投稿日:2025年6月13日

クーリングタワーの省エネ技術に関する事業連携の進め方

はじめに

クーリングタワーは、工場の生産活動や大規模施設の空調設備に欠かせない存在です。
特に製造業においては、冷却能力の維持とともに、省エネ・環境負荷低減が強く求められています。
ところが、昭和型のアナログ運用が根強く、最新の省エネ技術導入や外部パートナーとの事業連携に二の足を踏む企業も少なくありません。

本記事では、20年以上にわたり製造現場を指揮してきた立場から、クーリングタワーの省エネ技術をテーマに、サプライヤーとバイヤーがどう連携を進めていくべきか、そのポイントと具体的な事業連携モデルを現場目線で解説します。
また、購買や生産管理、工場運営者、サプライヤー担当者の方に向け、「なぜ今連携が必要なのか」「どのようにプロジェクトを進めるべきか」を分かりやすくまとめます。

昭和型・アナログ運用が招く「クーリングタワー活用の限界」

省エネ要請の高まりと現場の現実

工場の生産工程では、設備冷却用の水を確実に循環させることが不可欠です。
しかし、外気温や負荷状況の変動に関わらず「とりあえず全力運転」してしまっている現場は、今も多く見かけます。
長年変わらぬ“アナログ全開”の現場運用が、かえって省エネ推進の大きな壁となっているのです。

なぜ現場では省エネ化が進まないのか

その背景には以下の要因があります。

– 省エネ技術に関する情報不足、および管理職層のリテラシー不足
– 過去のトラブル体験から「変えること」への過度な慎重姿勢
– サプライヤーとの従来型の受発注関係(ただの“言い値”発注や値引き交渉で終止)

この状況を変え、新たな付加価値を創造するためには、「バイヤーとサプライヤーによる事業連携」が効果的な打開策となります。

省エネ技術進歩と事業連携の必要性

クーリングタワーの最新省エネ技術とは

現代のクーリングタワーには、単なる冷却装置ではなく、AI・IoTによる「運転自動最適化」や、「高効率ファン/モーター」「制御バルブ+インバータ連携」など、さまざまな省エネ要素が盛り込まれています。
さらに、熱源設備全体での消費エネルギー最適化(システム連携)も重要です。

環境規制強化と電力量削減の意義

日本だけでなく、グローバルに省エネ・温暖化対策の要求が強まっています。
クーリングタワーの省エネ化は、単なる電気代削減にとどまらず、「サステナブルなモノづくり」「脱炭素経営」「SDGs経営」の要石となっています。

バイヤーとサプライヤーの協働による突破口

バイヤー(調達のプロ)、設備エンジニア、工場の現場担当者、そしてサプライヤー(メーカー・システムインテグレーター)各々の力だけでは、現代の複雑な省エネ要求には到底対応しきれません。
だからこそ、「対等なパートナーシップ」に基づく“現場協創型”の事業連携が求められる時代なのです。

バイヤー主導型「新省エネプロジェクト」の進め方

1.現場課題の見える化からスタート

まずは、現在の冷却設備の運用データを詳細に取りまとめ、課題を“数字”で可視化することが起点となります。
・エネルギー消費量(季節・時間帯別)
・冷却水温度/外気温の相関
・これまでの保守・トラブル履歴

こうした情報を現場と一体で精査し、属人的な「ベテランの勘」から「データドリブン」へ発想を切り替えましょう。

2.サプライヤーとの協業体制構築

最新の省エネ技術やシステム連携ノウハウは、サプライヤーの方が蓄積豊富です。
しかし、一方的な提案を待つのではなく、バイヤー主導で「共通KPIを設定」「運用担当も巻き込んだワークショップ」を行い、現場主導の課題解決型プロジェクトをスタートさせます。

この段階で、設備設計部・保全部署・購買部門の三位一体チームによる「課題ヒアリング→仮説抽出→プロトタイピング→評価」といったPDCAサイクルを回すことが望ましいです。

3.テクノロジー×現場ノウハウの融合

例えば、「ファンモーターのインバータ制御による電力最適化」や、「冷却塔の自動洗浄機能追加」といった技術導入の際も、現場が持つ“運転のクセ”まで加味した最適設計が鍵を握ります。

・現場で頻発している課題(スケール詰まり、冬場のオーバークール等)はあるか
・省エネ化後、品質や生産性に悪影響が出ない運用条件は?

こうした知見をメーカー・システムベンダーと「共創」することが成功の近道です。

4.費用対効果の“本質”評価

単純なイニシャルコスト比較だけではなく、運用コスト、メンテナンス性、ダウンタイム削減効果、現場負荷の低減といった項目も盛り込んだ「トータルコスト」での効果試算が欠かせません。

さらに、サプライヤーと「成果保証契約」や「コストシェアリング型契約」など、成果連動型の新しい契約スタイルを取り入れることで、双方が納得感あるパートナーシップを形成できます。

昭和型から脱却するためのキーポイント

現場の「変化を怖れる」文化を変えるには

現場の主役であるベテラン層や管理職は、「昔からコレで動いてきた」「新しい仕組みはトラブルの元」といった心理的ハードルを抱えがちです。
その打開には、“スモールスタート”すなわちパイロット導入による小さな成功体験を積ませる戦略が有効です。

トライアル運転の効果データや現場コメントを社内外でしっかり共有し、「見える化」「納得感の醸成」を図ります。
同時に、サプライヤー側も、現場目線に立った丁寧な説明や教育支援を惜しまず実施します。

現場主導コミュニケーションの促進

・サプライヤーが現場に出向き、運用実態を肌感覚で理解する
・アセスメント会議、現場改善会議などを定期開催する
・現場が自分の裁量や意見を持てる「対等なパートナーシップ」への移行

こうした双方向コミュニケーションの場を創出することで、「単なるサプライヤー⇒購買担当」から「共創パートナー」への転換が加速します。

実際の事業連携モデル事例(某大手製造業でのケース)

実際に私が関与した某大手製造業A社では、以下のような流れで「クーリングタワー省エネ事業連携」が進みました。

1. 調達・生産技術・工場運転の三部門合同チーム編成
2. 現場データの一元可視化(現場主導)
3. クーリングタワーメーカー、IIoTベンダーと運転最適化ワークショップを月例で開催
4. 現場実証による「運転パターン最適化」仮説立案、および小規模実証
5. KPI(省エネ率、維持管理コスト、トラブル削減)の設定と合意
6. 量産化に向けたコストシェア契約/成果保証型契約の締結
7. 全社横展開と現場教育プログラムの共同開発

同社では、エネルギー原単位として10%以上の削減を実現しつつ、現場管理の標準化と運用コスト削減に成功しました。
単なる設備更新にとどまらない、新しい付加価値が生まれた好例といえます。

サプライヤー・バイヤー・現場…三者の新しい関係性を築くには

現代の製造業は、ダイナミックな変革期にあります。
特にバイヤーや設備購買担当は、「コストダウン=値引き交渉」という旧態依然の姿勢から脱却し、「現場を巻き込み、サプライヤーと共にイノベーションを生み出す」先導者たるべきです。

サプライヤー側もまた、「売り込む」のではなく、「現場と共に実現する省エネ」をモットーに、新しい付加価値形成のためのパートナー意識を高めていくことが重要です。

まとめ:未来の製造業を担う皆さんへ

クーリングタワーの省エネ・最適化は決して単一技術の導入にとどまらず、現場・バイヤー・サプライヤーが「共創」する中で初めて最大効果を生み出します。

昭和的なアナログ運用を“否定”するのではなく、現場の知見を活かしながら、実践的な事業連携で最先端の省エネ技術を「根付かせる」ことこそが、業界の持続的発展に不可欠です。

現場の皆さん、そして未来を担う調達購買・サプライヤー担当の皆さん、自らの枠を一歩越えて、共に新たな地平線を切り拓いていきましょう。

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