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PIマイクロスリーブと電気自動車ロータ絶縁熱級H評価

目次
はじめに:製造業現場でのPIマイクロスリーブとEVロータ絶縁の新潮流
近年、急速に普及しつつある電気自動車(EV)市場は、従来のガソリン車とは異なる構造・要求から部品メーカーやアセンブラー、資材調達担当者まで多面的な変革を迫っています。
その中で注目を集めているのが、「PIマイクロスリーブ」と呼ばれる絶縁部材と、ロータ絶縁の“熱級H評価”です。
この進化は単なる技術革新に留まらず、昭和から抜け出せないアナログ体質の残る製造現場にも強く影響を与えています。
本記事では現場での導入実績から、その実践的な有効性や苦労、また調達やサプライヤーとの関係など、製造業ならではの悩みに寄り添って深掘りしていきます。
業界内のバイヤーやこれから目指す方、またサプライヤーの立場からバイヤー視点を理解したい方も必見です。
PIマイクロスリーブとは何か?
ポリイミド(PI)フィルムの特性と用途
PIマイクロスリーブとは、主にポリイミド(Polyimide)フィルム素材から作られた筒状の絶縁体を指します。
ポリイミドは耐熱性・絶縁性・機械強度・耐薬品性に優れ、宇宙産業から家電まで幅広く使われてきました。
これにマイクロ(=極薄)化の技術進展が重なり、EVの高効率コンパクトモータ(特にロータ部分)の絶縁材として評価が急上昇しています。
従来材との比較と現場でのインパクト
従来はガラスクロスや紙フェノール系などが一般的でした。
これらはコスト面では安価ですが、高温での絶縁耐性や材料の薄肉化、複雑形状への追従性に課題がありました。
PIマイクロスリーブは絶縁耐圧の高さ・耐熱性(後述の熱級Hに直結)・ミニマムクリアランスの確保(≒小型高出力設計)を実現し、最先端EVロータの設計自由度・コンパクト化に実際の現場レベルで革命をもたらしています。
アナログ現場での導入障壁
「見たことも聞いたこともない…」という現場経験者も多く、初期導入段階では実験評価や取り回しに苦労します。
一方で、現場スタッフの感覚頼みや慣習で「昔からある絶縁紙」のままアップデートできない場合、今後のEV対応力は明確に劣後します。
現代調達・工程管理者には、その目利き・目くらましを見抜き、率先して現場意識改革をリードする役割が求められます。
熱級H(180℃)絶縁の評価指標とは
絶縁熱級とは何かを再確認
工場や調達部門でよく耳にする「F種」「B種」「H種」といった絶縁材料の“熱級”は、長期的に耐えうる最高運転温度の等級(IEC60085またはJIS C4003)を示しています。
特に“熱級H(180℃)”とは、絶縁材料が180℃で2万時間以上の絶縁性能を維持できることを意味します。
EVロータに求められる高規格化
最新のEVモータロータでは、高回転・高出力化により従来よりも倍近い発熱・電圧印加が発生します。
この状況でB種(130℃)やF種(155℃)の絶縁材では数年の寿命で劣化する危険が現実的になっています。
熱級H対応のPIマイクロスリーブは、絶縁材としてだけでなく「モータの信頼性寿命を保証する命綱的存在」となっているのです。
昭和的アプローチと現代的価値観の転換点
かつては「熱が出たら冷ませばよい」「絶縁は厚ければ安心」という感覚に支配されていました。
しかしEV時代のスマート工場では、センサー情報によるリアルタイム制御とマイクロスリーブの組み合わせによる設計最適化が要求されます。
今や単なる部材の選択ではなく、“システムの一部で最適解を作り出す目利き力”が求められるのです。
PIマイクロスリーブの調達・購買現場での課題と最適化手法
コストだけでなく設計価値を評価する新調達
PIフィルムやスリーブ部品は、従来材よりも材料コスト単価が高くなりがちです。
しかし、これが”設計変更によるトータルコスト低減”や”歩留まり・再発防止・信頼性向上=不良コスト低減”につながるケースも多いです。
少数部品・高品質勝負の場合、安易なコストダウン主義からの脱却が調達・購買担当者にも強く求められています。
サプライヤーとバイヤーの情報格差解消
これまで日本の製造現場は「仕様書通りならOK」の文化が根強く、リスク回避型の保守体質が色濃く残っています。
PIマイクロスリーブのような新素材導入時は「テクニカルデータシート」をサプライヤーから取得するだけでなく、現場での実測・モックアップ評価、量産化試作でのロスと対策、歩留まり状況の開示など“生きた情報”の相互開示と議論がカギとなります。
バイヤーが持つべき“価値探索”の発想
バイヤーはなるべく安価に、安定的に調達するのが基本ですが、EVや新規モータ市場では“BOM上の部品価格”よりも“現場目線でのエンドユーザー価値”をどれだけ創造できるかが問われます。
価格交渉だけでなく、設計者・工場現場・検査工程まで巻き込んだ横断的コミュニケーション、積極的な情報収集・社内フィードバックこそが、これからの強いメーカーのバイヤーに求められます。
サプライヤー視点:バイヤーが求める“本音”を知る
「安心」と「継続供給」が最大の武器
バイヤーが最も重視しているのは、信頼性・供給安定性・技術協力体制です。
新材料・高性能な部品であっても、ロットブレ・納期遅延・コミュニケーション不全が発生すれば、それは「コストより高いリスク」として評価されます。
サプライヤーにはリアルタイムなトレーサビリティ確保、成形・納入安定化、積極的な改善提案、早期異常報告が求められます。
バイヤーの“設計手足”になるサプライヤー像
熱級HやPIマイクロスリーブは、ノウハウと実績のある“技術提案型サプライヤー”ほど評価されます。
ただモノを納めるのではなく、「その用途、こうした方が現場では使いやすい」「コスト・歩留まり両面でこう手直しできます」など、バイヤーとも率直に議論できる相棒的サプライヤーが、未来を拓いていくでしょう。
今後の展望と現場のラテラルシンキング
部材の“見える化”から“バリュークリエーション”戦略へ
技術と信頼性が高度化するEV業界では、材料そのものだけではなく、その特性をいかに他工程と組み合わせて新しい価値を生み出すかが重要です。
PIマイクロスリーブによるロータ絶縁の強化は単なる進化ではなく、“小型×高効率×長寿命”というユーザー価値が連鎖的に高まる引き金となります。
現場の工程設計者やバイヤーも、従来の思考軸から一歩踏み出し、設計・流動・経営全体で新たな地平を切り開く視点が求められます。
昭和型管理からデジタル現場革新へ
「図面が見えない」「現場がついてこない」といった声も根強い日本の工場ですが、逆に熟練作業員の暗黙知や現場の気づきも多く埋もれています。
データ蓄積と人の知見をうまく融合させた“デジタル×現場力”のハイブリッド現場が、新素材時代にはさらに求められるでしょう。
まとめ:PIマイクロスリーブとEVロータ絶縁熱級H、その活用戦略
電気自動車の普及は、製造現場に部材調達の目利き力・設計力・現場力をこれまで以上に求めています。
PIマイクロスリーブと熱級H評価というキーワードは「単なる高性能絶縁材」ではなく、現場全体の価値創造・リスク低減・新しい製造文化をもたらしています。
“部品コスト”や“納期”だけでは語れない、設計・現場・調達・経営のすべてに優しい部材選定の眼と、業界の最前線で悩みぬいてこそ見えてくる“新しい地平線”があります。
この新時代の製造業を、ぜひ皆さんと一緒に切り拓いていきたいと思います。
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