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デザイン思考の基礎と製品・サービス開発への応用

目次
はじめに ― 製造業に「デザイン思考」がなぜ必要か
製造業といえば、緻密な計画、生産管理、徹底した品質管理などを想像する方が多いかもしれません。
実際、私自身も長年現場で管理職を経験し、どうしても「正解のある業務フロー」や「マニュアルどおりの作業」が重要視されがちだと感じてきました。
しかし、現代は顧客のニーズが多様化し、「言われたものをそのまま作れば売れる」時代は終わりを迎えています。
その中で注目すべきが「デザイン思考」です。
デザイン思考とはなにか、なぜ製造業の皆さんに必要なのか、その基礎から応用までを、実際の現場目線でご紹介します。
デザイン思考の基礎 ― 五つのプロセス
デザイン思考は、もともと米国スタンフォード大学のd.schoolやデザインコンサル会社IDEOが提唱した、創造的問題解決の手法です。
大きく分けて五つのプロセスで構成されています。
1. 共感 ― 顧客理解の徹底
まず最初に重要なのは「共感」つまりユーザー(=顧客や現場の作業者)の本質的なニーズや課題に向き合うことです。
表面的な要望や指摘だけを満たしても、真の満足は生まれません。
現場では、たとえば「なぜ不良品が発生するのか」「なぜ工数がかかるのか」を、現場スタッフの行動や意見を拾い上げて、深く掘り下げることが共感フェーズとなります。
2. 問題定義 ― 本質課題を抽出する
次に、「この場面で何が一番の課題か」を明確にします。
これがあいまいなままでは、どれだけ新しいアイデアを出しても的を外してしまう危険があります。
例えば動線改善のために投入した自動搬送ロボットが、現場運用の実情に合っておらず、逆に効率が落ちる…という悲しい事例も、問題定義の甘さが原因です。
3. 発想 ― 枠を超えたアイデア創出
「こんなの無理だろう」「前例がないから…」という発想を一旦脇にどけて、自由な発想でアイデアを量産します。
この時に大切なのが、工場現場の固定観念を外すことです。
例えば、「検査工程は人の目に頼るしかない」と思い込んでいたのに、画像処理技術やAIを活用することで、不良品の早期検出・分析が実現したような事例もあります。
4. 試作 ― まずは小さく実行して検証
考えたアイデアを、小さく・素早く形にしてみます。
これは「プロトタイピング」と呼ばれます。
たとえば新たな発注システムの流れを実際の運用前に紙上やExcelで模擬的に実践し、現場の社員や取引先とともに動作させてみる、という手法です。
「まずはやってみる」精神が大切です。
5. 検証 ― 現場からのフィードバックで磨く
試作したものに対し、ユーザーやステークホルダーから幅広く意見をもらい、改良を重ねます。
大手メーカーでは往々にして、「計画→導入→不満発生→現場で無理やり回す」の悪循環が見られますが、デザイン思考では早い段階で失敗し、修正することを良しとしています。
製造業の現場で「デザイン思考」をどう活かすか
日本の製造業界は、いまだに根強い昭和的なアナログ文化が残る業界とも言えます。
現場のベテランの「手の感覚」や「経験則」で成り立つ部分も多く、システム化、デジタル化が進みにくい背景もあります。
ここに「デザイン思考」がうまくフィットする理由を具体的に掘り下げていきます。
バイヤーや調達担当者の視点
バイヤーや調達担当者は、単に安く仕入れるだけでなく、サプライチェーン全体のリスクやコスト、品質、納品スピードなど、総合的な価値を追求しています。
この中でデザイン思考を活用することで、サプライヤーが「バイヤーに選ばれる理由」を発見しやすくなります。
「どこか他社を真似た製品」ではなく、「バイヤーの現場課題に本当に沿った新しい提案」は強い武器となります。
生産ラインの改善や自動化プロジェクト
現場で長年課題に感じている「手戻りの多さ」や「ムダな作業」は、現場スタッフの気づきがなければ解決策が遠のきます。
自動化を推進する際も、現場の細かい声を拾いながら、本当に効果的なソリューションを短いサイクルで試し、軌道修正して取り入れていくことが大切です。
いわば「現場主導のPDCAサイクル」が、デザイン思考のフレームにぴったり当てはまります。
品質管理・クレームゼロ活動の新しい形
従来の「不良はゼロを目指し続ける」の方程式だけでは、複雑化・多様化した製品群についていけなくなっています。
現場での観察や、顧客からのクレーム現物を徹底的に分解・観察、「なぜなぜ分析」と組み合わせて共感フェーズを深堀りすると、「顧客側の使い方」や「意図外の操作」が見落とされていることがわかる事例も多々あります。
表面的な数字管理ではなく、バックグラウンドに寄り添う姿勢こそが品質の本質を見直す起点となります。
デザイン思考導入のポイント ― 昭和アナログ体質との融合
新しい考え方を取り入れるとき、「古いやり方」が邪魔する場面は必ず出てきます。
製造業でデザイン思考を進める際の「つまずきポイント」と「乗り越え方」を、現場目線で解説します。
トップダウンではなく、「現場巻き込み型」へ
手法だけを導入し「とにかくやってみろ」では、現場の反発は免れません。
現場スタッフの経験値や職人的ノウハウを尊重し、まずは「気づきをたくさん拾い上げる」スタンスから始めるのが近道です。
例えばQCサークル活動に、デザイン思考の「共感」や「発想」のフェーズを混ぜてみると、とたんに現場発アイデアが増えやすくなります。
小さな成功体験を積み重ねる
一気に全工程を変えようとせず、まずは一工程、一業務、一部署でプロトタイピング(試作・実験)を繰り返しましょう。
小さな「うまくいった!」という実感が広がれば、徐々に他の部門も巻き込まれていきます。
デジタル技術との掛け合わせ
例えばIoTセンサーによる設備監視や、クラウド型情報集約ツールなど、新しいIT技術は現場の「見える化」「課題の明確化」に最適です。
アナログ現場こそ、小さなデジタル化の積み上げとデザイン思考の相性が良いのです。
ラテラルシンキング ― 枠を超えた着想で新しい地平へ
ここまでご説明した「デザイン思考」に加えて、“ラテラルシンキング”(水平思考)を意識するだけで、さらに製造業現場でのイノベーションは加速します。
ラテラルシンキングとは、常識や過去の延長上で考えるのではなく、本来は結びつかないアイデアや知識を組み合わせて全く新しい解決策を見出す思考法です。
例えば、「購買管理の発注ミス」をなくすため、コンビニの電子タグ棚管理の仕組みを製造業の現場投入在庫管理に応用する、あるいは他業界のメニュー式サービスやサブスクリプションモデルをBtoB受発注に生かす、といった発想です。
現場の中堅社員・若手社員も交え、自由なアイデア出しの場を設けることで、驚くような提案が現れることも珍しくありません。
ベテラン目線では「そんなことできるわけない」と感じることすら、プロトタイピングの精神でまず試してみる価値があります。
まとめ ― デザイン思考を武器に明日の現場力を高める
デザイン思考は、単なる「アイデア発想法」や「おしゃれな新製品開発テクニック」ではありません。
現場で実際に使える“お客様志向の課題発見力”を身に付けるための、本質的なフレームワークです。
製造業のバイヤー・調達担当者、サプライヤーの皆様が、これからの時代に選ばれ続けるためにも、いち早くデザイン思考を現場作業や工程改善、サービス提案、品質向上の仕組みに取り入れていただきたいと思います。
昭和の成功体験も大切にしつつ、新しい考え方を積極的に取り入れ、現場力と現場発信のイノベーションを起こす。
それが、日本の製造業がこれからの世界と戦うための強力な武器になるのです。
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