投稿日:2025年8月4日

空調ベストOEMが炎天下35℃作業に耐えるBLDCハイパワーファン+PCM蓄冷パック設計

はじめに:働き方改革時代の「現場熱中症対策」は待ったなし

日本全国の製造業現場では、夏になると「作業現場の暑さ」と毎年のように闘っています。
とりわけここ10年は夏の最高気温が35℃を越える酷暑日が頻発し、現場作業者の熱中症リスクが飛躍的に高まっています。
温暖化の影響から、空調設備だけでの解決がほぼ困難な職場も少なくありません。
このような環境下で「現場で実際に使える携帯型冷却ウェア」への関心が急速に高まっています。

空調ベストは、ファンで衣服内に風を通しながら熱気を外へ逃して身体を冷やす製品として、2010年代中盤から製造業の現場に急速に浸透しました。
そして、さらなる熱対策製品として「PCM蓄冷パック」と組み合わせるハイブリッド型空調ベストが注目を集めています。

本記事では、需要が急拡大する空調ベストOEM開発の現在地と、次世代製品の鍵となる「BLDC(ブラシレス・DC)ハイパワーファン」+「PCM蓄冷パック設計」の最新潮流について、現場経験者・工場管理者の実態目線で考察していきます。

空調ベスト市場の実態:現場ニーズとトレンド

圧倒的に「現場作業者ファースト」が進行中

空調ベストは、当初は作業服メーカーによる限定的なアイテムからスタートしました。
しかし、2020年以降の猛暑と合わせて「作業者の命を守る着衣型保冷装置」として認知が一気に高まりました。

現場ユーザーの要求は非常にシビアです。
・数百人単位の導入で「現場全体で使い倒せる頑丈さ」
・簡単操作・現場服との干渉が少ないデザイン
・1日通して保冷効果が続くこと
・コストパフォーマンスの高さ(数年スパンでの買い替え=イニシャルコストの回収可能性)

加えて、最近では女性作業者や技能実習生など多様化したユーザーが使う前提の「サイズ展開」「安全基準」への要求も顕著です。

「ガジェット化」ではなく「インフラ」に進化

大きなパラダイムシフトは、「空調ベストが工場作業インフラ」として位置づけられたことです。
今や一部大手では「空調ベスト貸与はヘルメット・安全靴と同じレベルの必須装備」となっています。

この動きは、自社だけでなくサプライチェーン全体(協力会社・外注先)でも同じ水準を求める動きにつながっており、「OEM製品の見直し」や「自社オリジナル空調ベスト開発」を急ぐ企業も増加しました。

昭和的「根性論」からスマート現場へ

ひと昔前、工場の夏は「根性」「我慢」やおしぼり首巻きなどアナログな対策が主流でした。
しかし「熱中症リスク=安全衛生・生産性」観点から、昭和的な考え方では現代の企業競争を勝ち抜けない現実があります。
健康経営・サステナビリティ・多様性配慮も含め、「作業現場のウェアラブル空調」は今後の必然的な進化です。

OEM開発で差がつくポイント:「ファン+蓄冷」組み合わせの先進設計

旧来型:DCモーター・単純送風では限界

これまでの空調ベストは、単純なDCモーター+ファンだけで衣服内の送風を担っていました。
しかしDCモーターは回転効率に限界があり、「風量不足」「バッテリー駆動時間が短い」「作業セクションで爆音」など、現場目線で満足できない課題が浮き彫りになっていました。

夏の工場内は気温以上に「湿度」「輻射熱」「粉塵」も複雑に影響しあうため、汎用品で万能対応を狙うと使い物にならない、という声も多く聞こえてきました。

BLDC(ブラシレスDC)ファンの優位性

BLDCモーター(ブラシレス・ダイレクトカレントモーター)は、従来のDCよりも
・熱に強い(モーター焼け&パワーダウンが遅い)
・消耗部品が少なく耐久性大幅UP
・小型ながら高出力トルク、風量が段違い
・バッテリー消費効率に優れる
という明確な技術的アドバンテージがあります。

BLDCファンと最新バッテリー制御回路を組み合わせれば、「8時間連続・大風量」も実現可能です。
これは「午前午後で使い物にならなくなる…」と悩んできた現場の長年の不満に応える設計です。

また、ファン回転数をフィードバックで変速制御できるため、作業工程ごとの細かな風量調整や、粉塵拡散を抑える機能などハイブリッド化が容易なのもOEM開発上の大きな魅力になります。

PCM蓄冷パック:空調ベストのボトルネックを突破

送風だけでは衣服内の空気自体が熱くなる&「外気が猛暑」で冷やせない場面を補うのが、PCM(相変化材料)蓄冷パックです。
PCM素材は、特定温度で固体⇔液体に変化する際に「大量の熱エネルギーを吸収・放出」する特性があり、理想的な保冷サポート材料として注目されています。

衣服内にPCMパックを配置し、作業者の体表近くでゆるやかに冷却エネルギーを放出させれば、気化熱+蓄冷のダブル冷却が実現します。
これにより「ファン送風だけだと体温上昇する」「極端な高温現場で熱ダレする」といった課題も大幅に緩和されます。

両者の相乗設計:国内OEMメーカー最新事例

国内OEMメーカーでは、以下のような組み合わせ最適化が進んでいます。
・最適配置:ファンの送風方向とPCMパックの装着部位(背中、脇下、首元など)を連動させ、全身の冷却バランスを設計
・蓄冷パック交換式設計:現場で数分でパック交換、または予備パックの常温持ち運び
・静音ファン化+防塵カバリング:工場騒音規制・粉塵への対応
・洗濯耐久設計:実用洗濯×数十回に耐える縫製/防水構造
・多サイズ展開、社名・ロゴ刺繍カスタム

このような設計思想は、「安全・安心・現場ファースト」を実現するOEM製品開発のカギとなります。

工場導入の現実:バイヤー・サプライヤー現場目線で考える

要件設定は「熱中症ゼロ」+「生産ロスゼロ」を目指す視点で

企業バイヤー(調達担当)がOEM空調ベストを選択・開発する場合、「何をもって成功か」を明確に定義する必要があります。
表面的な「動作する」「安い」だけでなく、以下のような達成基準を現場と連携して設定しましょう。

・導入工場/工程で「熱中症・体調不良災害ゼロ」
・作業効率・品質低下の低減効果(導入前後でのモノづくりKPI変化)
・洗濯/メンテ含めて「1シーズン無停止」運用
・追加バッテリーや蓄冷パックコストまで含むトータルコストパフォーマンス

サプライヤー側も「求められる要件=派手な機能ではなく、現場の当たり前を安定してサポートする地味な工夫」と捉え、技術提案力を鍛えることが重要です。
たとえば「女性用Sサイズも同納期で量産できる柔軟な生産ライン」「現場での感覚温度のテスト評価」などは大手メーカーのOEM案件ではきわめて喜ばれるポイントです。

バイヤーとサプライヤーの「すれ違い」を埋めるには

昭和的発注(とにかく安く、大量・早期)では現代の熱対策製品は供給できません。
実用的な空調ベストOEM開発を成功させるには、「サプライヤーの技術背景×バイヤーの現場要件」を実際に相互確認しながら、ラテラルに組み合わせる場を必ず設けるべきです。

現場体験会や共同検証(コアタイムでの現場動作テストなど)は、単なるサンプル納品以上に「真の問題解決型」OEM開発の土台となります。

まとめ:空調ベストは「未来の現場インフラ」へ進化する

空調ベストOEMの進化は、「昭和→令和、工場現場の在り方」そのものを変える契機となっています。
BLDC高効率ファン+PCM蓄冷パックというハイブリッド設計により、これまで「仕方がない」と見なされてきた酷暑下作業の本質的改善が今まさに進行中です。

技術開発、バイヤー・サプライヤー双方による現場焦点型の課題解決、サステナビリティの視点を持ち続ければ、日本のモノづくり現場から新たな世界標準が生まれる未来は決して夢ではありません。

現場で戦う皆さまこそが、この進化を実現する主役です。
是非、自社OEM空調ベストの最適解を模索する際、本記事の視点をヒントにして現場イノベーションに挑戦してください。

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