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気体流体軸受の基礎と設計測定トラブル対策を通じた実務活用ノウハウ

目次
はじめに
製造業における機械の高機能化・高精度化の流れは止まることを知りません。
その中でも、摩擦低減と高い回転精度を両立する「気体流体軸受」は、今なお進化を続ける重要な技術です。
本記事では、20年以上の現場経験を活かし、気体流体軸受の基礎から設計・測定・トラブル対策に至るまで、実務で“すぐ使える”ノウハウを徹底解説します。
バイヤー志望者やサプライヤーにも有益な「現場目線」の実践知識の習得に、ご活用ください。
気体流体軸受とは何か ― 基礎知識の整理
軸受の役割と種類 ― なぜ「気体」や「流体」が使われるのか
軸受(ベアリング)は、機械の回転軸を安定して支持し、摩擦や摩耗を最小限に抑える部品です。
従来は主に玉軸受(ボールベアリング)やころ軸受(ローラーベアリング)など固体接触型が用いられてきましたが、生産設備の高精度化・高速化・無潤滑化の要求から、非接触型の「気体」または「液体(オイル)」を用いた軸受が発展。
特に「気体流体軸受」は、薄い空気膜(または他の気体)によって非接触支持を実現する方式です。
これにより
– 超低摩擦・長寿命
– クリーン(潤滑油不要)
– 高速回転でも発熱しにくい
– 静音性が抜群
など独自のメリットがあります。
気体と液体の違い ― 現場で押さえるべき見極めポイント
現場での混同が多いですが「流体軸受」は広義で液体軸受(油軸受)と気体軸受の両方を含みます。
設計・運用の観点では
– 油軸受…摺動部間にオイル膜を形成 →荷重容量大・冷却効果◎・油漏れリスク有
– 気体軸受…空気など気体膜で支持 →クリーンさ◎・超高速向き・荷重容量は小
それぞれ一長一短があり、目的・用途で選定の基準が大きく異なります。
特に、半導体装置や医療機器の超精密分野では「気体軸受」の独壇場。
一方、重負荷がかかる大径軸や産業用回転機にはオイル軸受が依然主流です。
気体流体軸受の設計 ― 成功のカギと現場トラブル
設計原理のキホン ― 「気体膜厚」と「圧力分布」
気体流体軸受の最大のポイントは「いかに薄く、均一な気体膜を安定して維持するか」に尽きます。
一般的に、軸と軸受とのクリアランス(隙間)は数~数十ミクロン。
圧縮空気を供給し、軸方向または軸受方向に微小な圧力分布を作り、軸全体を“浮かせる”のが特徴です。
現場の設計では以下が必須項目です。
– 気体供給量・圧力の適正化
– 微細な加工精度(面粗さ・真円度)
– 軸受剛性/荷重バランス
– 発熱や振動の予測・制御
– 空圧配管のクリーン設計
昭和的な「勘と経験」のみでは現代の高精度機械要求に応えられないため、設計段階から流体力学解析(CFD)やモーダル解析シミュレーションが必須になりつつあります。
現場が陥りやすい「設計ミス」パターンと対策
気体流体軸受の現場実績でよくある“やりがちな失敗”をいくつか挙げます。
– 気体膜厚の設計ミス(クリアランス過少→摩耗/過大→剛性低下)
– 振動対策が不十分で「自励振動(ホイッスル現象)」発生
– わずかな流路詰まり(コンタミ)で空気供給不良→焼付き
– 配管経路への油分混入で膜生成阻害
– エア源の圧力変動に無頓着で、性能が安定しない
これらを防ぐには、「理屈+FA現場での実検証」の両輪が不可欠です。
バイヤーやサプライヤーは、「どこまで加工精度保証・エア源品質保証・現場適応性を徹底するか」を提案内容の中でPRできると有利です。
設計レビューでチェックすべきポイント
設計段階のレビューでは、最低でも以下の5点を必ず押さえましょう。
1. 目標膜厚・荷重の根拠(計算/実測値の両立)
2. 部品加工精度(面粗度、同軸度、真円度)保証の方法
3. 気体供給系(配管・レギュレータ・ろ過器)の選定理由
4. 振動・ノイズ対策 ―特に高回転域での模擬試験
5. 保守性:ユーザー現場でメンテナンス性が確保できるか
測定と評価 ― 現場で役立つ実践ノウハウ
組立から立上げまで ― 気体流体軸受の検証手順
工場での立会い受入検査や、設備自体の設置時に必須となる「軸受の性能評価」について、主な手順を整理します。
– 気体供給圧・流量の安定化を確認(流量計+圧力計で監視)
– 組立時の外観・回転試験(軸の引っ掛かり、摩擦異音確認)
– ロードセルやダイヤルゲージによる軸方向/ラジアル方向の動き測定
– 高速回転状況での発熱テスト(サーモカメラ併用)
– バイブレーション測定器による軸振動/ノイズ解析
とくに現場では、軸受部の微細なチリ混入や、空圧ホースのねじれ・折れ曲がり(圧力降下)から予期せぬ初期トラブルが多発するため、五感に頼った“音・手触り”チェックも必須です。
測定トラブル事例とその現場対応策
「回転が重い」「所定の無接触が得られない」「想定以上の振動が出る」というトラブルは、昭和世代の機械現場でも今なお日常茶飯事です。
まとめると
– 測定環境自体にゴミや埃が多い→クリーンブースの徹底、作業前エアブロー必須
– 計測機器の“ゼロ点ズレ”、使用前較正の励行
– 圧力低下の意外な落とし穴→長い配管の場合末端圧チェックを行う
– 測定値のバラツキは「誰が・どの手順で記録したか」管理を徹底
現場対応としては、「最初の異常検出時点で安易にフィードバックせず、一度すべてをばらして組立手順を再確認する」ことが鉄則です。
トラブルシューティング ― よくある現場事例と真の原因究明
現場でよく起こる実例と“本質的対処”
気体流体軸受のトラブルは「気体そのものが目に見えない現象」のため、本質的な特定・対応が難しいのが特徴です。
現場事例を3つピックアップし、ベテランならではの視点で対策を解説します。
例1:回転初期に「軸が接触してしまう」
– 多くはエア圧供給の立ち上がりが遅い(配管長すぎ・リークあり)
→現場でバイパスエア経路の増設や、圧力タンクの近傍設置で瞬時供給を実現
例2:運転後、軸が“焼き付き状態”で固着
– 空気中の湿気や微細粉塵混入、それによる膜生成阻害
→高精度エアフィルタやドライヤの設置追加。保守点検頻度を倍増
例3:微小だが周期的ノイズや振動が続く
– 軸受け部の「軽微なミスアライメント」「流路内のバリ等の突起」が主原因
→従来の「耳タコ」作業指示でなく、現場のエンドユーザーも巻き込んだ分解・現物確認のワークショップ実施が有効
“昭和D.I.Y流”からの脱却 ― データ駆動型現場管理へ
根拠なきアナログ調整、感覚的なグリスアップや空圧設定作業では、突発トラブルリスクが高まります。
IoT機器やセンサ、クラウド活用で実測値の「見える化」「遠隔監視」「トレーサビリティ管理」こそ、次世代の現場モノづくりの基盤です。
購買担当バイヤーやサプライヤーであれば、自社独自のモニタリング技術や、納入後のメンテナンスパッケージ提案が差別化要素になります。
バイヤー・サプライヤー視点で重要なポイント
調達購買時に問われる「適合性」と「責任範囲」
気体流体軸受の調達では、「顧客装置での使用条件」と現場側(サプライヤー)の保証性能にギャップが生じやすい傾向があります。
現場目線では
– 使用圧力、流量、清浄度、周囲温度などの条件を細かく明示し、事前打合せ
– 保証トラブル発生時の対応責任範囲(納入品/組立工事/設置環境まで)を明確化
– 不具合原因の追究・記録・再発防止策までセットで協議
これらのプロセスを全体最適でマネジメントできる購買担当が、今後ますます求められます。
サプライヤーから見た「現場トラブル防止」と差別化提案
単なる軸受のカタログスペック提示でなく、現場に即した「膜厚保証のための指導出張」「軸受け部のクリーニングサービス」「エア源一体型ユニット化」など、トータルエンジニアリング志向の提案が評価されます。
特に、現場での“一発納入トラブルゼロ”をPRする体制強化が決定打となります。
まとめ ― ラテラルシンキングで新たな価値を創造する
気体流体軸受は、単なる精密部品ではなく、装置性能の根幹を担う「超微細ものづくり技術」です。
従来の経験則+現場改善だけでなく、流体力学・データアナリティクス・ユーザー現場連携によるラテラルシンキング(水平思考)が、製造業の未来と現場競争力を開きます。
バイヤーもサプライヤーも、トラブルが起きた時の課題解決(Down Time最小化)はもとより、“一歩先”の改善提案や、現場に最適なアフターケアも設計に組み込む新次元の調達を提言します。
昭和流の「気合」でなく、データと対話、確かな技術に裏付けられた確実な「安心・安全・高効率」を追求しましょう。
「気体流体軸受」は、地味に見えても製造現場の革新を支える“要石”。
現場の知恵と最先端技術の融合で、未来のものづくりを切り開きましょう。
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