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スラリーの基礎と分散制御安定化技術およびトラブル解決のポイント

目次
はじめに:スラリーの重要性と現代製造業の現場課題
製造業の中で「スラリー」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
しかし実際に、スラリーの取り扱い・制御・安定化についての知識や経験を活用できている現場は、決して多くありません。
スラリーは、粉体と液体が混ざった懸濁液です。
電子部品・塗料・化学品・電池など、幅広い産業における根本的なプロセスで活用されています。
しかし、その特性上「凝集」「沈降」「品質変動」など現場で制御やトラブルが頻発しやすい材料でもあります。
本記事では、スラリーの基礎知識から、分散・制御・安定化の実践技術、そして現場で起きやすいトラブルの本質的な原因とその解決ポイントまで、長年現場で培った経験をもとに深掘りします。
昔ながらのアナログ体質が色濃い現場でも即実践できるよう、具体的なノウハウを交えて解説していきます。
スラリーとは何か:基礎と本質を再整理
スラリーの定義・特徴
スラリーとは、微細な固体と液体が均一に分散された混合流体のことです。
粒子サイズや分布、比重や粘度などによって流動性や取り扱い方法が大きく異なります。
例えば、二次電池製造の正極・負極材料スラリー、ディスプレイ材料用の高機能なスラリーなど、高度な分散・安定性が求められる分野が増えています。
スラリーの製造現場における役割
・粉体混合工程での分散・混練
・コーティングや成膜での均一塗布
・反応・洗浄など化学プロセス内での搬送
こうしたプロセスで安定したスラリーを確保できるかどうかが、製品品質・歩留まり・工程安定性に直結します。
分散・安定化技術の現場的考察:なぜ難しいのか?
分散性と安定性はトレードオフ
スラリーの分散性と安定性はしばしばトレードオフの関係にあります。
分散性を高めるには強いせん断や分散剤の活用が有効ですが、逆に粒子が再凝集しやすくなり、沈降や粘度変化などトラブルのもとにもなり得ます。
これまでの現場では「強い分散=良いスラリー」という思い込みによって、工程トラブルを誘発している例も少なくありません。
原料ロットや環境変動の影響が大きい
スラリーに使う原材料(粉体・液体)のロット変化や、製造現場の温湿度など環境要因も分散性・安定性に大きく影響します。
例えば、ちょっとした湿度変化でも粉体の帯電や凝集が変化し、分散の難易度が一挙に高まります。
現場感覚としては、「昨日うまくいった配合や手順が翌日はうまくいかない」ことが日常茶飯事です。
分散安定化のための現場テクニック
分散装置の選定と運転条件の最適化
使う分散機(ポンプ・攪拌機・ビーズミルなど)の型式や回転数、運転条件ひとつでスラリーの品質は大きく変化します。
・過剰なせん断は粒子破砕や異常分散を招く
・十分でない混練は、微視的な凝集塊を残してしまう
現場目線では、操作員の「微妙な手加減」や「経験則」が光る部分です。
しかし昭和的な「ベテラン頼み」では属人化から脱却できません。
近年では、粒度分布測定や流動性評価を工程内で可視化し、「勘と経験+定量データ」での品質管理を進める企業が増えています。
分散剤・サーファクタントの選定ポイント
分散剤や界面活性剤は、粒子と液相の界面を制御して分散安定を支えます。
しかし「高機能=良い分散剤」ではありません。
・原材料との親和性(化学構造のマッチング)
・環境負荷や廃液対策とのバランス
・添加順序(粉体→液体→分散剤の順で混合するなどの工夫)
これらを押さえることが、実践の現場では特に重要です。
温度・湿度管理と装置メンテナンスの重要性
分散・安定化は、配合や装置だけでなく「環境変動対策」「機器の定期整備」も大切です。
・エアコンや加湿・除湿機による作業空間管理
・装置内部の清掃やスクラブ交換などメンテナンス
・配合設備周辺の異物混入対策
現場が忙しい時ほど疎かにされがちですが、中長期的なトラブルの芽を摘むためには絶対に外せないポイントです。
スラリーにまつわる現場トラブル例と対策
トラブル事例1:スラリーの沈降・凝集
配合直後は安定していたスラリーが、数時間で沈降・凝集しやすくなる現場トラブルは頻発します。
【主な原因】
・分散不良や分散剤不足による粒子再凝集
・粒度分布の広がり過ぎ
・液相の蒸発・粘度変動
・溶媒や成分の化学反応による性質変化
【現場的対策】
・分散剤の見直し、添加タイミングの修正
・攪拌機のインターバル運転による沈降防止
・工程内での粒度モニタリングの強化
トラブル事例2:バッチ間ごとの品質ばらつき
特に小ロット多品種の工場で、バッチごとの「仕上がり粘度」「分散性」が大きく振れるケースがあります。
【主な原因】
・作業者ごとの操作ミスや配合量のズレ
・原材料のロット差(吸湿・粒径分布・不純物混入)
・分散装置のメンテナンス不良
【現場的対策】
・デジタルスケールや自動配合装置の活用
・原材料ロットごとの事前試験・記録強化
・装置点検スケジュールの標準化
トラブル事例3:異物混入・金属コンタミネーション
スラリーは粘性が高く異物が除去しづらい素材です。
工場の老朽ラインや人的作業が多いラインでは、異物混入リスクが常に付きまといます。
【現場的対策】
・異物除去用のフィルターやマグネットセパレーターの設置
・作業区画のゾーニング(クリーン・ダーティゾーン分離)
・人員教育と、持ち込み工具や衣服の徹底管理
アナログ現場とデジタル化の融合:今後のスラリー管理現場の進化
昭和から続くアナログ現場では「人の五感」や「現場勘」に頼る運用が根強く残ります。
しかし、グローバルでの品質競争や省人化・自動化の流れの中、現場力の可視化やデータ活用への転換はもはや必須でしょう。
現場で活用されているデジタル化の取り組みには、次のようなものがあります。
・粒径分布計や粘度計などIoTセンサによるリアルタイム品質監視
・分散装置の運転記録や配合履歴のシステム化
・AI活用によるトラブル予兆検知
ただし、大事なのは「現場感覚を無視したデジタル化」ではありません。
現場の勘・ベテラン技術と、データの連携・見える化によって「再現性」の高い安定したスラリー管理を実現することが、今後の課題であり強みとなります。
購買・バイヤー目線でのスラリー原材料調達の現状と課題
スラリーに必要な粉体・分散剤・溶媒などの調達は、バイヤーにとっても高度な専門性が不可欠です。
原材料サプライヤーの選定ポイントは、コストだけでなく、
・品質安定性(ロット間変動の少なさ)
・ドキュメントの充実度(成分表、安全データ、トレーサビリティ)
・テクニカルサポート体制
など、製造現場目線に寄り添った視点が不可欠となります。
また、サプライヤーの立場からは「バイヤーはどんな不安やリスクを見ているのか?」を知ることが信頼構築のカギとなります。
まとめ:現場力×データ力でスラリー技術の進化を
スラリーの分散・安定化技術は、材料科学・装置工学・現場力・デジタル技術の全てがクロスオーバーする分野です。
現場で起きているトラブルには、必ず「ヒト」「モノ」「環境」それぞれに根本的な原因が眠っています。
昭和由来のアナログ技能と、データ・自動化・予兆管理などの現代技術を融合することで、これまでにない高品質・高効率なスラリー製造現場は必ず実現できます。
製造業、とりわけ購買・生産・品質管理などものづくりの現場に携わる方が、この記事をヒントに「ひとつ上の現場改革」にチャレンジしていただければ幸いです。
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