投稿日:2025年6月30日

有限要素法基礎と要素選択精度向上ポイントを学ぶ解析実習ガイド

有限要素法(FEM)とは?〜製造業現場のためのやさしい導入〜

有限要素法(FEM:Finite Element Method)は、現代の製造業において欠かせない解析手法です。

機械構造物、自動車部品、プラント配管、家電製品の樹脂成形品と多岐にわたり、その“壊れやすさ”“耐久性”“安全性”といった性能を数値で予測できる点が魅力です。

現場での感覚値やベテランしか持たない勘だけに頼らない、科学的なモノづくりの要となっています。

昭和時代から令和に至るまで、現場のアナログ文化と科学的アプローチはせめぎ合ってきました。

しかし、近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の流れに乗ってFEMの重要性はますます高まっています。

実際に調達購買や製造現場、生産管理担当の方でも知っておくべき知識であり、バイヤーやサプライヤー双方がFEM解析を共通言語として活用する時代です。

有限要素法の基本の流れ〜現場で使える5ステップ〜

1. 解析対象の定義

何をどのような条件で評価したいのかを明確にします。

例えば、機械のフレームが「曲げ荷重でどれくらいたわむのか」「どこが破断しやすいのか」など、設計意図や現場の懸念事項を書き出しましょう。

2. モデリング(形状作成)

CADデータを活用して、解析ソフトウェアで使える形状モデルを作成します。

ここでは、“作り込みすぎ”ず、“簡素化しすぎ”ないさじ加減が大切です。

無駄に複雑なモデルは解析時間が無駄に長くなりますし、シンプルすぎて肝心な部位を省略してしまえば、現場での再現力が落ちるからです。

3. メッシング(要素分割)

形状をたくさんの小さなパーツ(=有限要素)に分割します。

この要素サイズが解析精度の肝であり、バイヤーやサプライヤーとしても「何故ここを細かくしたか?」という意図説明が大切です。

大きな要素にすれば計算は速いですが、細部の現象(応力集中など)が再現できにくい。

逆に細かくすれば精度は上がりますが、計算負荷が重くなる。

コストと精度のバランスを現場目線で見極める必要があります。

4. 材料物性・境界条件・荷重条件の設定

材料のヤング率、ポアソン比など力学特性の正しい設定はもちろん、実機に合わせた拘束条件や作用力をいかにリアルに再現するかがポイントです。

製造現場からのインプット――例えば、溶接部での応力が上がる、締付トルクによるボルト座面の摩擦など――をきちんと反映させることが、解析品質を大きく左右します。

5. 解析実行と結果評価

解析を実行し、得られた数値結果(変形、応力、ひずみなど)を製品設計や工程設計に反映します。

ここで感覚値と整合が取れているか、設計要求を満たしているか、現場での再現性を念入りにチェックします。

バイヤーやサプライヤーが「解析の目線合わせ」をすることも、これからの標準です。

要素選択の精度向上ポイント〜意外と見落としがち!

有限要素法で現場トラブルの多くは、「要素サイズや種類の選定ミス」「解析目的の勘違い」「計算まかせで検証しない」ことが原因です。

ここでは精度を高めるために注意すべき、実践的なポイントを紹介します。

要素タイプの選び方

板厚が薄いものはシェル要素、塊形状はソリッド要素、1方向に長いものはビーム要素を使いわけることが肝心です。

たとえば、2mm厚の金属板をソリッド要素だけで分割すると、極端に計算コストが上がるうえ、実は曲げ挙動がうまく求まらない場合もあります。

“現場で触っている感覚”と、“CAE(Computer Aided Engineering)の仮想世界”をリンクさせるコツは、まず板金や鋳物など実物の形状特性を理解することです。

要素サイズの決定(メッシュの細かさ)

要素を細かくするほど“応力集中”や“変形のピーク”が色濃く見えてきます。

しかし、どこまでも細かくしてしまうと膨大な計算時間がかかり、納期遅れやPCダウンのリスクも出てきます。

そこで、現場目線では「工程上、ここが最も破損しやすい」「ここが顧客から性能要求されている」部分つまり“クリティカルゾーン”を重点的に細かくするのがコツです。

残りは粗いままでOKと割り切れば、十分な結果が最小限の作業で得られるのです。

材料物性・工程条件の“実機合わせ”

新規材料やサプライヤー変更の際、「メーカー標準の物性値」をそのまま使うと、思わぬ誤差が生まれることが多いです。

現場で実測データや、手配先のロット間ばらつきなど生データを使う癖をつけましょう。

また、生産過程(溶接ひずみ、焼きなまし条件、再結晶など)による材質変化も見逃しがちです。

この“工程起因の特性変化”を意識しているかどうかで、解析の説得力が大きく変わります。

アナログ文化の“壁”を越える! 現場・バイヤー双方のFEM活用のヒント

日本の製造業現場は、長期間かけて築き上げたノウハウ、名人芸が多く残っています。

一方で「FEMなんて、実物で試せばいい」と言われがちな現場も、まだまだ多いでしょう。

しかし現在は、原材料費高騰、人手不足、短納期、環境負荷低減など課題が山積です。

FEMの活用が、設計段階や調達時点での“後戻りコスト”削減や品質安定につながるのは明らかです。

現場リーダーや工場長の方へ

FEM解析の結果やシミュレーション根拠を、現場メンバーと「絵や数値で共有する」ことを心がけましょう。

実際の破損品や工程不良と結果を付き合わせ、「何がどう違うか」サンプルを元に話すと、経験・勘と理論のいいバランスが生まれます。

現場での“とっかかり”には身近なテーマが大切です。

バイヤー・調達担当の方へ

見積仕様書に「FEM解析結果」「応力集中部のメッシュ分布」「仮定・設定条件」などを項目立てて要求すると、サプライヤーとの技術的目線合わせがしやすくなります。

また、FEM解析を根拠としたコスト比較や工程KY(危険予知)も可能です。

データに裏づけされた打ち合わせやコスト交渉が増え、納得性の高い意思決定がしやすくなります。

サプライヤー・協力会社の方へ

バイヤーからFEM解析要求がされたとき、不明点や現場要素を率直にヒアリングする姿勢が大切です。

例えば「どの工法で納品するのか」「板厚公差、端面処理、穴あけ位置まで厳密さが必要か」といった、実態を含めて“モノづくりの現実”を織り込むことで、解析精度は劇的に向上します。

FEM導入・精度向上の“あるある”失敗例とその対策

実践現場でよく起こりがちな失敗事例、そしてその乗り越え方をいくつか紹介します。

クリティカル箇所のメッシュが粗すぎた

→ 対策:設計レビューや共同検証工程で「応力最大部」を事前に予測。ピンポイントで要素を細かく修正しましょう。

条件入力ミスで全体値がズレた

→ 対策:現場の生産工程順序、現物試験値とつねにクロスチェックしましょう。Wチェック(複数人での条件確認)も導入推奨です。

メーカー手配材と現場現物で特性が違った

→ 対策:ロットごとの材質試験、表面粗さや残留応力なども“工程反映”としてモデル化を検討します。

今後の製造業にとってのFEM活用と、バイヤー目線での進化ポイント

今後、製造業はサステナビリティ対応やQCD(品質・コスト・納期)の更なる見直しが求められています。

調達購買やバイヤーの視点でも、FEMの技術的妥当性を問える力が、他社との差別化や取引先開拓の鍵となります。

サプライヤー側でもFEM解析を通して「設計・生産のベストバランスを提案」できる力が必要です。

昭和的な“思い込み”“慣例”を乗り越え、「現場知×数値解析」の両輪で、持続的なものづくり力を高めていく姿勢が不可欠です。

まとめ:現場で“使う”FEMへ — 実践者の第一歩 —

有限要素法は単なる理論でも、高価なシミュレーションツールでもありません。

現場で「なぜ失敗するのか」「なぜ歩留まりが安定しないのか」を根本から解き明かし、生産性、品質、コストまですべてに寄与する現場知そのものです。

要素選択・精度向上のために必要なのは、「現場のリアル」と「理論・数値」のバランスを見る目、そしてバイヤー・サプライヤーを問わず、自分たちの課題を解決する道具としてFEMを正しく“使ってみる”勇気です。

今日からできる小さな一歩が、製造業全体の新しい地平線を拓きます。

あなた自身が現場の最前線で、“失敗しない解析” “データに強いバイヤー” “提案力あるサプライヤー”として、FEMの真の価値を体現していきましょう。

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