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Excelシミュレーションで習得する振動解析と制御設計の基礎

目次
はじめに:製造業現場における振動解析の重要性
製造業の現場で働いていると、「設備が妙に揺れている」「生産ラインからいつもと違う振動音がする」など、振動に関する課題に直面することが少なくありません。
振動は設備の劣化や故障、製品品質の低下に直結しやすく、しっかりとした管理や対策が欠かせない要素です。
ところが、実際には昭和時代のアナログな勘や経験に頼っているという工場もまだまだ多く、最新の振動解析ツールや理論が十分に活用されているとは言えません。
そんな状況下で役立つのが、手軽に誰でもアクセスできる「Excelを使った振動シミュレーション」です。
本記事では、現場実務とラテラルシンキング(水平思考)を融合させ、バイヤーや現場担当者、これからサプライヤーや技術職を目指す方にも分かりやすく振動解析と制御設計の基礎を紹介します。
振動解析とは何か?現場で起きるリアルな事象
なぜ工場の設備や製品は振動するのか
工場にある設備や生産ラインは常に「動き」が伴います。
例えば、モーターやベアリングの回転、プレス機の打ち抜き動作、コンベアの繰り返し搬送などが典型です。
こうした機械は目に見えないほど小さい振動を必ず発生させており、時には一部部品の損傷や偏摩耗、ボルト・ナットの緩みに発展することもあります。
重量バランスの崩れや設計値の誤差、加工精度のばらつきなども、振動原因の一つです。
現場で起きている“よくある振動トラブル”
・部品の破損や取り付け不良による異音
・ライン停止の原因となる異常振動(アラーム発生)
・製品寸法への影響
・稼働中のランダムな設備不良(再現性が乏しい現象)
これらが放置されると、⼤掛かりな修理や突発のラインストップにつながり、多額の損失を招きます。
その予防や早期検知には、正しい振動解析の知識と“現場ですぐ使える技術”が不可欠なのです。
なぜExcelで振動解析シミュレーションを行うのか
「専門ツールではなくExcelなのか?」現場の実態に根差して
高価で高機能なCAE(コンピュータ支援工学)ソフトや解析ツールは数多くありますが、中小規模の工場やサプライヤーではコストや現場リテラシーの壁が高く、導入や浸透が進まない場合が多いです。
現場担当やバイヤー、エンジニアにとって最も身近で、誰もが扱いなれたExcelは、初期学習コストが低く、“とりあえずやってみるハードル”が劇的に下がります。
本記事では、Excelで振動現象を数値シミュレーションできる実践的な手法を紹介していきます。
基本中の基本!「1自由度系」振動解析をExcelでやってみる
振動現象“最小単位”をイメージする
最も単純な振動のモデルは「質量」「ばね」「ダンパー」で構成される“1自由度系”です。
例えば「台車についた車輪が道路の凸凹で上下に揺れる」「作業テーブルがバネの上で弾む」といった状況と同じです。
この構造の運動方程式は以下のようになります。
m×a + c×v + k×x = F(t)
m:質量(kg)
c:粘性ダンパー(減衰)係数
k:ばね定数
x:変位
F(t):外力(時間関数)
この方程式をExcelで「時間を0.01秒ごとに区切って数値計算」することで、簡単な振動現象を再現可能です。
Excelでのシミュレーション手順
1. 行に時刻(t)、各列に変位(x)、速度(v)、加速度(a)を割り当てます。
2. 秒間サンプリング0.01~0.1s程度の細かな間隔でデータをつくります。
3. 初期値(x、v)=0から、加速度a=(F(t)-c×v-k×x)/m を使い、各時刻ごとに更新します。
4. 次の行の速度v、変位xを「ひとつ前の行+a×Δt」「ひとつ前の行+v×Δt」として順次計算していきます。
これだけで、「外力に対する台車の揺れ」や「目標に対していかに早く落ち着くか」など定量的に可視化できます。
現場実装の工夫ポイント
・センサーやIoT化が進んでいない現場でも再現できる
・Excelシートを“横に並べて”パラメータ比較し、最適条件を探る
・振動測定値(例えば加速度計データ)を実測値で近似できる
・現場担当者やバイヤーが解析の初歩を体得でき、議論が活性化する
手計算では閾値を超える煩雑な計算も、Excel関数とコピー&ペーストでスマートに処理できるのが利点です。
応用編:制御設計まで見据えたExcelシミュレーション
フィードバック制御とは?現場目線で考える
ライン設備や自動搬送装置には、「振動をできるだけ速く収束させる」「一定の速度や位置精度を保つ」といった制御がつきものです。
ここでコアとなる技術が「PID制御」などのフィードバック制御です。
エンドユーザー(製品メーカーなど)は「自動で不具合の起きない設備」「仕損じ率の低い生産ライン」を求めています。
一方でサプライヤーは「過剰品質や過剰コスト」を避け、合理的に提案する必要があります。
Excelでシミュレーションすれば、フィードバック制御の効果やパラメータ調整の感度を素早く試せます。
Excelで制御ループを再現する
例えば、位置制御システムでは、
目標値-現在値=偏差(e)
出力=Kp×e+Ki×積分(e)+Kd×微分(e)
この「Kp」「Ki」「Kd」はExcelシート上で直接パラメータ入力でき、現場として体感しやすい値に調整可能です。
PID制御を組み込むことで、「過大な振動を早く収束」「応答性と安定性を両立」させる最適条件を探ることができます。
ラテラルシンキングで広げる“業界の新地平”
Excelによるシミュレーションは、単なる解析ツールで終わりません。
現場メンバー、技術職、工場長、バイヤーが同じ「見える化されたシート」を操作することで、現場すり合わせや迅速な判断が実現します。
アナログな現場文化や「前例主義」と相性の悪そうなシステム工学も、現場で「自分ごと化」すれば強力な武器になります。
現場の“知と経験”をデジタルで再現し次世代につなぐ
・過去のベテランの“勘”を数式化し、Excelのテンプレート化
・現場で起こった事例集とシミュレーションファイルのセットで社員教育を標準化
・若手や異業種人材が問題意識を持って改善提案しやすい土壌作り
・仮説→シートで検証→現場観察というラピッドなサイクルの定着
これらは、ローカルな現場ノウハウを可視化し、「地域工場」「中小サプライヤー」でも水平思考が浸透するきっかけになります。
バイヤー・サプライヤー双方にとっての“次なる競争力”
調達購買の視点でも、「振動現象→予備故障察知→生産ロス低減」は大きな取引条件の差につながります。
バイヤーとして「設備の稼働信頼性の可視化」を求める際、現場に即した解析事例や再現シートが信用構築の要素となります。
サプライヤーとしても「安かろう悪かろう」から「合理的な根拠ある最適提案」へと転換できます。
さらに、グローバルサプライチェーンでは、設備安定稼働と自動化、遠隔監視・IoTとの連携が加速する中、「小さな解析能力」がオペレーショナルエクセレンスの基盤となります。
まとめ:まず“小さな仮説検証”から始めよう
昭和の時代から抜け出せないアナログ現場も、「手元のExcelで手軽に振動現象をシミュレーション&検証」できれば、大きな時間とコストの節約につながります。
バイヤー・サプライヤー・現場エンジニアが共通理解をもち、業界全体のレベルアップに寄与できるのです。
技術革新の第一歩はいつも“身近な一歩”から。
ぜひ、あなたの工場で、小さなExcelから大きな現場革新の扉を開いてみてください。
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