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すべり軸受の基礎と信頼性向上および損傷防止策

目次
はじめに:製造業を支えるすべり軸受の存在意義
現在の製造業現場において、機械装置の円滑な動きを担保する要素部品は多数存在します。
そのなかでも「すべり軸受」は、古くから信頼性と耐久性が求められる部品として根強く採用されてきました。
高度な自動化・IoT化が進む一方で、昭和の頃から続くアナログ的ノウハウも、いまだ現場の技術支柱になっています。
すべり軸受の選定や保守運用、そして損傷の防止は、現場の効率化・コスト低減に直結する重要なテーマです。
本記事では、現場目線で「すべり軸受」の基礎と信頼性向上策、損傷防止のための実践知、さらに業界のアナログ文化との上手な付き合い方にも触れていきます。
すべり軸受とは――構造と動作原理の基礎知識
すべり軸受の基本構造
すべり軸受は、回転体(主に軸)と軸受の間に金属や樹脂などの接触面を設け、滑って摩擦を減らすメカニズムです。
構成部品はシンプルに、
・軸
・軸受
・潤滑剤(グリースやオイル、固体潤滑など)
という基本形態が主です。
ここに切削性や耐摩耗性、寸法安定性などのノウハウが蓄積されています。
ころがり軸受との違い
「ころがり軸受」との違いは、転がり要素(玉やローラー)が有無です。
ころがり軸受が転がり摩擦を利用するのに対して、すべり軸受は摩擦面が直接滑る形となり、摩擦抵抗は高いが、静かで、大きな衝撃や揺れに強く、設計の自由度が高い利点があります。
適用範囲と主な使用例
すべり軸受は、負荷が大きく、低速・重負荷の用途で有利です。
たとえばポンプや圧延機、ディーゼルエンジン主軸、工場の大型搬送機器など。
自動化ラインや汎用設備の一部では、ころがり軸受と適宜使い分けられています。
信頼性向上のためのすべり軸受選定ポイント
材質選定の考え方
軸受の材質は、摺動面の対素材・負荷・速度・潤滑状況・異物の混入リスクなどを複合的に考慮する必要があります。
現場感覚では「昔ながらのブッシュは青銅か鋳鉄一択」となりがちです。
しかし、近年はPTFE系樹脂や複合材、自己潤滑性合金など、適材適所の選択肢が広がっています。
ローコスト化を狙って、安易に安価な材質を選ぶと、早期摩耗や突発停止を引き起こすリスクも無視できません。
潤滑方式の選定
すべり軸受の寿命や安定稼働には、潤滑が生命線です。
グリース、油、固体潤滑膜、無給油構造など現場用途によって方式を選びます。
従来の「現場任せオイル注油」はトラブルのもと。
近年はメンテナンスフリー設計や自動給脂装置、IoTセンシングによる予知保全など、デジタル要素の導入も加速しています。
設計段階からの品質確保
現場クレームの多くは、設計上の見落としやパラメータ選定ミスが起点です。
「安全を見て大きめに設計」も、過剰設計でコストアップやスペースロスにつながります。
たとえば面圧許容値と速度に基づいたPV値(荷重×速度)による計算、熱膨張を加味したクリアランス取り。
設計初期段階こそ現場の知見をフィードバックし、チームで最適化を行う姿勢が品質確保のカギです。
損傷・トラブルを防ぐための実践プロセス
典型的な損傷パターンとその兆候
すべり軸受で頻繁に発生する損傷として、
・焼付き(潤滑切れ、摩擦増大で金属面が溶着)
・摩耗(摺動面のヘコミや条痕)
・割れや欠け(過大荷重や異物混入、熱膨張による応力集中)
などが挙げられます。
現場ではゴロゴロ音や温度上昇、ガタつきといった兆候を見逃さない観察眼が求められます。
予防保全、予知保全の要点
従来の「壊れるまで使い倒す」方式は、突発停止や大事故のリスクです。
現場データに基づく定期交換・グリースアップや、条件モニタリングによる異常検知が重要です。
最近では、温度・振動・トルクのセンシングデータから寿命予測や異常箇所の特定まで、一歩先を行く予知保全が現場に組み込まれ始めています。
ただし「昭和流のベテランの勘」に頼る風潮も根強く、デジタル化と現場知のハイブリッド化が今後の課題です。
損傷発生時の現場対応フロー
異常発生時、原因不明のまま軸受を交換するだけでは再発リスクが消えません。
・潤滑剤の劣化状態確認(定性・定量分析)
・損傷部分の観察と偏摩耗・条痕の有無
・環境要因の再確認(異物混入・水分・温度変動)
・軸との嵌合精度・ミスアライメント点検
これらの基本を丁寧に確認しながら、「なぜ破損したのか」にスポットを当てることが、根本的な再発防止への第一歩です。
アナログ業界の現状と、今後のすべり軸受トレンド
昭和的現場文化の残存と進化
製造業の現場には「経験と勘で判断」「油でなんとかなる」「困ったらベテラン直伝のヤスリ加工」といった、独自のアナログ文化が根強く残っています。
すべり軸受の世界も例外ではありません。
この文化は、短納期対応や突発修理時、予算が限られた中小現場において、とてつもない威力を発揮します。
ただし、属人化・伝承不足によるリスクも年々高まっているため、マニュアル化や標準化が今後の課題といえます。
最新トレンド:自己潤滑・省メンテ軸受の拡大
IoT化や生産現場の省人化・省メンテナンスの潮流のなか、自己潤滑機能を有する複合材すべり軸受の活用が急増しています。
たとえば、PTFE系ブッシュや含油軸受、潤滑剤カプセル内蔵型など。
従来の油脂メンテナンス工数を大幅削減でき、設備のトータルコストダウンや無人化ラインにもマッチします。
一方で、イニシャル費用や現場スタッフのノウハウギャップ解消がボトルネックとなることもあります。
海外調達・サプライチェーン変革による影響
グローバル調達が進む製造現場では、従来の国内標準品流通からスペック不明品の混入や品質ばらつきリスクも拡大しています。
すべり軸受の調達でも、各種規格(JIS, DIN, ISO など)の相違や、安価品の早期損耗事例が散見されます。
バイヤーやサプライヤーとも、技術仕様書の標準化や長期信頼性評価、サンプル検証・現地工場での立ち会い検証など、一歩踏み込んだ品質マネジメントが必要です。
バイヤー視点・サプライヤー視点で考えるべきこと
バイヤー(購買担当)が押さえるべきポイント
・現場の「いつも通り」を疑うクセをつける
・現場スタッフと連携して、交換履歴やトラブル事例データを蓄積・分析
・価格優先ではなく、ライフサイクルコスト(LCC)を必ず考慮
・サプライヤーに「どういう現場で、どう使うか」をきちんと伝え、材質や形状の最適提案を引き出す
サプライヤーが理解すべき現場・バイヤーの視点
・価格・コスト優先思考だけでなく、「信頼性」「保全性」など現場の実利を重視
・実運用データやトラブル事例の情報開示・提案が重宝される
・現場見学やヒアリングを通じて、本当のニーズ(例:保守工数削減、異常監視性強化)を正確に把握する
・納入後のアフターサポート、技術相談体制にも安心感が求められている
まとめ:知識と現場力の融合が、すべり軸受の真価を引き出す
すべり軸受は、産業界で長く受け継がれる定番技術であると同時に、最新の材料・保全トレンドとも相まって、進化し続けています。
現場目線では、「単なる消耗品」ではなく、生産性・コスト・信頼性を左右するキーパーツであることを意識し、設計・調達・メンテナンスまで知識と現場力の両輪で管理していくことが重要です。
アナログな現場文化とデジタル新技術の融合、バイヤーとサプライヤーの本音勝負――これらが製造業の未来と、町工場からグローバルメーカーまでの競争力を底上げしていく時代に突入しています。
今こそ、現場のリアルと新たな技術知見をリンクさせ、すべり軸受の価値を最大限に引き出す力を磨いていきましょう。
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