライヤーミーティングなど積極的なコミュニケーションを推進しましょう。
まとめ:絶縁技術の進化と現場力の両輪で、持続可能な競争力を
絶縁材料は見た目の派手さはありません。
しかし、その選定・管理・DX化にこそ、工場の安全・安定稼働・コスト競争力の源泉があります。
絶縁トラブルの発生は、サプライチェーン全体、さらには社会的責任に影響を与えかねません。
現場のリアルな知見と最先端技術を融合し、昭和から続く“思考停止”から脱却しましょう。
一つひとつの改善が、日本のものづくり現場の底力をさらに高める鍵となります。
バイヤーを志す方、サプライヤーの立場で先を読みたい方、現場エンジニアも、ぜひ今日から“絶縁材料の地平線”を切り拓いていきましょう。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)