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特許の明細書作成と判決例を通じた他社特許対策と無効化技術の実践ノウハウ

目次
特許とは何か?現場目線で整理する「特許」の基本
特許というと、知財部門の専門家だけが気にすればよいものと思われがちですが、実は製造業の現場においても、特許への深い理解と対策は非常に重要です。
なぜなら、製品開発や生産現場で新しい工法や素材を使った場合、それが他社の特許に抵触しているリスクがつきまとうからです。
また、自社の技術を特許化しておかなければ、模倣・流用されやすくなるだけでなく、後出しで他社に特許を取られてしまうというリスクも発生します。
バイヤーやサプライヤーの経験でもわかる通り、「特許問題で揉めて納期が遅延した」「仕入先から突然ライセンス契約を要求された」「技術流出が社内トラブルに発展した」など、現場発の特許トラブルは枚挙にいとまがありません。
だからこそ、現場でも特許の意義や仕組み、そして特許侵害リスクをどう避け、もし訴えられた場合にどう対応すべきか――こうした現場の視点からの「特許力」が強く求められる時代です。
特許明細書作成のコツ 現場のノウハウを明文化する難しさ
現場発のイノベーションを特許で守るために欠かせないのが「明細書」の作成です。
しかし、この明細書づくりこそが、昭和から続く製造現場で特に苦手意識が根強いポイントです。
なぜなら、明細書では実際の技術・ノウハウを「法律文書」として抽象度高く、かつ広い権利範囲で表現する必要があります。
現場担当者の本音としては、「そんな小難しいことより、現場で動くものを作ることの方が大事だ」となりがちです。
ですが、ノウハウを発明者目線で書き過ぎたり、口頭説明の延長レベルでしか記載していなければ、「模倣を防げない」「権利が穴だらけ」「権利の幅が狭い」など、もったいない結果に陥る危険性が高まります。
現場の感覚を活かす「差別化ポイント」の洗い出し
現場で実際に作業する中で「ここが他と違う」「この微妙な条件設定で劇的に性能が変わる」といった独自ノウハウや、設計者の工夫こそが、明細書作成において一番の宝です。
これを発明者自身だけでなく、第三者でも客観的に分かるよう、要点を整理し言語化する意識が不可欠です。
たとえば、「温度を20℃から25℃の間に保つことで不良率が低減する」という技術であれば、「温度範囲20〜25℃に設定」「それによりA工程で不良発生率1%以下に低減」という事実と効果を必ずセットで記載しておきます。
市場や顧客のニーズ(コスト削減、納期短縮、品質安定など)と直結した差別化要素が入っているか、現場目線で客観チェックする習慣が重要です。
「幅広さ」と「具体性」を両立する工夫
特許明細書には、「この範囲まで自社の権利で守りたい」という幅広さ(クレームの範囲)と、技術的課題を解決する「具体性」の両方が求められます。
「ある材料Aに対してB処理をする」という発明であれば、材料や処理方法をあえて広く一般化し過ぎると、権利範囲が無効化されやすくなります。
逆に、現場の実例に引っ張られすぎて詳細・限定的にしすぎると、派生技術を他社が使った場合に対抗できなくなります。
実際の生産ラインでは、材料変更やプロセスチューニングが日常茶飯事である以上、「応用可能な幅」を念頭に、現場目線とリーガル目線で何度も見直す作業が欠かせません。
判決例・無効例に学ぶ!他社特許対策の実践ノウハウ
特許対策の現場対応では、「本当に役立つ判決例・無効例を知っているかどうか」が、明暗を分けます。
近年はIT化・自動化の波とともに、特許訴訟・審判が増える傾向があり、「自社特許を強化するため」「他社特許を無効にするため」の両面から事例を体系的に学んでおく必要があります。
侵害認定の壁:「均等論」と「技術的思想」
たとえば製造現場で「A+B+Cで構成した設備に対し、特許がA+B+Dだった場合、侵害になるか?」というような類似改良技術のパターンがよくあります。
ここで争点となるのが「均等論」です。
日本の判例(最高裁H10.2.24判決等)によると、仮に明細書に記載された技術要素とは異なる技術であっても、本質的な部分で「実質的に等しい」場合、特許侵害と認定されることもあります。
現場の感覚で「少し違うから大丈夫」と思っていると、判例上は侵害認定されるリスクがあるわけです。
サプライヤーとしては、バイヤーの調査責任や契約書での免責事項など、取引時の交渉ポイントも頭に入れておくべきです。
無効化と回避の実践的アプローチ
一方で他社特許の権利範囲が不当に広い、あるいは公知技術に近い場合、特許無効審判(特許庁審判部への申立て)による”無効化”が有効な防御策となります。
たとえば「先行技術に全要素が開示されている」「明細書の記載に新規性・進歩性がない」「実施可能要件が満たされていない」などの理由で無効が成立した判例も多数あります。
過去の無効事例や判決例(知財高裁・最高裁の判決など)は、必ず現場関係者で共有し、設計レビューや量産検討の際のリスクヘッジ材料にすべきです。
例えば
・「構造の一部だけでは新規性が認められなかった」
・「比較データが十分でなく進歩性が否定された」
・「明細書の不備で範囲が狭まった」
といった具体例を学び、設計検討・DR(デザインレビュー)段階で早期に取り込んでいくことが、競争力維持には重要です。
アナログ文化の業界でも強まる「特許戦略」への現場対応
製造業の多くは、いまだ現場主導のアナログ的な企業文化が根強く残っています。
「特許は知財部の仕事」「図面でやりとりできればOK」「昔からの慣例がある」といった声も多いはずです。
しかしIoT・AI・自動化といった新しい要素が現場に浸透する中、デジタルデータの流出や海外企業との競争激化、品質事故や保証トラブルの増加など、リスク環境は確実に変化しています。
組織横断の「調達・開発・知財」三位一体体制を目指す
先進事例では、開発部門と調達購買部門、さらに知財部門が一体となり、下記のようなプロセスが導入されています。
・調達部門が取引契約時の特許リスク調査を標準化
・開発段階で知財部と共同で権利化戦略を検討
・生産現場からの改善提案を早期に明細書化
・競合調査で「ブラックリスト化」された特許の社内共有
・技術者への特許教育
こうした仕組みを、現場・本社一丸で進められるかどうかが、今後の製造業企業の生き残りを大きく左右します。
バイヤー&サプライヤーの視点で考える特許コミュニケーション
バイヤー(購買担当)は、調達時にサプライヤーの提案する技術や部品が他社特許を侵害していないか、常に自社リスクを意識しなければなりません。
サプライヤー側は、バイヤーのこういった調査・契約プロセスの「なぜ」を知っておくことで、より円滑な商談や差別化につなげられます。
バイヤーが本当に知りたい「特許リスク情報」
バイヤーが気にしているのは単にコストや納期だけではありません。
・「この仕様変更で、他社特許の侵害リスクはないか」
・「将来ライセンス費用の追加発生がないと言えるか」
・「特許無効事例や回避策の社内ガイドがあるか」
・「自社として特許訴訟リスクが見込まれる場合の備え」
こういった観点で、サプライヤーに対しては「技術的説明」だけでなく「知財リスクの説明責任」も求めています。
サプライヤーは、提案段階から
・関連特許を洗い出してFS調査報告
・回避設計案や無効資料の提示
・トラブル時の責任分担(損害賠償や再設計)範囲を明確に
といった一歩踏み込んだスタンスを示すことで、「あの会社は信頼できる」との評価を得られるでしょう。
まとめ:昭和的現場でも今すぐ実践できる「特許無効化」戦略を
本稿では、製造業の現場目線から、特許明細書作成のコツや、判決例・無効例を活かした他社特許対策、そしてバイヤー・サプライヤーそれぞれの視点ごとの着眼点について実践的に解説しました。
技術開発・調達購買・生産管理・品質保証など部門の垣根を超え、組織横断で特許リスクに向き合うことこそが、本当に「強い製造業」に進化するカギだと考えています。
特許はもはや、専門部署の仕事だけではありません。
地に足のついた現場力こそが、適切な知財戦略、強いものづくりの「最強の盾」となるのです。
ぜひ今日から自社の現場で、判決例学習や明細書作成訓練、特許無効化ノウハウの共有といったアクションを、小さくても一歩ずつ実践してください。
それが強い現場とWIN-WINなサプライチェーン、ひいては製造業全体のイノベーション力の底上げにつながるはずです。
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