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新規事業を牽引する事業化プロデューサー育成と顧客価値創出法

目次
はじめに:製造業の新規事業が求められる背景
製造業における新規事業の重要性は、近年ますます高まっています。
日本のものづくりは、長らく高品質・高性能という強みで世界市場で存在感を発揮してきました。
しかし、デジタル化やグローバル化、顧客ニーズの細分化が急速に進む現代社会では、「従来通り」だけでは生き残りが難しくなっています。
このような環境下で、既存事業だけに依存せず、新規事業に挑戦することは企業の持続的成長や雇用の安定化、競争力強化の観点から欠かせません。
その中核を担う「事業化プロデューサー」の育成が急務となっています。
事業化プロデューサーの役割と注目される理由
なぜ今、事業化プロデューサーが必要なのか
昭和の時代から続く「現場で叩き上げのカリスマ現場監督」や、トップダウン型経営の限界が如実に現れている今、現場目線を持ちつつも社外・業界外の知見やマーケット志向を持った「事業化プロデューサー」こそが新規事業を成功に導くカギとなっています。
その大きな理由は、次のとおりです。
– 意思決定が速く、現場と経営層の橋渡しが可能
– 部門間・サプライチェーン上の壁を越えてプロジェクトをドライブできる
– 顧客価値創出、市場視点で事業構想ができる
従来の「商品開発担当」や「営業推進担当」はあくまでも既存業務の延長線上で物事を進めがちです。一方で、事業化プロデューサーは自社や部門の「当たり前」に縛られず、市場・顧客・社会ニーズという地平で新しい価値を生み出します。
製造業における事業化プロデューサーの具体的な業務
具体的には、以下のような活動を担います。
– 市場調査や顧客ヒアリングを起点とする事業仮説の構築
– 技術開発部門/工場現場/営業部門との連携・調整
– 社内ピッチや経営陣へのプレゼン・資源獲得
– サプライヤーやパートナー企業とのアライアンス推進
– 新事業立ち上げ・拡大に伴うオペレーションやガバナンスの設計
– 量産立上げ時の品質保証、生産改革、原価最適化
一言で言えば「0から1を創り、1を100に実装する橋渡し役」といえます。
求められる事業化プロデューサー像
製造業現場で特に重要な3つの資質
1. 「現場力」に裏付けられた信頼
自ら現場に入り、エンジニアや職人とも膝を突き合わせて議論できる目線・泥臭さ・人間力。現場の事情を知らないと「机上の空論」で終わります。
2. 事業構想力と調整力
市場分析、差別化要因、実現ロードマップなど頭で考えるだけでなく、現実の工場やサプライチェーン、予算と人員獲得などを一貫してドライブする力。
3. 顧客起点・マーケット志向
何より大切なのは、作りたいもの・できることを売るのではなく、「顧客が本当に価値を感じるもの」を徹底して追い求める現実感です。
昭和的な発想との決別
多くの製造業がいまだに「前例主義」や「失敗回避」に縛られていますが、成功した新規事業は往々にして「想定外への挑戦」から生まれます。
常識にとらわれず、失敗も前提としたラテラルシンキング(水平思考)で、「どこに顧客価値が転がっているか」を深く考え抜くことが求められます。
顧客価値創出のための視点とプロセス
顧客価値とは何か–モノ起点からコト起点へ
これまでは「高精度」「高耐久」「低コスト」など、プロダクトスペック自体が価値とされてきました。
しかし今、多くの顧客が求めているのは、「問題が解決される」「仕事が楽になる」「新しい収益機会が生まれる」といった“コト価値”です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)、ESG経営、脱炭素など、社会全体が変革している中で、「自社の強みでどんな世の中の課題を解決できるか」という視点が不可欠です。
実践的顧客価値創出プロセス:生産現場の目線から
1. 生産現場・サプライヤー・顧客先での観察・ヒアリング
実際にユーザーやバイヤー現場に足を運び、作業の課題や気付きに耳を傾けます。
2. インサイト(本音・本当の課題)の深掘り
なぜその問題が発生しているのか?コストダウン・効率化以外に「人手不足」「コンプライアンス対応」「属人化」など根本的な課題を探ります。
3. 強みのクロス活用による新コンセプト立案
自社技術やパートナー企業との連携で今までにないアプローチを設計します。
例:IoTセンサー+品質ノウハウ+AIで自動判別/調達購買のトレーサビリティ一元化など
4. 小さく・速く・繰り返し仮説検証(PoC)
社内外のステークホルダーを巻き込みながら試作品やパイロットモデルを回し、短期間で価値検証を進めます。
5. 事業としてスケール・拡大
事業性判断・量産・コストダウン・パートナリングなど、継続的なブラッシュアップを実施します。
バイヤー・サプライヤー視点で考える新規事業創出ポイント
バイヤー手法の新規事業応用
調達や購買を担うバイヤーは、「どのサプライヤーとどう組むべきか」「真に求められるスペックは何か」「長期の取引関係は?」
という視点で常に業界動向をウォッチしています。
この観点は新規事業でも非常に有効です。
– 新規供給網(サプライチェーン)の開拓・構築
– 本質的なコスト構造・競争力分析
– サプライヤーとの共創(コストダウンだけでなく価値共創)
など、「自分たちだけで完結しない」発想が強力な武器になります。
バイヤーが取引先や新規事業に求めること
– 任せて安心できる品質や納期管理
– 技術・コスト・リスク等バランスの良い提案
– 将来的な拡張性やアライアンス構想
サプライヤーの立場でバイヤーの思考を理解すれば、次世代のビジネスチャンスが見えてきます。
現場の泥臭さとDX・イノベーションの橋渡し
「アナログ×デジタル」で現場力をテコ入れする事例
例)
– 昭和から続く紙伝票・FAX主体の受発注をRPA/AI-OCRで自動化し、ミス防止と業務効率化
– 作業熟練者のノウハウを動画・IoTセンサーで見える化し、多拠点横展開
イノベーションと言うと難しく捉えがちですが、「現場起点の困りごと」にテクノロジーや新しい仕組みを掛け合わせることで、圧倒的な価値が生まれます。
従来型の日本的ものづくりと、デジタルネイティブな世代の掛け算で、新規事業は加速度的に生まれやすくなります。
事業化プロデューサー育成実践のアプローチ
1. 意欲ある人材の“抜擢”と社内越境
若手中堅、ベテランに関わらず「やりたい」「現場でやれる」人を早期から発掘し、R&D部門・生産現場・営業・調達部門などへローテーション配置します。
現場至上主義でもなく頭でっかちでもなく、「全体最適」で物事を企画・推進できる越境人材こそ、プロデューサーの卵として育てるべきです。
2. メンター制度やプロジェクト内教育
OJT(On the Job Training)と同時に、外部BtoBマーケットの知見や、最新技術動向、プロジェクトマネジメントや財務・事業計画立案などをメンターや外部人材と一緒に学ばせます。
現場OJTだけでは新しい視点が養えません。
外からの知見を持ち込むこと、既存の常識をあえて疑うことが重要です。
3. 失敗事例も積極共有
新規事業は必ずしも成功するとは限りません。
むしろ、
– 「なぜ失敗したのか」
– 「どこで顧客に刺さらなかったのか」
という観点を現場全体でオープンにして共有し、次のチャレンジや改善文化につなげていくことが長期的な競争力に直結します。
まとめ:製造業の未来は“現場力×事業化力”で決まる
日本の製造業がグローバル競争を勝ち抜くためには、現場力に裏打ちされた“事業化プロデューサー”の存在が不可欠です。
アナログな現場作業の価値を認めつつ、デジタルやイノベーションの力を巧みに組み合わせ、真にお客様に選ばれる「顧客価値創出型事業」を追い求めることが新しい時代の競争軸になります。
自社の中にも必ず、未来を切り拓く“地頭”の持ち主や情熱のある人材がいるはずです。
そうした人材に自由にチャレンジできる環境や、社内外リソースを越境できる機会を与えることが、製造業の現場文化を進化させ、未来の新規事業創出につながっていきます。
今、業界がアナログからDXへ、閉鎖的からオープンイノベーションへとパラダイムシフトしているこのタイミングで、「真の事業化プロデューサー育成」と「顧客価値創出」への挑戦を、一歩ずつでも始めてみてはいかがでしょうか。
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