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新規事業成功へ導く事業開発計画策定と研究開発テーマ活用法

目次
はじめに―なぜ今「新規事業」と「開発テーマ」が重要なのか
現代の製造業は、かつての高度成長期やバブル期の延長線上にはありません。
グローバル競争の激化、エレクトロニクスやAIといった最先端技術の台頭、市場ニーズの多様化、そして人手不足や省エネなど社会的要請の高まり――。
これらを背景に、いかに新しい事業を生み出し、既存の事業を進化させ続けていくかが、モノづくり企業の未来を左右しています。
この潮流は、老舗大手から中堅・中小企業まで例外なく及んでいます。
「今まで通りの現場力」「匠の技や勘だけ」では、変化の大きな時代を乗り越えられなくなっています。
その中で求められているのが、現場目線に立脚した実践的な事業開発計画、そして的確な研究開発テーマ設定と活用です。
製造業の新規事業、なぜ失敗が多いのか
「計画ありき」で現場が置き去りにされる構造的問題
製造業の新規事業開発は、経営陣の強い意思や「時代に乗り遅れるな」という大号令の下、トップダウンで進みやすい傾向があります。
ところが、現場社員やバイヤー、サプライヤーが十分に巻き込まれず、戦略と現場の実態が乖離してしまうケースが非常に多いです。
特に、研究開発テーマが「流行り」や「先進技術ありき」で決まり、現場での量産性・コスト・供給体制・安全性・環境規制といった実務的な視点が後回しにされがちなところが問題です。
また、「前例がない」「成功事例が少ない」ことを過度に恐れ、リスクを取って地平線を切り拓こうというラテラルな発想が乏しくなっています。
結果、計画倒れ・机上の空論が量産され、貴重なリソースや現場の信頼感を失いやすいという現象に陥っています。
昭和から続くアナログな商習慣の壁
多くの大手メーカーの現場――とりわけ調達購買や生産管理部門には、「昔からこうしてきた」という強い慣習があります。
紙伝票による進捗管理、属人的な仕入先選定、“顔の見える”取引先への発注…。
新規事業ではしばしば、このような昭和型の慣行が足かせとなり、俊敏な開発・立ち上げやオープンな連携が進みにくくなります。
また、サプライヤーとの契約慣習やコスト構造が、急激な新分野展開に対応しにくい構造的問題も根深いです。
この「アナログな壁」を乗り越え、現場の知恵を活かしながらどう計画を進めていくかが、日本の製造業の命運を分ける分岐点だと言えます。
現場視点で実践する「事業開発計画」の策定プロセス
1. ニーズとシーズから「本当に意味あるテーマ」を抽出する
新規事業開発では、市場のニーズと自社の強み(シーズ)、さらに現場でのフィージビリティの三者を冷静に捉える必要があります。
・なぜ今この分野に参入するのか?
・誰のお困りごとに本当に応えるのか?
・自社が培った技術や現場力は、どこで一番生かせるのか?
・調達~量産~物流までの現場プロセスは新テーマに耐え得るか?
ヒアリングや現場観察、他業界事例の分析、現場スタッフとのディスカッションを粘り強く繰り返します。
バイヤーとしては、ときに現場の声を「逆風」「抵抗勢力」と捉えがちですが、それは本能的なリスク察知であり、うまく巻き込めば事業開発の大きな推進力・ブレーキ役となります。
2. 多様な関係者(バイヤー、調達、サプライヤー、工場現場)を早期に巻き込む
机上だけで計画を作らず、早い段階から調達担当者や購買、サプライヤー、場合によっては外注先の現場リーダーまで声をかけます。
たとえば、新しい材料や設備・工程が必要なら、調達先の開拓・選定基準を明確にし、既存ネットワークを活用したパートナー発掘を図ります。
さらに、バイヤーとして「価格」「納期」「品質」だけでなく、取引先が持つ潜在的な技術・ノウハウ、協働開発への姿勢といった情報も重視しましょう。
現場メンバーとの「壁打ち」を通じて、計画の穴や意外な課題も早めに発見できます。
ここで重要なのは、部門間の“縦割り意識”を解いて、横串で共通認識を得ることです。
これにより、社内・社外のサプライチェーン全体で新規事業の実効性が高まります。
3. スピーディーな仮説検証と「小さな成功」の積み重ね
現代の新規事業開発において「完璧な計画を作りこんで一気にGO」はもはや過去のものです。
むしろ、ラテラルシンキング的な発想――
「できるところからまず小さく始める」
「現場で失敗しても、修正してゴールに近づける」
――こうした柔軟さが不可欠です。
社内やサプライヤーと協力し、小ロット試作・実証実験(PoC)を回しながら、「小さな成功体験」を積み重ねていきます。
これにより現場や調達サイドの納得感・参画意欲が高まり、さらに本格的な開発・量産スケールへの移行もスムーズになります。
バイヤーも、現場にこまめに足を運び、困りごとや成功例をITツールや社内Wikiなどで可視化することが重要です。
「開発テーマ」を活かすバイヤー・サプライヤーの立ち回り方
テーマ設定にバイヤーの現場経験を生かす
研究開発テーマの策定には、研究開発部門や商品企画だけでなく、実際にモノを買う・作る現場バイヤーの経験と直感が欠かせません。
過去の取引実績や納入トラブル、価格交渉での痛い経験、QC(品質管理)上の課題――。
これらは、理論や経営ビジョンだけではカバーできない「実態」です。
「現場で苦しんだ経験値」をテーマ選定に反映させることで、机上の空論に終わらない、リアルな開発テーマが見えてきます。
たとえば、調達困難な特殊原材料への依存度を下げる、量産時の歩留まりを向上させる、サプライチェーンのリスク分散を兼ねてテーマを調整するなど、バイヤーならではの視点が新規事業の勝敗を左右します。
サプライヤーとして「攻め」の提案をするための心得
一方、サプライヤー側の立場でバイヤー目線を持つこともきわめて重要です。
上流企業の動向や業界の変化、市場で何が求められているか――。
アンテナを高く張り、単なる「受け身」の調達先から、「提案型パートナー」へとシフトチェンジしましょう。
たとえば、「当社の加工技術なら新素材の○○にも応用できる」「御社のコスト課題をこの生産プロセスで解決できる」と具体的な提案を持ち込むことが、新規事業計画のうねりを生み出します。
そのためにも、製品開発テーマや企業ビジョンの背景理由を積極的にヒアリングし、バイヤーや開発担当者と本質的な議論を重ねていきましょう。
「巻き込み力」を最大化するコミュニケーションのコツ
調達交渉や技術検討の場では、「内輪だけの言葉遣い」や「前例主義」「暗黙の空気」といった日本企業特有の障壁もあります。
これを打破するには、「一部の専門家だけで話を進める」のではなく、現場の多様な声を拾い、オープンかつ透明性のある意見交換を心がけましょう。
バイヤー・開発担当・サプライヤーがフラットに意見を言い合える風土をつくることで、現場目線の品証チェックや課題発見、目の前の小さな改善が実現しやすくなります。
こうした“巻き込み力”こそが、複雑化・不確実化時代の新規事業推進に欠かせない武器となります。
昭和からの脱却―アナログ現場を進化させるには
紙→デジタルへシームレスに移行するステップ
とはいえ、現場の全てを一挙にデジタル化するのは現実的ではありません。
まずは、スプレッドシートやタブレットでの簡易な進捗管理、購買伝票・受発注データの電子化といった「業務の見える化」から始めるのが良いでしょう。
現場リーダーやベテラン作業者を巻き込み、アナログ工程×デジタルツールのハイブリッドで効果検証を重ねることで、現場全体が巻き込まれる仕組みができていきます。
現場バイヤーが「ラテラルシンキング」を養う方法
製造業における先入観・慣習を超えるには、多様な部門・他社・異業種の事例に触れる「インプット」と、その現場に合った実験・検証の「アウトプット」を繰り返すことが肝心です。
たとえば、異業種交流会や他社工場見学を通じて、「自社内だけでは思いつかない」新鮮な発想源を得ましょう。
さらに「小さな実験(Try)」を現場で行い、「こんな調達方法もある」「こんな自動化も可能」と各種仮説検証を推し進めましょう。
まとめ―製造業の”新しい地平線“へ
新規事業の成功は、計画前倒しや効率化だけでは決して成し遂げられません。
「現場力の結集」と「多様な立場の相互理解」、そして「ラテラルシンキングによる挑戦」が不可欠です。
経営層、現場リーダー、バイヤー、サプライヤー――すべての関係者がフラットに意見を交わし、自分ごととして事業推進に巻き込まれる。
昭和型のアナログ現場も、今こそ変わるべき時です。
日本のものづくり現場には、まだまだ眠れる知恵とポテンシャルが数多く埋もれています。
一人でも多くの現場担当者が、事業開発計画や研究開発テーマの核心に参画し、「自分ごと」として挑戦に取り組むこと。
これこそが、新しい地平線を切り拓く真の原動力となります。
製造業の未来を共に創りましょう。
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