- お役立ち記事
- 射出成形不良での寄与率の大きい要因と適確なその対策
射出成形不良での寄与率の大きい要因と適確なその対策

目次
はじめに:射出成形不良と製造現場の現実
射出成形は、日本の製造業において極めて重要な技術の一つです。
しかし、そのプロセスで発生する不良は、コストや納期、さらにはサプライチェーン全体に大きな影響を与えます。
現代、高度な自動化設備を導入しても、現場では人の目や手作業による調整が根強く残り、昭和時代からの「勘と経験」が脈々と受け継がれています。
生産に携わる方や、バイヤー・サプライヤーの立場で品質改善を目指す方にも有益な、現場目線での実践的なノウハウをお伝えします。
射出成形不良の主な種類と発生メカニズム
代表的な不良:ショートショット・バリ・ウェルドライン・焼け
射出成形の不良には、ショートショット(充填不足)、バリ(樹脂あふれ)、ウェルドライン(樹脂流れの合流跡)、焼け(熱劣化)などがあります。
これらは外観や寸法精度だけでなく、製品の機能や信頼性にも直結するため、避けて通れません。
不良の背景には、材料特性・金型構造・成形条件・設備状態など、複数の要因が絡み合っています。
「寄与率が大きい要因」とは何か
不良の発生要因を数多く上げることはできますが、現場で効率的に対策を打つためには、「多品種・多条件の中でも支配的な寄与率の高い因子」を特定することが不可欠です。
多くの現場経験から言えるのは、不良の80%は「たった2~3の主要な要因」の制御だけで激減するということです。
寄与率の大きい要因①:材料管理の徹底度
なぜ材料管理が重要なのか
材料の「乾燥不足」や「ロット差」による成形性変化は、全体の不良寄与率の中でもトップクラスです。
とくに吸湿性が高いPA(ナイロン)やPBT、PC素材は、少量の水分でも気泡、銀条、焼けなどの不良を引き起こします。
また、材料メーカーによって微妙な組成差があり、連続成形をする現場では、異なるロットやメーカー混在での不良率増加が顕著です。
対策:材料乾燥とロット管理のポイント
現場で怠られがちなのが「乾燥工程の遵守」です。
乾燥時間・温度のマニュアル管理、乾燥後から成形までの放置時間短縮、そしてロット番号の記録・照合。
これらを徹底するだけで不良率は格段に下がります。
また、材料をサイロなど大容量で一括管理してしまう場合は「先入れ先出し」を必ず守ること。
短納期対応や「在庫一掃」のための混搭使用は絶対に避けましょう。
寄与率の大きい要因②:金型メンテナンスと管理
金型の微妙な変化が不良へ直結
金型の「摩耗」「汚れ」「通気不良」は、短期間で急激に不良率を押し上げます。
例えば、エジェクターピンが摩耗してわずか1mmでも型締めが甘くなれば、バリ不良が多発します。
通気溝の詰まりも、ガス焼け・ショートショット・ウェルドライン悪化のトリガーになります。
具体的な金型管理の実践事例
定期的な分解洗浄・グリスアップはもちろん、成形品のバリ位置・焼け位置を日々記録し、「いつもの場所」に急な変化がないかを監視します。
また、成形サイクルごとの射圧・型圧の自動モニタリングを導入することで、突発的な異常発生をリアルタイムで検知できる事例も増えています。
投資効果の高い管理手法ですので、ぜひ検討しましょう。
寄与率の大きい要因③:成形条件(温度・圧力・速度)の最適化
昭和の「勘・コツ」からデータドリブンへ
かつて射出成形の条件出しは現場の達人による「匠の調整」に頼ってきました。
現在も「誰々さんの設備でないと安定しない」「条件ノートは秘密」といった文化が残りがちです。
しかし、これこそ属人化による品種切り替え時の不良量増加の最大要因です。
科学的条件出しのススメ
「温度」「圧力」「保持時間」「射出速度」の影響度合いをデータで可視化し、標準条件作成と改善履歴管理を行う体制が、これからの「脱アナログ」射出成形には不可欠です。
実際、射出速度の数十mm/s単位の調整でウェルドライン強度やバリ発生率が大きく変わることも、多くの現場データで確認されています。
また、成形機自体にも自動制御・自動補正機能が進化しているため、属人性を徹底的に排除し、誰でも「工場標準」で成形できることを目指します。
寄与率の大きい要因④:作業者スキルと管理体制
人由来の「ヒューマンエラー」が依然として多い理由
自動化が進んだ今でも、材料投入・立ち上げ時の条件セット・型替えなどは作業者のスキル次第で不良率に大きな差が出ます。
「同じ条件を出したつもり」が実は違っていた、シフトが変わると突然不良が発生し始めた、など昭和から続く悩みが尽きません。
作業標準化と現場教育のポイント
作業標準書を「机上の空論」にせず、現場ごとの写真・動画活用で直感的に分かるツールに変えることが重要です。
また、作業者の見逃しを防ぐため、チェックリストとダブルチェック、成形機への初期投入材料重量の管理など、「人の感覚」でなく「数値と記録」で管理できる仕組み作りが有効です。
最新業界動向:デジタル化・自動化の潮流と課題
スマートファクトリーとIoT活用
近年、射出成形業界でも「IoT成形機」「MES連携」などのスマートファクトリー化が進んでいます。
シグナルタワーや各種センサーで不良予兆を追跡し、データベース化してアラームを発報するシステムが定着しつつあります。
従来現場とデジタルのギャップ
一方で、中小企業ではいまだ「紙伝票」や「成形条件ノート」が主流という現場も多々あり、自動化投資への踏み切りや標準化推進に苦労しています。
サプライヤー・バイヤー間の信頼構築でも、「データを可視化して根拠ベースで説明」できるサプライヤーは競争力が高まる傾向があります。
バイヤー・サプライヤー視点:本当に信頼できる射出成形メーカーとは
「現場の見える化」「トレーサビリティ」を重視すべき理由
安定供給や品質要求がますます厳しくなる中、本当に信頼できるメーカーは、単に「不良率が低い」だけではありません。
「いつ・どの条件・どの材料で・誰が作ったか」を工程別にトレースし、不良発生時に即応できる体制があるか。
これこそがバイヤーが重視すべき指標です。
サプライヤーが実践すべき提案型アクション
サプライヤーの立場では、単に「良品を作ります」ではなく、現在の品質管理・不良削減の仕組みや、改善実績データを開示し、バイヤー側に「不良発生時の対応スピード」と「予兆管理体制」を積極的にアピールするべきです。
まとめ:寄与率の高い要因を押さえ、昭和から未来へ脱却を
射出成形不良の80%は、材料管理・金型メンテナンス・成形条件最適化・現場作業標準化の「4大要因」を押さえることで、根本的な改善が可能です。
昭和時代から続くアナログ現場力の良さも活かしつつ、デジタルとデータ活用を積極的に取り入れることこそが、今後のグローバル競争を勝ち抜くカギとなります。
現場で悩む方も、これからバイヤー・サプライヤー職を目指す方も、ぜひ今日から「寄与率の高いポイント」に集中して改善に取り組んでみてください。
製造業の明日は、現場の一歩から大きく変わります。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)