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小ロット・多品種対応可能な装置用電気ハーネスメーカーの選定方法

目次
はじめに:製造現場における電気ハーネスの重要性
製造業の現場において、装置用電気ハーネスは、文字通り“産業の神経”と呼ばれるほど重要な役割を担っています。
多品種・少量生産の時代を迎えた現代、ハーネスの仕様や設計要求も年々複雑化し、小ロットかつ多品種に対応可能な電気ハーネスメーカーの選定は、企業競争力確保のキーポイントとなっています。
長年、現場とともに歩んできた私自身の視点から、この課題の”本質”と、メーカー選定で失敗しないポイントを詳しく解説します。
昭和的な大量生産型サプライヤー選定からの脱却
なぜ「小ロット・多品種対応」が今求められているのか?
かつて日本のものづくりをけん引した「大量生産・大量消費モデル」では、同一仕様・同一数量の製品をいかに早く、安く仕入れるかが購買の大きなミッションでした。
しかし現代の市場構造は一変しています。
消費者ニーズの多様化や製品ライフサイクルの短縮、IoT・自動化への急激なシフトにより、工場現場では日々「バリエーション違い」や「スポット案件」への緊急対応が求められることが増えています。
また、サプライチェーンのリスク分散や地政学リスクへの備えとしても、一社依存を避け、フレキシブルに対応可能なハーネスサプライヤーを確保しておく重要性が高まっています。
“アナログ業界”ならではの選定課題
電気ハーネス業界は、未だに「職人の手作業・個人技」に依存する側面が根強く残っています。
昭和時代からの“顔が利く”サプライヤーとの付き合いや、長年の価値観が現場に色濃く残っています。
しかし「属人的なノウハウ」や「暗黙知」だけに頼ると、技術伝承やコストダウン・品質改善のブレーキになりやすいのも事実です。
アナログ業界の良き伝統を継承しつつ、時代に合った選定・発注プロセスへのマインドセット転換が急務となっています。
小ロット・多品種に強い装置用電気ハーネスメーカー選定の3つのポイント
1. 柔軟な設計・試作対応力
多品種対応のためには、図面レスでの現物ハーネス“現調”や、現場出図~試作までのリードタイム短縮が欠かせません。
サプライヤーの設計対応力や、現物合わせ・仕様提案のスピード感を実見し、実際に「試作から量産までの柔軟なフローがあるか」チェックしましょう。
また、自社品・他社品問わず多様な端子やコネクタ、ケーブル種類のストックが豊富なメーカーは、リードタイム短縮の面でも大きな強みとなります。
2. 多品種少量生産の生産体制・DX化レベル
小ロット案件は、頻繁な仕様変更や追加・抜けハーネスへの臨機応変な対応が必須です。
そのため「生産計画自動化」や「IoT活用によるトレーサビリティ管理」「現場作業のペーパーレス化」など、多品種・小ロット対応を後押しするDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み有無を必ず確認しましょう。
工場現場でExcelや紙台帳しか使わず、進捗が見えにくいサプライヤーは、手戻りや納期遅延リスクも高くなります。
3. 安定品質・品質管理能力
小ロット・都度注文でも、品質確保は決して妥協できません。
検査工程(導通・外観・引張試験など)の標準化や、作業員毎のばらつきを抑えるための教育・仕組みが整備されているかを重視しましょう。
また、リードタイム短縮の裏で、人的ミス(配線違い、圧着ミス)が発生しやすくなります。
トレーサビリティ管理、ISOやUL認証の取得実績なども品質確保の観点からヒアリングポイントです。
実際にあった「小ロット・多品種」発注現場の変革事例
著者が現場管理職として経験した事例をもとに、小ロット・多品種案件の成功要因・失敗要因をご紹介します。
成功事例:プレス機用制御ハーネスの短納期調達プロジェクト
大手プレス装置メーカーで特急スポット生産案件が発生。
従来取引先では「新規部材の入手に2週間」「量産ライン段取りに更に1週間」という状況でした。
そこで、現場に常駐してくれる地場のハーネスメーカー数社をピックアップし、下記の条件で選定を行いました。
– 設計担当者と仕様調整が図面なしで可能
– 小ロット・スポット受注体制がある
– コネクタストックが豊富で、即納対応ができる
結果、現場仕様合わせ~現物試作までを3日間で完了。
品質も安定しておりトラブルゼロで納品に成功しました。
選定プロセスで「現場目線」「即応性」「在庫力」を重視したことが奏功しました。
失敗事例:大手系サプライヤー依存による納期遅延
昭和から長年付き合いのあった大手系サプライヤーに、「小ロット都度発注」を依頼した際の事例も紹介します。
発注プロセスが完全に大ロット仕様、社内稟議や入荷物流体制も“重厚長大”型。
設計変更が発生すると、社内承認に数日以上かかり、納期見通しも常に不安定でした。
しかも現場の細かな図面修正依頼に柔軟に応じてもらえず、「できません」が連発。
結局、別の地元専門メーカーに急遽切り替えることとなりました。
バイヤーとしては、「一社専任・長年の習慣」に固執しがちですが、多品種・小ロット時代に最適な体制を持つメーカーの積極的な探索が必要です。
バイヤー・サプライヤーそれぞれの視点から使える「交渉・選定のコツ」
バイヤー側:現場状況・案件頻度を正確に伝える
小ロット・多品種案件では、ともすればサプライヤー側に「無理難題」だけが伝わりやすいものです。
実際の案件頻度や予定PL・機械台数、標準化可能な部分と設計個別案件を明確に分けて依頼しましょう。
「焦りの込めメール」よりも、「現場で成果を一緒に作りたい」スタンスが信頼・協力体制を築きやすくなります。
サプライヤー側:バイヤーの“痛み”や“現場の困りごと”に共感する
「また納期短縮か」と感じる前に、なぜその案件が急に発生したのか、顧客の現場・市場環境を理解する姿勢が重要です。
“困りごと解決型”の技術提案や納期通知を徹底し、バイヤーと密に連携していきましょう。
また、自社工程のDX化・見える化への投資も競争力強化につながります。
「できません」だけでなく「こうすれば対応できます」という代案提案力が他社との差異化ポイントになります。
時代に合わせたメーカー選定は経営戦略の一環
製造業の現場は、この数年でIoTやAI、自動化、そして多品種・小ロット生産へと急速に進化しつつあります。
しかし、その根っこを支えるのは、現場の“職人技”と“調達・購買の目利き力”、そしてサプライヤーとの良好なパートナーシップです。
自社にとって最適なパートナーとなる装置用電気ハーネスメーカーを選定することは、単なる購買活動にとどまらず、事業競争力・工場の成長力を左右する経営戦略の一つです。
昭和時代から続く価値観や人間関係を活かしつつ、新たな時代に適応できるサプライヤーとの“習慣化した共創力”こそが、多品種・小ロット時代のサバイバル術といえるでしょう。
まとめ:小ロット・多品種対応メーカー選定が企業の未来を変える
本記事では、製造業現場の変化を背景に、小ロット・多品種対応可能な装置用電気ハーネスメーカー選定の具体的なポイントや現場事例、バイヤー・サプライヤー双方の視点を紹介しました。
今こそ、現場起点で「柔軟な対応力」「生産体制の見える化」「本質的な品質力」を兼ね備えたパートナー選定に投資しましょう。
一歩先の目利き力が、企業の将来を切り拓きます。
あらゆる現場で活躍する読者の皆様のご参考となれば幸いです。
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