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EMC設計の基本と問題解決のポイント・ノウハウ

目次
はじめに:EMC設計がなぜ重要なのか
製造業のグローバル化や電子機器の高度化が進む現代において、EMC(Electro-Magnetic Compatibility、電磁両立性)設計の重要性は年々高まっています。
工場ラインの自動化、IoTデバイスの増加、AIやビッグデータの活用など、新しい技術が導入される中、EMC設計を軽視することは、重大な品質問題や顧客クレーム、製品リコールの原因となり得ます。
本記事では、EMC設計の基本だけでなく、現場で得た実践的なノウハウと、昭和時代から根付くアナログ的な業界動向も交え、課題解決のヒントをあなたと共有します。
EMC設計の基本:まず押さえるべきポイント
EMCとは何か
EMC(電磁両立性)とは、ある機器が外部からの電磁ノイズによる影響を受けることなく安定稼働し、自身が発する電磁ノイズでも他の機器に悪影響を及ぼさない特性のことです。
つまり、「自分が大人しく、かつ周りとも仲良くする」ことがEMC設計に求められています。
この観点は、製造ラインの中だけでなく、製品として顧客の手元に届いた瞬間から廃棄されるまで、ずっと重要なコンセプトです。
EMIとEMSのバランスを理解する
EMCは「EMI(Electro-Magnetic Interference、妨害波)」と「EMS(Electro-Magnetic Susceptibility、耐性)」から成り立っています。
– EMI視点:自分が発するノイズを如何に抑制し、規格以下にするか。
– EMS視点:他の機器や環境からのノイズにどこまで耐えられるか。
この双方向の設計思想が必要です。
特に日本の製造業ではEMI対策が重視されやすいですが、近年のスマート工場やIoT化、海外輸出先ではEMS要件も厳しくなっています。
規格・法規制を基礎から固める
EMC関連の代表的な規格は、CISPR、IEC、EN、FCCなどがあり、いずれも年々厳格化の傾向にあります。
法規制違反はリコール、ブランド価値棄損など経営リスクに直結します。
設計段階で最新の適用規格を確認し、量産開始前に予防的な評価・試験計画を立てておくことが最大のリスクヘッジです。
現場の実践ノウハウ:EMCトラブルを未然に防ぐ設計プロセス
基板レイアウトは最初の関門
EMC設計の8割は基板レイアウトで決まると言われています。
– グラウンドプレーンの適切な配置と分割
– 信号線の最短・最直線ルート設計
– クロストーク対策のための信号間距離確保
– ハイスピードラインのリターン経路統制
これらを開発初期から回路設計者と基板設計者が「なぜやるか」をすり合わせ、「暗黙知」ではなく設計ルールとして言語化・標準化しておくことが、再現性のある強い開発体制に繋がります。
部品選定&パターン設計
EMC品質を担保するには、ノイズ対策部品(フェライトビーズ、チップコンデンサ、EMIフィルタなど)を「後付け」するのではなく、あらかじめ実装可能なパターンを設けておく、その「遊び」を持たせるのが現場対応力アップのコツです。
また、コストや量産性、調達安定性(EOL品の懸念など)も初期段階から調達部門・設計部門・生産技術担当で共有し、調達購買の観点からも最良の選択を目指しましょう。
実装後の現場検証に全てが宿る
設計段階でのシミュレーションも大切ですが、最終的には生産ラインでの「実装品」を用いたEMC評価が不可欠です。
– EMI試験(放射、伝導エミッション)
– EMS試験(耐ノイズ性:ESD、イミュニティ)
現場では、ありがちな「現象は再現するが原因が分からない」という課題に直面しやすいです。
そんな時こそ、「怪しいところを絞り込むラテラルシンキング」と、「現象メカニズムの仮説→実証」によるブレインストーミングが効きます。
昭和時代からのベテラン技術者の目利きと、最新のオシロスコープやEMCチェンバーによる客観データとの融合が、現場品質の両輪です。
トラブル事例と対応:現場で役立つリアルなQA
Q:量産後にノイズ苦情が急増した!どこを疑う?
A:まず以下の観点で原因を整理します。
– 部品ベンダーやロット変更による微妙なバラツキ
– 周辺製品やインフラ、現地電源事情の変化
– 組立やハーネス配線など実装ミス
特に、調達購買担当は「納入仕様書・検査成績書」のフォローと、バイヤーと現場の意思疎通に注力してください。
エンジニアは、納入品サンプリング検査、現地現物主義で早期に「異常検知→現地仮説・検証サイクル」を回しましょう。
Q:同じ図面、同じ部品なのにラインごとにEMC性能が微妙に違う
A:理由はズバリ、「組立作業の手順」「作業者の習熟度」「工具・治具の使い回しや劣化」などが影響しています。
例えば、ネジ締めトルク不足や、アース線の接触不良、シールドケースの微妙な浮きは、微量でもEMIに現れます。
生産技術・品質管理部門と連携し、作業標準書や作業手順の見直し、IoTセンサーによるトルク管理の自動化など、アナログな品質管理から一歩進んだデジタル化も検討すると良いでしょう。
Q:海外輸出先でEMC規格未適合となり、納入不能に・・・
A:グローバル展開では、日本国内基準でのEMC対策だけでは通用しません。
各国独自の要求(特に北米、欧州、中国、インドなど)は、現場のバイヤーや営業、さらに法規制担当とも密に連携し、「どの規格対応が必要なのか」を明確にしなければいけません。
また、審査機関や規格自体のアップデートが多発するため、現場では常に最新情報をキャッチアップし、その都度「予防的な対策」を練ることが失敗を未然に防ぎます。
現場目線で押さえたい、業界の深層動向と今後のポイント
昭和から続くアナログ品質と、デジタル化波とのせめぎ合い
製造業の現場には、依然として「現場力」や「職人技」、「長年の経験と勘」に支えられたアナログ品質が色濃く残っています。
一方で、EMC設計や評価ツールのデジタル化、AIやビッグデータ解析との融和が進み、両者の知見をいかに統合するかが大きな課題になっています。
例えば、QC工程表や部品選定の見直しにAIを活用する動きや、不具合現象のビッグデータ分析で根本要因の早期特定を進める動きが登場しています。
調達購買・サプライヤー連携でEMC品質を底上げする
本質的なEMC設計力とは、「設計サイド」だけでなく、「調達購買」「生産現場」「サプライヤー」まで一丸となった情報共有と、品質マネジメントサイクルが回っている状態です。
現場目線では、バイヤーがEMC品質の観点からサプライヤー管理(例:現場監査、納入規格の細分化、ファブレス部品のリスク管理など)を強化することが、現場課題の早期発見に有効です。
また、サプライヤー側もバイヤーの「EMC重視の設計思想」や、「なぜこのスペックが必要か」に対する深い理解を持つことで、価値ある提案・信頼関係の構築につながります。
まとめ:EMC設計は「現場×協働」で進化する
EMC設計の現場は、昭和から現代への大転換期にあります。
アナログな職人技と、最新のデジタル・AI融合が交錯し、新たな知見と挑戦も日々生まれています。
その本質は、「現場のリアルな課題」に真摯に向き合い、「横ぐしの連携」「失敗からの学び」を積み重ね続けることです。
製造業に携わるすべての方が、EMC設計の基本とノウハウ、そして業界動向の変化をしっかりと捉え、「壊して直す」だけに終わらない、本質的な品質と信頼を目指しましょう。
EMCは「難解」「面倒」と敬遠されがちですが、その裏には「顧客満足」「製品競争力」「ものづくり力」の真髄が詰まっています。
日本製造業の未来のためにも、今こそEMC設計に一歩踏み込んだ現場改善を進めるべきタイミングと言えるでしょう。
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