投稿日:2025年6月26日

ミリ波テラヘルツ波レーダセンシング通信技術基礎要素技術応用最新動向大阪特集

はじめに:ミリ波・テラヘルツ波技術が変える製造業の未来

長年にわたり日本の製造業は、精密さと現場力で世界をリードしてきました。
しかし、業界の現場にはいまだに「昭和的なアナログ」が色濃く残る場面が多く見受けられるのも事実です。
そんな中、新たなブレークスルーが期待されているテクノロジーのひとつが「ミリ波」「テラヘルツ波」領域のレーダーやセンシング、通信技術です。

この記事では、これらの基礎から要素技術、応用例、そして大阪地域における最新の導入事例などを、製造現場目線で分かりやすく解説していきます。

ミリ波・テラヘルツ波とは何か?~基礎から理解する

ミリ波は、おおむね30GHz~300GHzの周波数帯域(波長1mm~10mm)を指します。
一方、テラヘルツ波はその上位帯域で0.1THz(=100GHz)から10THz(波長3μm~3mm程度)までを範囲とします。

この領域は従来、通信やセンシングの主力だったマイクロ波や赤外線と比べ、まだ応用が広がりきっていません。
しかし、「透過性」「高分解能」「非接触測定・イメージング性能」といった特徴から、その潜在力が各所で注目されています。

具体的な特徴

– 高い直進性と対象物の深部観察能力
– 金属や水分には弱いが、樹脂やセラミックスなどには内部まで到達可能
– 他波長領域では難しい「ミリ単位の高分解能センシング」が可能
– 通信分野では広帯域確保がしやすく、10Gbpsを超える超高速無線通信の実現

これらの特徴を活かして、従来の電波では見えなかった“現場の真実”や、これまで見過ごされてきた“隠れた不良”を明らかにする切り札となりつつあります。

製造業におけるミリ波・テラヘルツ波応用事例

次に、実際の現場での用途について、大手メーカーの事例や大阪を中心とした先進企業の動向を交えて紹介します。

品質管理:非破壊・非接触分析で高度な安定生産を実現

例えば精密部品や樹脂成形品。
表面はきれいでも“埋没クラック”や“密着不良”など、目視・X線CTでは見落としやすい欠陥の検出が課題です。

ここで、テラヘルツ波イメージングを活用すると、表面コーティング内に潜む異物や層間剥離などを非破壊で容易に検出できます。
大阪の某自動車部品メーカーでは、従来は抜き取り検査に頼っていた複層樹脂の溶着部を100%工場ライン上で自動検査。
コスト削減と品質保証を同時に実現した事例もあります。

生産管理・工場自動化:透過センサーレーダによるプロセス可視化

ミリ波レーダはセンサー用途の広がりが著しいです。
工場内でベルトコンベア上の商品の位置・流量を高精度に測定したり、パレット積み状態を機械で安全に確認したりできます。

ある大阪の食品メーカー工場では、湿度や粉塵が多くカメラや赤外線センサーでは誤検知が発生しやすかった工程。
ミリ波レーダセンサー導入後、安定稼働率が大幅アップしました。
現場では今なお「人の目・経験」に頼る部分が残っていますが、ミリ波などはそのギャップを驚くほど素早く埋めてくれます。

工場内通信:次世代無線とスマートファクトリー化

工場のFA(ファクトリー・オートメーション)システムでも、ワイヤレス通信の高速化・安定化が課題でした。
高密度多点同時接続、即時レスポンス、干渉回避など、従来は優先的に有線が使われていた領域で、ミリ波・テラヘルツ波帯無線LAN(例:IEEE802.11ad/ayなど)が少しずつ導入され始めています。

たとえば大阪の大型電子部品工場では、生産ライン増設時のレイアウト変更・AGV(自動搬送車)の増設にも有線レスで即応可能。
自動化・効率化を支える基盤となります。

ミリ波・テラヘルツ波導入の現場課題と解決のヒント

実際の工場現場でこれら技術を導入しようとすると、以下のような現実的な課題に直面します。

設備投資コストとROI判断

一度に数百万円~数千万円規模の設備投資を要する場合、現場だけで判断がつかないことが多いです。
そのためには、明確な「数値化できるメリット(歩留まり改善、不良削減、人件費削減など)」を事前に比較・仮説検証し、経営層を説得する“ストーリー設計”が重要です。

現場スキル・既存インフラとのギャップ

アナログ作業・人海戦術中心の職場では、新技術導入が「職人のノウハウ蔑視」と誤解されることもあります。
現場リーダーや技能者を巻き込み、「作業負担軽減・働きやすさ向上」という“現場ファースト目線”を説明の出発点としましょう。

バイヤーとサプライヤーの共創スタンス

新技術の導入には、購買(バイヤー)と供給側(サプライヤー)の二人三脚が不可欠です。
従来の「コストダウン」交渉一辺倒を脱し、現場課題・KPI・利益配分までオープンに議論できる“共創型バイヤー”こそが、ミリ波・テラヘルツ波技術の社会実装を加速させます。

実際、大阪の現場でも、サプライヤー技術者が現場で試験導入を繰り返し、要件をカスタマイズする『伴走型開発』で成果を上げています。

昭和を脱し、未来につなぐテラヘルツ革命のロードマップ

「良い技術は分かる、しかし自分たちの現場に本当に使えるのか」が、現場エンジニアや工場長、調達担当者の本音です。
そこで、以下のように導入ロードマップを描くことをおすすめします。

1. 最小導入PoC(Proof of Concept)で「現場で使えるか」をまず試す

仰々しい全社導入ではなく、「ラインの一工程」「一拠点」でのミニテストから開始。
小さく始め「現場の本音・課題」を顕在化させましょう。

2. 数値・ビフォーアフターで効果を見える化

導入前後でのQCデータ(不良率、生産性、検査工数など)を定量管理。
現場・経営層にも数字で成果が「見える」仕組みが説得力です。

3. 現場とバイヤー・サプライヤーの三位一体で“共創”PDCAを回す

課題抽出から最終導入・運用、継続改善まで。
相互フィードバックと現場密着が、アナログな現場力 × 最新技術を両立させるカギとなります。

大阪特集:ものづくり最前線で進むイノベーションの実際

大阪には、全国から多様な技術が集まり、スタートアップ・中小企業から大手メーカーまで、現場改善のDNAが根付いています。
製造業がクローズドになりがちな首都圏と異なり、オープンな技術交流や共創事例も豊富です。

たとえば、
・精密機器メーカーと大学発ベンチャーによる、ミリ波レーダー搬送ロボットの高精度安全制御
・伝統工場のDX化:テラヘルツ分光分析による現場ラボレス化と人材多様化
・産学官連携による「関西テラヘルツ産業推進PJ」

などが、日々新しい価値共創を生み出しています。

まとめ:製造業のポジショニング戦略としてのミリ波・テラヘルツ波技術

ミリ波やテラヘルツ波の技術は、一見するとハイテク・最先端ですが、実際には「現場の本音」と素直に向き合い、アナログな現場巻き込み型でうまく活用することが成功への近道です。

購買やサプライヤー担当者は、「この新技術で大幅な現場課題解決ができた」と胸を張ってビジネスストーリーを描ける機会に恵まれています。

昭和的な“モノ・カネ”だけではない、人・技術・データの三位一体。
大阪という現場密着のものづくり風土を最大限に活用し、製造業に新たな地平線を切り拓いていきましょう。

今こそ、日本のものづくり再興の鍵として、ミリ波・テラヘルツ波レーダーセンシング通信の現場導入に、みなさんも挑戦してみてはいかがでしょうか。

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