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SI PI解析で学ぶ基板設計とEMCノイズ対策のベストプラクティス

SI PI解析で学ぶ基板設計とEMCノイズ対策のベストプラクティス
はじめに:基板設計に求められる高度な電気特性
製造業、とくにエレクトロニクス分野において、基板(プリント回路基板、PCB)の設計は製品性能に直結する極めて重要な工程です。
多くの設計者は、「なぜEMCやSI・PI解析が厳格に求められるのか?」と改めて問い直す機会が減っているかもしれません。
しかしICT・IoTの普及、5Gや車載エレクトロニクスの高密度化により、小さなミスも製品全体の信頼性・安全性に大きな影響を与える時代へと突入しています。
本記事では、昭和時代から残るアナログ設計の知見と、最先端のSI(シグナルインテグリティ)、PI(パワーインテグリティ)解析手法、EMC(電磁両立性)ノイズ対策の実践知を紐解きながら、バイヤー・サプライヤー双方の視点で最新のベストプラクティスを共有します。
SI解析・PI解析とは何か?基礎を現場目線で抑える
SI解析(Signal Integrity)は、信号波形の歪みや遅延、クロストーク、リフレクションなど、信号品質を数値で見える化し、基板設計段階から製品信頼性を高める手法です。
一方、PI解析(Power Integrity)は、電源ラインの電圧降下やノイズ、インピーダンス異常を予測・最適化する設計支援技術です。
昭和の時代は、回路設計エンジニアの「経験則」と「勘」に頼ることが多く、「分厚いベタGNDでノイズは吸収できる」など先人の知恵が主流でした。
しかし、現代の高機能基板は、伝送速度や動作周波数の向上、実装密度の増加により、もはや見えない信号劣化や電源ノイズ対策なしでは、安定稼働すら怪しい状況です。
現場でありがちな「サンプル品は動いたが量産で不具合多発」「特定ロットで不良頻発」も、クラシカルなモデルでは予見不可なケースが多発しています。
これら根本原因の大半はSI/PI不良に起因します。
EMCノイズとは何か?その本質と昭和的対策の限界
EMC(Electromagnetic Compatibility)は、「装置が外部から来る電磁ノイズに強く、かつ自分も他に迷惑なノイズを出さない」状態を指します。
古典的ノイズ対策といえば、フェライトビーズの追加やシールドBOX、アースパターン拡大など、「アフター対応」「やってれば安心」的なアプローチが中心でした。
しかし、現代製品は筐体のプラ化や小型化、ワイヤレス通信機能の搭載といった設計進化の中で、伝統的なノイズ対策だけでは以下課題が表面化します。
– 分析なき追加部品によるコスト・工程増加
– そもそものノイズ発生源・伝搬モードを無視した無意味な対策
– 製品全体の品質保証が困難
SI・PI解析を適切に活用した設計初期段階での対応が不可欠なのです。
バイヤー視点:基板サプライヤー選定の必須チェックポイント
近年、調達現場では「部品単価・納期」志向から、「設計品質・基板性能重視」へ目利きの価値観が変化しています。
優れたサプライヤーの選定には、下記のようなSI/PI/EMC対応力の見極めがポイントとなります。
– 最新EDAツール活用によるSI/PI解析ノウハウの有無
– 現場に根ざしたEMC設計経験(検証済みリファレンスデザイン保有)
– 短納期でサンプル・量産移行できるアナログ/デジタルの混在設計力
– 不具合発生時の原因調査、設計変更対応スピードと提案力
表面的な価格交渉や納期調整だけに終始していては、いずれ「量産立上げ後のクレーム地獄」に陥りかねません。
バイヤー自身がEMC、SI/PIの基礎を理解し、基板ベンダーとのディスカッションに加わるだけで、サプライヤーの本当の実力が見えてきます。
サプライヤー視点:バイヤーの期待を超える提案型技術営業とは
基板サプライヤーに求められるのは、単なる実装・量産スキルではありません。
バイヤー側の事業成長を支える「提案型の技術営業力」が必要です。
たとえば、以下のような提案が現場で好感触を得ています。
– 基板層構成の最適化案(配線取り回し効率・SI対策両立)
– コンデンサやフェライトの配置検討結果の定量比較
– 量産時のレイアウトバラツキや部品公差まで踏み込んだPI解析資料
– ノイズ試験時の課題を踏まえた設計変更案・低コスト治具提案
現場では、「とりあえず仕様通り品物を納めて終わり」ではなく、「なぜその仕様が必要か?」「品質・コスト・納期どれを重視すべきか?」まで、顧客と共に徹底議論できる技術力+姿勢が強く求められます。
実践!SI/PI解析とEMCノイズ対策のベストプラクティス5選
ここでは、現場経験と最新理論を融合した、実践的なベストプラクティスを5つ紹介します。
1. 部品配置の初期段階から走行長・クロストークを考慮
最初から主要信号線を極力直線・等長で設計。
GND・電源プレーンを広く確保し、信号ごとのリターンパス短縮・クロストーク最小化を意識します。
各種ノイズ源(クロック、スイッチング電源)周辺の部品配置・導通設計も肝要です。
2. SI解析で「目に見えないリスク」を数値で見える化
シミュレーションツールによる波形歪み・反射の事前チェック。
単なる「設計ルール遵守」ではなく、差動ペアの不平衡・Via反射も含めた実配線パターンの電気的検証が必須です。
ノイズフロアやマージンも見える化できます。
3. PI解析による電源ラインの最適設計
大容量デカップリングコンデンサの「闇雲配置」はもはや通用しません。
必要周波数ごとのインピーダンス特性を解析し、基板上への最適配置・容量割り当てを実現します。
VCCとGNDプレーン間に戦略的VIA設置も重要な実務ポイントです。
4. EMC対策の「モード診断」+「最小限アプローチ」
ノイズ発生源→伝播経路→放射・伝導系での拡大、と二次評価まで徹底したロジカルチェックが重要。
必要最低限の部材追加(例えば、適切な位置へのチップビーズ1点投入)で最大効果を狙います。
EMC試験前のシグナルプローブによるピンポイント対策も有効です。
5. 組織横断での知見共有・設計レビュー
設計者・製造・品質管理部門が早い段階から集い、SI/PI/EMC観点でレイアウトや回路図のレビューを実施します。
特にリピート品や既存設計流用では「前回の課題」「現場の不具合事例」を持ち寄ることで、設計再現性/ノウハウの蓄積・業務効率化が叶います。
昭和から抜け出せない「アナログ業界」でも使えるノウハウ
製造業の現場には、いまだに「昔のやり方」「経験則」が強く残る組織も多いです。
しかし、どんなに規模が小さくとも「なぜこの部品を配置するのか」「量産時のトラブルを未然に防ぐ設計とは?」という問いを持つことがイノベーションにつながります。
アナログ設計や小規模ユーザーでも、無料もしくは安価なSI/PI解析ソフトの活用、手作業レベルでのシグナル・パワーラインの簡易チェックは十分実現可能です。
昭和的職人技と組み合わせ、小さな積み重ねを現場知としてアップデートすることで、競争力ある基板生産・品質維持が実現できます。
まとめ:基板設計の地平線は、現場とデジタルの知恵の合流点にある
AIや自動設計ツールが台頭する一方、製造現場で問われるのは「なぜその解析や設計変更が必要か?」本質を理解し、人間同士で腹を割って意見をぶつけ合う力です。
SI・PI解析とEMCノイズ対策は、単なる理論を超え、設計・部品調達・実装・検査と、あらゆる段階での知見共有が要です。
バイヤーとしては、「質の高い設計・提案力」を軸にしたサプライヤー選択が失敗しない調達のカギとなります。
サプライヤーにとっては、設計提案型の技術営業で顧客課題を現場主義で解決し続けることが生き残りの道です。
昭和アナログの知恵と最新デジタル解析技術が交わる地平線で、新たな価値創出と品質革新にチャレンジしていきましょう。
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