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機能性フィルムの基礎と最新技術および包装・容器への応用

目次
はじめに:機能性フィルムの重要性
機能性フィルムは、生活のあらゆる場面で利用される重要な素材です。
食品や医薬品を安全に保存する包装材から、電子部品・光学製品を支える精密フィルム、さらには自動車や建築分野での先端素材まで、その用途は年々広がっています。
製造業の現場目線で見れば、機能性フィルムの進化は単なる素材の進歩ではありません。
生産効率や品質、さらには顧客ニーズへの柔軟な対応力が企業の競争力に直結するからです。
この記事では、機能性フィルムの基礎知識や最新技術動向、昭和的なアナログの現場でも根強く残る課題、さらには包装・容器での応用事例や調達バイヤーにとっての着眼点を、現場での経験をもとに深堀りしながら解説します。
機能性フィルムの基礎知識
機能性フィルムとは何か
機能性フィルムとは、従来のフィルムが持つ「包む」「保護する」といった基本的機能に加え、特定の性能や役割を付与した高付加価値フィルムの総称です。
例えば、水蒸気や酸素を遮断するバリア性、防曇性、耐熱性、自己粘着性、導電性、紫外線カット、抗菌・抗ウイルス性など、用途に合わせたさまざまな特性が付与されています。
主な素材と特徴
機能性フィルムにはさまざまな素材が用いられますが、代表的なのは以下の通りです。
– ポリエチレン(PE):柔軟性が高く、成形しやすい。食品包装に多い。
– ポリプロピレン(PP):剛性・耐熱性に優れ、シャカシャカ音が少ない食品包装材の定番。
– ポリエチレンテレフタレート(PET):高い透明性と強度、耐熱性あり。電子部品、光学用途にも。
– ナイロン(NY):ガスバリア性に優れる。真空パック、レトルト食品包装などに活用。
– ポリ塩化ビニル(PVC):柔軟で密着性が高く、ラップ材などに使われる。
これらの単層フィルムに対し、積層・コーティングなどの多層構造を用いることで、異なる機能を組み合わせたフィルムも多く流通しています。
バリア性へのアプローチ
食品や医薬品の包装においてはバリア性が特に重視されます。
水分や酸素の透過を極力抑えることで、内容物の劣化防止や品質維持が可能です。
従来はアルミ箔を用いたフィルム構成が主流でしたが、近年は高分子系のバリア材料(EVOH, PVDC, シリカ蒸着など)による軽量・薄肉化が加速しています。
最新技術動向:機能性フィルムの革新
環境対応型フィルムの開発状況
プラスチックごみ問題やカーボンニュートラルの観点から、環境対応型フィルムの開発・普及が著しく進んでいます。
– バイオマス由来素材(バイオPE、PLA等)の利用拡大
– ケミカルリサイクル可能な単一素材フィルム(モノマテリアル化)
– 生分解性フィルム(自然界で分解)
近年、多層ラミネート製品のモノマテリアル化や、リサイクル容易な設計要求が顕著で、従来の“昭和的な技術”では対応が難しくなる場面も増えてきました。
高度な機能付加の例
技術革新により、フィルムに“+α”の価値を加える取り組みが増加しています。
– 光学特性制御(反射抑制、光拡散、偏光制御等)
– 電磁波シールドフィルムや導電性能付与
– 抗ウイルス・抗菌コーティング
– 高付着性インク対応や特殊印刷フィルム
顧客ニーズの多様化とともに、単なる汎用品から「用途特化」「複合機能搭載型」へのニーズシフトが進み、調達購買部門の技術的知見の底上げも求められる時代です。
スマート工場・IoT連動への進化
昭和型の“熟練勘と経験“から脱却し、機能性フィルム製造の現場でもデジタル化や自動化が進んでいます。
– 製造条件の自動最適化(AI・IoT活用による歩留まり向上)
– 超高速インライン検査装置(傷や異物を自動判別・トレース)
– 素材トレーサビリティと一元管理
これにより、生産性と品質保証力の両立が図られていますが、アナログ現場では「DX人材育成」や「設備投資への判断遅れ」といった課題もよく見聞きします。
昭和に根付く業界構造と現場の課題
分業・多重下請け構造の功罪
フィルム素材業界は大手メーカーから2次、3次のコンバーティング加工・印刷・貼合加工といった多重下請け構造が色濃く、現場ごとの「職人仕事」や「隠れた技術伝承」が実態です。
これが小回りや特注品での対応力を生む一方、全体最適化やデジタル活用が進みにくい温床にもなっています。
近年はサプライチェーン全体の見える化(SCM改革)や、バイヤー主導による「標準化」「コストダウン」要求が強まり、体質改善が迫られています。
日本独自の品質信仰とリスク
「不良ゼロ」「外観完璧主義」といった昭和型の品質志向もなお根強い現実です。
たとえ最終用途では影響しない微細キズ・異物でも、客先から厳しいクレームや手に余る“検査地獄”が続く現場も少なくありません。
一方、海外市場では「用途最適品質・ちょうど良いコスト」への発想転換が主流です。日本発メーカーにとってもバイヤーにとっても“品質・コスト・スピード”のバランス感覚が必須となってきています。
包装・容器分野への応用事例
食品・日用品包装への展開
機能性フィルムは食品包装で最も多く採用されています。
バリア性フィルムによる鮮度保持、脱酸素剤併用パッケージ、開封性や再封性を高める易カット加工・ジッパー構造、さらには高精細印刷との組み合わせでブランド訴求力向上など、付加価値化への要求は年々高まっています。
他にも、冷凍・電子レンジ対応用耐熱フィルムや、耐油・耐水、匂い移り防止フィルムのほか、最近では抗菌・抗ウイルス機能付き包装も出てきました。
医薬・ヘルスケア領域での役割
医薬品包装用フィルムは、ガスバリア性と同時に、薬剤との化学的反応防止や耐久性、滅菌耐性が重視されます。
ピロー包装、PTP包装、液体容器、点眼容器用多層フィルムなど、安全性と効率性を両立するための研究開発が続いています。
特に近年のパンデミック以降、抗ウイルス性や高清浄度が求められる用途が増加し、医療現場からのフィードバックを受けて各社の開発競争が激化しています。
電子機器・自動車分野への広がり
電子部品向けフィルム(導電性フィルム、光学フィルム等)や自動車の内外装向けフィルム(高耐候・高意匠フィルム等)でも、機能性フィルムの需要が増しています。
タッチパネルやディスプレイ、カメラレンズ等の高精度用途では微細異物・光学的歪み管理が厳格化されています。
また、車両軽量化やEV化の流れでも新たな複合機能性フィルムが求められています。
調達・バイヤー目線で知るべきポイント
バイヤーが重視すべき視点
調達担当(バイヤー)は、単なる価格交渉者でなく、「どのような要求を技術側と現場側から集め、実際の現場に最適な解を導くコーディネーター」であるべきです。
– 技術仕様の本質理解(なぜその機能が必要か、他の素材や設計で代替できないか)
– 製造プロセス上の制約・コスト構造の把握
– サプライヤーとの“開発型調達”の実践
– サステナビリティ・リサイクル適合性評価
– バリューチェーン最適化(SCM・トレーサビリティ・品質監査等)
昭和時代は「大量発注で値を叩く」方式が一般的でしたが、複雑化・多様化する現代では「知見を持つバイヤー」への進化が不可欠です。
サプライヤーが知っておきたいバイヤーの本音
サプライヤーとしては、バイヤー側が「なぜそのスペックやコスト構成を求めるのか」という狙いを事前に理解しておくことが信頼関係の第一歩です。
– 実は「過剰品質」になっていないか?
– 品質・性能よりも安定供給・納期遵守が重視される場合も多い
– “サプライチェーン上のリスク分散”がVPN的要素でますます重要視
– 技術開発や環境対応、場合によってはコストよりサステナ責任で選ばれる
現場の苦労やアナログ抵抗へのリアルな理解を持つ提案型サプライヤーが、今後は選ばれる傾向が強くなるでしょう。
まとめ:未来の機能性フィルム業界へ
機能性フィルムは、今後ますます高機能・多機能化し、より多様な領域へと応用が進みます。
生産現場、開発現場、それをつなぐバイヤー・サプライヤーそれぞれが、従来の“昭和的発想”から脱却し、ラテラルシンキング(水平思考的)に新しい価値づくりに取り組む必要があります。
皆さんの現場での課題・可能性が、機能性フィルムを通じて新たな価値を生み出し、ひいては「社会課題の解決」「持続可能な未来」への貢献になることを願っています。
これからも現場目線と時代の風の両方を意識しながら、ものづくりの力を一緒に高めていきましょう。
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