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インバータの基本方式主回路駆動モータ制御技術応用事例とノイズ発生原因対策

目次
インバータとは?生産現場における役割
インバータは、交流(AC)電源の周波数や電圧を可変に変換する装置です。
主に産業用モーターの回転数やトルクを制御するために広く使われています。
工場のファン、ポンプ、搬送ライン、クレーン、コンプレッサーなど、多岐にわたる設備の効率的な運転を実現するのに不可欠なデバイスです。
昭和時代までは工場の多くが定速運転のモータを使用し、オーバースペック気味の稼働や無駄なエネルギー消費が多発していました。
しかしインバータの普及は、必要に応じて最適な速度・負荷で機械を制御できるようになり、日本の製造業の効率化に大きな変革をもたらしました。
今やインバータは「省エネ」「コスト削減」「設備寿命延命」を実現する現場の必須技術となっています。
インバータの基本方式 ~主回路の構成~
インバータの主回路は、主に次の三つのブロックで構成されています。
1. 整流部
商用電源(AC100V/200V/400Vなど)を直流へ変換する部分です。
ダイオード整流回路やサイリスタ整流回路がよく利用されます。
この過程でノイズや波形歪みが発生しやすいため、電源高調波対策も重要です。
2. 平滑部
整流された直流はリップル成分(波打つ電圧)を含んでいます。
このリップルをなだらかにして安定した直流を得るため、コンデンサによる平滑回路が組み込まれます。
大容量の電解コンデンサが多数使われることが特徴であり、寿命・劣化管理が重要なメンテナンスポイントとなります。
3. インバータ部(スイッチング部)
ここがインバータの核となる部分です。
パワートランジスタ(IGBTやMOSFETなど)を用い、高速スイッチングで直流を疑似交流(パルス幅変調PWM波)に変換します。
この部分で発生するスイッチングノイズや高周波成分が、制御精度や装置トラブルに大きな影響を及ぼすため、ノイズ対策などが重要です。
駆動モータ制御技術の進化と現場応用事例
1. V/f制御(電圧周波数比例制御)
インバータ黎明期から広く普及した制御方式です。
モータの周波数(回転数)に対応して電圧も比例的に変化させることで、負荷に応じた速度制御を実現します。
ポンプ、ファン、搬送システムなど、比較的低コストで省エネ効果を発揮させたい場合に今でも有効です。
2. ベクトル制御(フィールドオリエンテッド制御)
V/f制御よりさらに精密で高性能な速度・トルク制御を実現する制御方式です。
誘導モータの磁界(ベクトル)分解制御によって、サーボモータに近い高応答性、滑らかな低速運転を可能にします。
クレーン・昇降機、自動搬送装置、ロボット、巻き取り機など、現場の「止めずに、滑らかに動かす」命題に応える技術の進化版です。
3. ダイレクトトルク制御(DTC)
最新型インバータの主力技術で、モータ電流および電圧を瞬時に計測しダイレクトにトルク制御します。
負荷変動の激しい成形機、圧延ラインなど、応答性重視のケースで威力を発揮します。
現場では「設備の停止減」「生産安定化」「省人化」など、複雑な自動化ラインを支える重要なソリューションです。
実践的な応用事例:現場の声
ラインの柔軟化と省エネ(自動車部品工場)
旧型の定速モータを使っていた時代は、各ラインの立ち上がり・停止時に大きな突入電流が発生し、ブレーカーのトリップや機械損傷が頻発していました。
インバータ導入後は、ラインのスタートアップ/スローダウンがソフトに行えるようになり、故障率が50%以上低減。
また、歩留まり向上と消費電力の大幅カットが実現できました。
多品種少量生産への対応(精密加工工場)
製品ごとに加工条件(回転数・搬送速度)が細かく異なる現場では、インバータの多段階速度設定やレシピ制御が重宝されています。
タッチパネル経由で任意の速度・トルクにワンタッチ切替が可能となり、現場オペレーターの労力削減や人材教育の効率化につながっています。
工場ヒューマンエラー削減(飲料工場)
ラインの切り替え時にうっかり速度設定をミスして容器やパッケージ不良が発生することがよくありました。
インバータ連動のシーケンサ(PLC)による自動最適化コントロールにより、「人手ミス」「ヒューマンエラー」が激減し、品質不良対策として大きな成果が出ています。
インバータにおけるノイズ発生のメカニズム
古い設備やアナログ制御機器では「インバータを使うとノイズがひどくなった」という現場の声も多いです。
ノイズの発生源と原因を知ることが、トラブルを未然に防ぐ第一歩です。
主なノイズの種類
– 伝導ノイズ:電源ラインや接地線を伝わって他の機器へ影響するノイズです。主に高調波電流やスイッチングノイズが発生源。
– 放射ノイズ:配線や筐体をアンテナとして空間に放出される電磁ノイズです。制御ケーブル、電源線、モータ直近での発生が多い。
発生原因の具体例
– 高速スイッチングで発生する立ち上がり急峻な電圧波形(dV/dtの高いパルス)
– スイッチングデバイス(IGBT等)の寄生容量の影響やグラウンドループ
– 電源ラインの高調波・リップル分布
インバータノイズの対策方法と現場知恵袋
ハード的対策
– 電源入力部にラインフィルタや絶縁トランスを設置し、伝導ノイズ低減
– モータとインバータ間は遮蔽付きケーブルを使用し、接地を厳守
– 制御信号ケーブルと動力ケーブル(特にインバータ配線)は物理的に分離して配線する(30cm以上離すのが目安)
– インバータの筐体・制御盤へのアース強化
ソフト的対策
– PWM搬送周波数を現場合わせで最適化(多くは10kHz→20kHzでノイズ低減)
– スロースタート、スローストップ機能の活用による急峻な立ち上げ回避
– スイッチングタイムやデッドタイム調整
現場で多いノイズトラブル事例と処方箋
– PLC・センサー誤作動:制御配線のルーティング見直し、シールドケーブル導入
– インバータ過電流や誤動作:主回路コンデンサ劣化、フィルタ追加で対応
– 他の設備への影響:分電盤でのグランド分離、インバータ用独立配線に切り替え
アナログ現場とデジタル現場の混在課題
未だ昭和期の設備やアナログ回路が混在する現場では、細やかなカスタマイズ対応が求められます。
一律の規格対応だけでなく、現場環境や人の動線に合わせて「現場目線」で対策を練るのがプロの技です。
バイヤー・サプライヤーは“見積り”と“現場フィット”を両輪に
インバータの導入やリプレース案件は「価格」と「現場フィット」が大きな判断基準です。
バイヤー側は、消費電力低減、保守円滑化、故障ダウンタイム削減など数値で示せる“本質的なコスト”を可視化することが求められます。
サプライヤー側も、ノイズ対策など現場固有の“泥臭い知見”や、実際の運用現場での仕上がりイメージ、教育面のサポートを中心にアピールすることが、トラブル・誤解予防にはベストです。
まとめ:アナログ現場の新時代へ~インバータで開く製造業の未来
インバータ技術の進化は止まることなく、さらに“AI連携・IoT化・遠隔監視”など、製造現場の課題解決を強力に後押ししています。
一方で、現場にはアナログ的な工夫や職人の知恵もまだまだ必要です。
バイヤーやサプライヤーは、最新技術の知識と同時に「現場目線」でのノウハウや改善提案を持つこと、そして現場スタッフと膝を突き合わせて一緒に課題解決できる“パートナーシップ”が今後ますます重要になります。
製造業の現場は今後も大きく変化していきます。
インバータの活用とノイズ対策を通じ、新しい時代のものづくりを、現場力で共につくっていきましょう。
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