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サプライヤ評価スコアに応じた発注自動振分けで調達リスクを分散

目次
はじめに:調達リスク分散の重要性とは
「サプライヤ評価スコアに応じた発注自動振分け」というテーマは、一見すると先進的なデジタル施策と映りますが、実は製造業の現場に深く根ざした課題への実践的なアプローチです。
現在、製造業各社が直面しているリスクは多岐に渡ります。
原材料の高騰、サプライチェーンの混乱、自然災害や地政学リスク、サプライヤーの倒産、と枚挙にいとまがありません。
一方で多くの現場では、昭和の時代から続く「なじみの取引先への偏重発注」「過去成功体験の踏襲」「発注担当の属人的な判断」など、アナログで非構造的な運用が根強く残っています。
この記事では、サプライヤ評価スコアを活用し、発注先の自動振分けによって調達リスクを分散する実践ノウハウを現場目線で深掘りします。
従来のやり方との違いや、現場で生じる疑問・反発、そして最終的な調達購買体制の強化までを具体的に解説します。
なぜ評価スコアが必要なのか?現場での課題を整理
1. 依存リスクの現実
昭和の時代から培われた「顔が見える取引先」との信頼関係は、勿論重要な資産です。
しかし、特定サプライヤへの過度な依存は、サプライヤ側のアクシデントや経営悪化の影響をもろに受ける危険な橋渡しであることを意味します。
例えば震災やパンデミックの際、サプライヤ1社から全仕入れの40%以上を集中的に行っていたがために、工場がストップしてしまった…そんな経験を持つ現場担当者は少なくありません。
2. 感覚的な判断の危うさ
「この会社はよくやってくれている」という属人的・感覚的な発注が続けば、優れているのに発注が増えないサプライヤや、新規開拓の余力がなくなり、結果的に会社全体の競争力が落ちていきます。
3. 品質、納期対応、価格交渉力の見える化
仕入先を選ぶ際、「品質」「納期」「コスト」の3大要素が重要であることは周知の事実です。
しかし、現場で実際に記録・数値化されているケースは少数派です。
見える化されていなければ、根本的な改善や発注比率の適正化は進みません。
サプライヤ評価スコアの本質:何を評価し、どうスコア化するのか
評価軸は一朝一夕には決めきれません。
ここでは、多くの現場で活用されている基本指標を紹介します。
1. 品質スコア
・納入品の不良率、品質クレーム件数
・品質トレーサビリティや改善力
・認証取得状況(ISO9001など)
2. 納期遵守スコア
・納期遅延発生頻度、遅延の対応力
・急な生産変動への柔軟性
3. コストスコア
・単価、値上げ交渉の頻度
・コストダウン提案など積極性
4. コミュニケーション・対応力
・見積依頼や設計変更へのスピード
・緊急時の対応実績
5. サステナビリティ・ガバナンス面
・環境法令遵守、サステナビリティ方針
・BCP(事業継続計画)の有無
これらを、各部門(品質管理、生産管理、調達購買)と連携し評価指標を定め、スコアリングする方式が効果的です。
現場運用では5段階評価や100点満点など、数値化→相対比較→横断的評価というプロセスが実践的です。
発注自動振分け:どのように現場へ落とし込むか
1. スコア=発注比率の連動
評価スコアの高いサプライヤには発注明細のウエイトを厚く、逆に不良や延納、コスト増が顕著になるサプライヤは徐々にウエイトを下げていきます。
ここで重要なのは「急激なゼロ発注」ではなく、徐々にウエイト配分を変えていく点です。
2. ITとアナログの融合を意識する
完全自動化システムも良いですが、現場の慣習やサプライヤ関係に考慮した「半自動化」運用から入ることが望ましいです。
例えば基幹システムやExcelマクロでの自動計算し、最終的な発注を現場担当が確認する方式など、現場負荷を適切に下げつつ馴染ませていくアプローチが鉄則です。
当たり前ですが、IT化に弱い現場や取引先の環境も加味する必要があります。
現場の反発と説得術:アナログ文化との共存
「長年の信頼関係で成り立ってきたのに、今さらスコアか」「人間味がなくなる」といった声は必ず現場から上がります。
現場出身者として最も大切なのは、“データはあくまで事実を見える化する道具である”と伝え、「取引先との信頼」「現場担当者の目利き」も重視する多面的な評価を組み込むことです。
また、サプライヤの不満や反発も想定されます。
従来の発注量が急に落ちた、なぜ点数が低いのか分からない、という事態を避けるには、評価基準を事前にしっかり説明し、改善の打ち手をサポートする双方向のコミュニケーションが必須です。
現場の“心の壁”を超える補助策
– 定期的なサプライヤ懇親会、勉強会でスコアの趣旨や現状を説明
– 評価項目の一部に現場担当者の“現場所感コメント”を加える
– 一度評価点で下がった場合も、改善後は発注比率を戻す柔軟運用
これらによって、アナログな現場文化とデータドリブンな評価の“ハイブリッド”体制を実現できます。
調達リスク分散としての具体的効果
1. リスク発生時の供給安定化
主要品目ごとに複数サプライヤへ分散発注し、究極的には「どこか1社止まっても、すぐに他で補える」体制を築けます。
BCP(事業継続計画)の一環としても抜群の効果を発揮します。
2. サプライヤ同士の健全な競争
スコアと発注量が直接連動することで、各サプライヤが品質向上、納期短縮、コストダウンなどの企業努力を“継続的に”行うインセンティブが生まれます。
3. 属人的体制からの脱却
担当者ごとの思い込みや経験則に依存せず、組織全体の知見を活かしたフェアな発注が可能となります。
これは、管理職引き継ぎや、海外拠点への展開時にも大きな力を発揮します。
サプライヤ選定・評価の今後展望:AI活用と共創の時代へ
近年はAIによる“異常値検知”や“自動スコアリング”、さらに外部情報(ニュースや取引先決算情報)のリアルタイム収集など、テクノロジーの進化が著しいです。
また“脱価格競争”への潮流も強まり、QCD(品質・コスト・納期)以外のESG(環境・社会・ガバナンス)視点の組み込みもスタンダード化しています。
これらAIやDX施策はまだ一部大手企業での運用に留まっていますが、中小企業でも段階的な導入が十分に可能です。
現場の知恵や長年の付き合いも生かしつつ、「フェアでリスク分散された新たな調達購買体制」を構築することが、今後の業界標準となるでしょう。
まとめ:地に足のついたイノベーションを現場から
サプライヤ評価スコアに応じた発注自動振分けは、単なるIT化・仕組み化ではありません。
製造現場のノウハウと人間味を大切にしつつ、新たなリスクとチャンスを見据えた「地に足のついたイノベーション」です。
現場の“肌感覚”とデータをフラットに見つめ直し、「昭和の良さを活かしつつ、令和の最強調達体制」を築いていきましょう。
皆様の現場改革のヒントとして一助となれば幸いです。
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