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デスマーチ回避のための火噴きプロジェクトの具体的な鎮静化手法と未然防止策

目次
はじめに:製造業における「火噴きプロジェクト」とは何か
「火噴きプロジェクト」とは、計画的でない急な工程変更や、人手・工数・コスト・納期、すべてにおいて想定外のトラブルが多発し、現場が“火を噴く”ように混乱状態に陥っている状況を指します。
特に製造業では、昭和の時代から続くアナログな慣習と、変化の激しい現代の顧客要求とのギャップによって「デスマーチ」(異常な業務量とプレッシャーで、現場が疲弊し続ける状態)が頻発しがちです。
こうした火噴きプロジェクトの経験は、現場担当者だけでなく、バイヤー(調達購買担当)、サプライヤー(供給側)、生産管理、品質管理、さらに管理職まで、多くの人が少なからず体感しています。
本記事では、火噴きプロジェクトをどう鎮静化し、そもそもデスマーチを未然に防ぐための具体的な仕組みを、実践的な現場目線で解説します。
なぜ火噴きプロジェクトは起きるのか——その構造と実態
業界のアナログ体質が引き起こすコミュニケーションロス
日本の多くの製造業では、紙の伝票やFAXによる手続き、現場の口頭伝達、あいまいな責任範囲など、昭和型のアナログ習慣が色濃く残っています。
この体質のまま「働き方改革」の名の下に効率化が叫ばれると、「表面上の効率」と「実際の泥臭い作業負担」の乖離が拡大します。
結果として、以下のような事態が頻発します。
– 誰が次に何をやるか分からない
– 重要な依頼や指示がメールや口頭で流れて消える
– サプライヤーからの納期回答がFAXや電話なので記録に残らない
– 設計変更の情報が工場現場まで伝わらないまま進行してしまう
こうしたコミュニケーションロスが積み重なり、プロジェクト終盤に大量の火種を残したまま「火噴き」状態が顕在化します。
デスマーチの主因:上流工程の乱れと現場の頑張り依存
製造業のデスマーチを生む最大の要因は、設計や受注時点での要件整理・見積・工程計画の甘さにあります。
「現場がなんとかしてくれるだろう」「試作で間に合わせたから量産も何とかなるだろう」
こういった上流の楽観が、結果として現場へのしわ寄せ(人的リソースの常時圧迫、休日出勤、突発的な工程変更など)につながります。
火噴きプロジェクトの発生源は、現場ではなく“現場以前”にあるのです。
鎮静化手法1:火噴きの“見える化”と情報共有の徹底
まず現場実態を正直に全員で共有する
多くのプロジェクトで失敗する理由の1つは、「ヤバさ」の共有が遅れることです。
現場では「他部署に迷惑をかけてはならない」「報告したら自部門の責任になる」といった心理から、不具合や遅延をギリギリまで隠しがちです。
この悪しき文化を断ち切るためには、以下を徹底することが有効です。
– 週次会議や日報で、定量的に進捗/遅延/トラブル件数を報告する
– 不具合や遅延の“兆し”を隠さず全員で共有し、責任追及ではなく解決行動を重視する
– サプライヤーからの納期回答、設計部門の変更通知なども、クラウドツールや共有フォルダで「誰が見てもわかる状態」にする
情報の“見える化”によって初めて、現場の火噴き要因を組織全体で把握し、迅速な初期消火が可能となります。
「エスカレーション力」をチーム文化として定着させる
部署横断の進捗会議を設け、現場から“逐次”問題を上申できる仕組みを取り入れます。
現場起点の早期エスカレーションは、日本的な「自己責任文化」ではなかなか根づきませんが、トップダウンで「困ったらすぐに声を上げよう」としつこく伝え続けることで、少しずつ現場が変化します。
こうした小さな文化醸成こそが、火噴き起因のデスマーチ体質への有効な一歩となります。
鎮静化手法2:外部リソース・部門横断での柔軟な協業
社内外の“助っ人”リストを日頃から作っておく
火噴き状態の緊急鎮火には、現場の人的リソース強化が不可欠です。
しかし突然「今週いっぱい残業を頼む」といった号令を出しても、他案件との掛け持ちや個人の労務負担が限界に来ていることが多いものです。
そこで、以下のような「備え」を平時から進めておくことが重要です。
– 組立・加工・検査など主要工程ごとに“臨時応援要員”のリスト化
– 外注先や協力会社、派遣サービスなどをあらかじめヒアリングし、導入フローを整備
– 部門間で人材を柔軟に貸し借りできるルール化(例:繁忙期の応援シフト)
こうすることで、有事の際には社内外の助っ人を機動的に投入し、火噴き時の局所的な負荷増大をスムーズに吸収できます。
サプライヤーにも「火噴き共有」を依頼する
バイヤーやサプライヤー視点では、元請け(発注側)が「火噴き状態」であることを隠し、無理な注文や仕様変更を突然出してしまうことが往々にしてあります。
こうした上から目線のコミュニケーションを改め、サプライヤーとも「正直に火噴きを共有」することが、結局は納期厳守・品質維持・信頼関係の三方良しとなります。
– 火噴きが予想される際は、サプライヤーにも早期に情報を流し、柔軟なスケジュール調整をはかる
– サプライヤー側の火噴き(原材料高騰や人手不足、工程トラブル)も積極的に吸い上げて議題化
– 「一緒に乗り切るパートナー」として共闘できるよう、感謝や配慮のコミュニケーションを欠かさない
サプライチェーン全体で火噴き情報をオープンにし、リソース調整や段階的な納品分割など、知恵を出し合う文化をつくることが、現場を救う大きな力となります。
鎮静化手法3:ルール化・仕組み化で“再発ゼロ”へ
「属人化」と「カン頼み」からの脱却
多くの製造現場では「〇〇さんがいないと現場が回らない」「ベテランなら分かる通例」が暗黙の前提となっています。
この属人化が、急なトラブル時に現場を一層混乱させます。
【具体策】
– 作業手順を写真・動画付きでマニュアル化し、誰でもアクセス可能な状態にする
– 進捗・トラブル記録はエクセル共有やクラウド管理で「見える化」する
– 定期的なOJT・教育を通じて、熟練作業者のノウハウを後進に受け継ぐ
反復発生する火噴き要因(例:図面ミス、工程抜け)があれば、「こうなったらこう対処する」というフローチャートやチェックシートの整備、関係部署でのルール化が効果的です。
“なあなあ品質”を撲滅し、根本対策へ落とし込む
火噴きプロジェクトの裏には、小さなミスや見落としに対する「まあ、これくらいは…」という甘さが潜んでいます。
一見些細に見える問題から火噴きへ拡大しがちであるため、
– ヒヤリハットや小さな問題を「全員で議論」して、背景原因を掘り下げる
– 一時しのぎ(応急対応)で終わらせず、仕組み(設計書、申請フローの改定など)にまで落とし込む
– 管理職、自部門を問わず「現場課題は組織全体で共有」し、対策を横展開する
といった地道な取り組みが、次の火噴きを未然に防ぐ礎となります。
未然防止策:デスマーチを生まないための組織知と考え方
“先読み思考”と“余裕資源”の内蔵化
日本の製造業は、「ムダの排除」と「即効の現場力」で世界に冠たる成果を上げてきました。
しかし今、火噴きが絶えない背景には、「ギリギリ最適化」がもろ刃の剣になっている現実があります。
– 工程や人材リソースを「100%」で回すのではなく、10~20%程度のバッファを意図的に持つ
– 新規性の高いプロジェクト、設計変更の多い案件では、追加で日数・人員・コストを“見込んでおく”
– 「前工程で乱れたら」「供給トラブルが起こったら」といったケーススタディを事前に想定し、Plan-Bを準備
こうした“先読み施工”を組織文化として根付かせることが、デスマーチを防ぐ最大のカギとなります。
「バイヤー」としての役割再定義――サプライチェーン全体の健全化
バイヤーの本質的な仕事は、単に価格交渉をするだけではありません。
– サプライヤーとWIN-WINな関係を築き、両者のリスク低減策を日頃からすり合わせる
– 発注から納品・検収、トラブル発生時の連絡ルールまで、一貫して協働体制を仕組みとして作り込む
– サプライヤーの現場も尊重しながら、現状を正直に相談できる関係を築く
このように、サプライチェーン全体の最適化にコミットするバイヤーになることが、火噴き防止・デスマーチ撲滅への近道です。
まとめ:昭和の現場から令和の現場力へ
火噴きプロジェクトとデスマーチは、誰か1人の責任や能力の問題でなく、組織の風土や仕組みに根ざした“業界病”ともいえます。
そして解決のカギも、特殊なアイデアや一発逆転でなく、地道な情報共有・現場エスカレーション・ルール化・文化醸成という「泥臭い基本の徹底」にあるのです。
いま製造業に関わるすべての人(現場担当者、バイヤー、サプライヤー、管理職)は、アナログな慣習を見直しつつ、令和の現場力=“現場の知恵とチームワーク”を再定義しなければなりません。
本記事が、火噴き現場・デスマーチに悩む皆さまの一助となれば幸いです。
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