投稿日:2025年6月29日

なぜなぜ分析とゼロベース思考で問題解決力を高め再発防止を実現する実践講座

はじめに:なぜなぜ分析とゼロベース思考の重要性

製造業の現場では、日々さまざまな問題が発生します。
不良品の発生、納期遅延、設備の故障、品質トラブルなど、クリアしなければならない課題は枚挙にいとまがありません。
これらの課題に対して、「なぜなぜ分析」と「ゼロベース思考」を駆使して根本から解決し、二度と同じトラブルを起こさない仕組みを作り上げることは、今や現場力の底上げ・企業競争力の強化に直結します。

特に、昭和気質が色濃く残る製造業の現場では、「昔からこうやってきた」「前任者のやり方を踏襲する」といった常識が根深く残っています。
時代とともに進化する環境に適応し、真の問題解決力を磨くためにも、ラテラルシンキング(水平思考)を意識しつつ、徹底した現場目線で「なぜなぜ分析」「ゼロベース思考」を実践していく必要があります。

本記事では、長年の製造現場経験をもとに、実践的な問題解決手法を徹底的に掘り下げてご紹介します。
また、調達購買・サプライチェーン全般・品質管理の観点も織り交ぜ、バイヤーやサプライヤー、さらには現場の若手・管理職まで幅広く役立つ内容をお届けします。

なぜなぜ分析の基礎と現場実践のポイント

なぜなぜ分析とは?

なぜなぜ分析はトヨタ生産方式(TPS)の中核をなす問題解決手法です。
「なぜ」「なぜ」と5回程度掘り下げていくことで、表面的な要因ではなく、真の根本原因(ルートコーズ)を特定する力を養います。
これにより、その場しのぎの対策ではなく、再発防止へとつながる本質的なアクションへと導くことができます。

なぜなぜ分析にありがちな落とし穴とコツ

とはいえ、現場での「なぜなぜ分析」はうまくいかないことも多々あります。
よくある失敗例として、
・「なぜ?」を形だけ5回繰り返しているだけ
・仮定や憶測、感情論が混じって本質から逸れる
・多忙を理由に“犯人探し”で終わってしまう
などが挙げられます。

現場で実践する際のコツは、
1. 必ず客観的事実(データ、記録、現物)に基づき原因を追究する
2. 主語を「~さん」ではなく「仕組み」や「条件」に変換する
3. 上司や他部署とも壁を作らず、自由闊達に質問し合う
この3点を強く意識してください。

例えば、納入品が不良だった場合、単に「なぜ作業員Aさんがミスをしたのか?」と個人に矛先を向けるのではなく、「なぜこの工程でミスが起きやすいのか」「なぜ異常が気付きにくい仕組みなのか」と工程や仕組み側に視点を移すことが大切です。

なぜなぜ分析・現場での実例(品質トラブル編)

ある電子部品メーカーで、顧客から「不良品が混入していた」と苦情がありました。
出荷時の目視検査ではOKと思われていた品物ですが、なぜクレームが発生したのか。
実際に行った「なぜなぜ分析」のプロセスを簡単にご紹介します。

1. なぜ不良品が混入したのか?
→ 最終検査で発見されなかった

2. なぜ最終検査で発見できなかったのか?
→ 検査員が外観異常を見落とした

3. なぜ見落としたのか?
→ 異常の判定基準が曖昧で、経験による判断に頼っていた

4. なぜ基準が曖昧なのか?
→ 標準作業書に詳細な規定がなかった

5. なぜ標準作業書が不十分なのか?
→ 過去トラブルを反映・更新するプロセスがなかった

この結果、「検査基準を定量的に明確化し、異常発見例をマニュアルに追加、定期的な教育を強化する」といった、個人依存ではない再発防止策に落とし込めました。

ゼロベース思考で既成概念を疑う

ゼロベース思考の意義とは?

昭和世代から続くアナログ慣習は、ベテランの“勘と経験”によって回りがちです。
“これで良い”と固定観念にとらわれず、一度過去や常識を棚上げして、まったく白紙の視点で業務プロセスや仕組みそのものを見直すこと、これがゼロベース思考です。

ゼロベース思考は、製造業において劇的なコスト低減やイノベーションを生むきっかけとなります。
なぜなら他社事例や新技術の柔軟な導入を促し、既成概念の「あるべき姿」ではなく、「本当にあるべきか?」を問い続けられるからです。

ゼロベースで解決策を発想するラテラルシンキング

例えば、「月末はどうしても残業が多くなる…」「不良品の選別は絶対に目視検査…」と決めつけていませんか。
その当たり前を分解し、「まったく新しいやり方」を柔軟に発想することが変革の第一歩です。

・検査はAIや画像認識に一部切り替えできないか?
・仕掛品の山を、ストックレス生産やセル生産方式で改善できないか?
・間接部門にも脱エクセル・RPA導入を進められないか?
これらは実際に現場で成果につながった事例です。

他にも物流のルール、発注方式、作業訓練の進め方まで、細部まで疑ってみること。
現場と改善担当者、設備担当・IT人材など多様な職種を巻き込んで変革を実践していきましょう。

調達購買のゼロベース思考導入の勘所

サプライヤーとバイヤーの関係においてもゼロベース思考は強力です。
・「毎年同じ数量で発注・同じ条件で交渉していませんか?」
・「為替や原材料市況が変化しても価格交渉の土台を見直していない?」
・「取引ルールや納期の決め方について新しいアプローチをしているか?」

こうした問いかけが、業界にありがちな“サンクコスト”や慣例を打ち破るカギとなります。
従来の相見積り・直接交渉だけでなく、電子商取引(EC)・オンラインRFQや、仕様そのものの再提案(VA/VE)、共創パートナーとのアライアンス提案など、革新的な購買戦略を導入するべき時代です。

なぜなぜ分析とゼロベース思考の相乗効果

「なぜなぜ分析」で現場の根本課題を浮き彫りにし、「ゼロベース思考」で斬新な解決策を創出する。
この2つのアプローチを組み合わせることで、短期的な小手先の対処に終わるのではなく、事業構造そのものを改善・最適化していくことができます。

現場目線と経営目線、ベテランの知恵とデジタルの力、すべてを“地続き”で融合させるのが、これからの製造業のあるべき姿です。

再発ゼロ・現場の自律的改善を目指して

現場主導の改善活動は、一度きりのプロジェクトで終わるのではなく、日常的な「なぜなぜ」の問い直し、そしてゼロベースでの全体最適(TOC的視点も含む)にシフトさせることが理想です。

また、解決策の浸透においては
・成果の“見える化”(KPIやダッシュボード活用)
・ローテーション教育やテーマ改善の“場づくり”
・組織横断での失敗共有(あえて“失敗”を表彰する仕組み)
などを導入し、個人ではなく仕組みで再発ゼロを目指しましょう。

まとめ:現場の知恵×新しい思考で次世代へ

働き方も取引の在り方も激変する令和時代、昭和流の「あたりまえ」を“なぜ?”とひたすら問い直し、“もしゼロからだったらこうする”という視点で再構築することで、停滞する業界でも圧倒的な差別化が可能になります。

そして何より、“働きやすく、再発事故のない、イキイキとした現場”は、現場で汗を流すみなさんの生活と誇りを守ります。
自己の成長にも直結しますし、若手や他社・海外との競争に負けない職場へ変革することもできます。

本記事が、バイヤーを目指す方、現場のサプライヤー担当者、そして日々現場改善に奮闘するすべての方々への実践的ヒントとなれば幸いです。
ぜひ、今日から「なぜ?」と「ゼロベース」を現場に持ち込み、次世代のものづくりを共に進化させていきましょう。

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