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肉盗みとリブ配置で軽量化し材料費と加工費を同時に下げる設計術

目次
はじめに:時代が求める“設計の力”とは何か?
製造業において“軽量化”というキーワードほど強い魅力を持つ言葉はないと言えるでしょう。
軽量化はただ単に材料を減らすということを意味するのではありません。
材料を減らすことで部品そのもののコストを下げるだけでなく、組み立てや輸送の負担を低減し、さらには省エネや環境負荷低減にもつながる重要な設計指針です。
しかし日本のものづくり現場では、未だに“昭和的な精神論”や“慣習的な重厚長大思想”が根強く残っています。
「材料を減らせば強度が不安だ」
「新しいデザインは生産現場が嫌がる」
「過去の図面を流用した方が楽だ」
そうした保守的な空気感を打破し、時代に求められる高効率で合理的なものづくりを実現するためには、設計者・バイヤー・サプライヤーが共通の知識を持ち、実践的な設計術を身に付ける必要があります。
この記事では、軽量化とコスト削減を同時に実現するための“肉盗み”と“リブ配置”という設計テクニックに焦点を当て、現場目線で分かりやすく解説します。
肉盗みとは何か?:ゼロカーボン時代の設計者必携手法
肉盗みの概要と導入効果
肉盗みとは、材料厚みのうち必要な部分以外を削ぎ落とし、“過剰な肉(材)”を徹底的に除去する設計テクニックです。
多くの工場や設計部門では、設計時に過剰な安全率を取って部品設計を行うことが少なくありません。
時には「毎回壊れなければ安全」レベルまで分厚く、重く設計されている場合もあります。
しかし、最新の材料工学やCAE解析などのツールを活用すれば、「どの部分にどれだけの強度・剛性が必要か」を的確に割り出すことが可能です。
部品全体に満遍なく過剰な厚みを持たせるのではなく、力のかからない部分だけを的確に“肉盗み”することで、材料費を大きく削減し、かつ加工費も低減させることができます。
具体的な肉盗みの設計例
例えば自動車部品、産業機械の架台プレート、大型カバー、ブラケットなどでは、応力の集中しない中央部分や、周囲に囲いがある箱状部品の底面部に穴を設ける、リブ間の薄肉化を狙うといった“肉ぬき”設計が広く行われています。
・箱体部品の底面に“蜂の巣状”の肉盗み穴
・ブラケットの立ち上がり部の肉厚縮小
・大型機械カバーのフラット部を肉厚2㎜→1.2㎜へ削減
こうした加工は、加工工数を増やさずとも材料使用量全体を大幅に下げる効果があり、即座に材料費削減—と、それに伴う軽量化によるコストダウンに直結します。
また部品重量を減らすことで、組み立て工数や現場内での搬送効率も向上し、製造現場全体に好循環をもたらす設計となります。
リブ配置の巧妙さ:設計合理化の肝を握る
なぜリブが必要なのか?
ただ単に肉盗みをすれば部品全体の強度が低下するのでは、と不安に思う方も多いでしょう。
ここで“リブ(補強筋)”の存在が設計の肝となります。
部品の外形や肉厚を削減する代わりに、必要な部分へ的確にリブを配置することで、最小の材料で最大の剛性・強度を実現することができます。
リブは、曲げ・ねじり・引張りなど部品にかかる各種力の“流れ”に沿って配置することが重要です。
力のかかるポイントに対して“柱”や“梁”のようなイメージでリブを加えると、薄肉でも十分な強度が担保できます。
リブ配置設計の現場テクニック
・四隅または応力集中点には縦・横方向のリブを設ける
・大面積のフラット部分には格子状のリブ補強
・リブとリブが交差する部分にはコーナーRや肉厚増で補強
・薄肉化する部分は、二重リブや三角リブの活用も検討
・リブ高(リブの高さ)は肉厚の2~3倍程度を標準とし、最適値を追求
設計初期段階で荷重及び応力伝達の“経路”を予測したうえで、リブ配置を設計することが軽量化&高剛性設計の王道です。
また、最近では3D-CADやCAE解析を駆使して、部品各部位の応力分布や変位をシミュレーションしながらリブ配置を最適化する設計手法が増えています。
加工工場の本音とコスト構造を理解せよ
肉盗みやリブ配置による軽量化設計は、設計者やバイヤーの“理想論”で終わりがちですが、実現のためには“実際に加工を担うサプライヤー工場”の事情を知ることが不可欠です。
切削加工・プレス加工・成型加工で異なるコスト意識
・切削加工:肉盗みは加工時間が増加する場合も。工具負担や段取り変化も要考慮。
・プレス加工:薄板化は型強度、しわの発生、成形条件の難度上昇に注意。
・樹脂成形:リブ配置によって湯流れや“ヒケ”・変形リスクが増すことあり。
現場の加工機械、金型構造、段取り工数、材料歩留まりなど生産現場での実態を理解しつつ、設計の最適解を柔軟に探る姿勢がバイヤーや設計者には求められます。
工場との共創がコストダウンのポイント
「このリブを2本増やせば…」「この部分だけ肉盗みしてほしい…」
このような要望を一方的に突きつけるのではなく、工場現場とコミュニケーションを取りながら「どこまでなら量産で工夫可能か」「工場の段取替えへの影響はどの程度か」を具体的にヒアリングしましょう。
また工程FMEAやVA/VE提案の場で“加工現場も巻き込んだアイデア出し”を行い、Win-Winの関係で材料費・加工費ダウンを実現できれば、バイヤーとしても設計者としても大きな信頼を勝ち得ます。
業界動向から見る軽量化設計のトレンド
カーボンニュートラル推進の波
世界中でカーボンニュートラル、SDGs、グリーンサプライチェーンの動きが加速しています。
エネルギー消費と輸送コスト低減の文脈でも「部品重量を減らす=企業の環境貢献」と認知されています。
かつては「大げさ」と思われていた肉盗み設計・リブ配置強化も、
いまやグローバルサプライヤーの認定条件や量産受注の大きな決め手となるケースが増えています。
デジタル技術と設計イノベーション
3Dプリンターや高度なシミュレーション解析(トポロジー最適化など)が登場し
「機能に必要な最小限の肉厚と、構造的に最適なリブ配置」を自動提案する時代に入りました。
とりわけ複雑な部品形状や、ヒトの勘や経験だけでは設計しきれなかった分野での革新が著しく、
「設計者の主観」→「定量的エビデンスによる設計」へとパラダイムシフトが起きています。
実践のためのポイント&まとめ
最後に、現場で“肉盗み”+“リブ配置”を使いこなし、材料費・加工費を同時に下げるための実践アドバイスをまとめます。
- 設計初期段階から「軽量化=利益」と意識し、既存図面を安易に流用しない
- CAE解析や現場観察を駆使し、“力の流れ”に沿った肉盗み・リブ配置を検討
- 加工現場の設備・スキル・コスト構造を深く理解し、最適化設計を心掛ける
- 部品単体の品質・強度と、トータルコスト(材料+加工+輸送)で最適点を探る
- サプライヤー・現場作業員とのオープンな対話でリアルな“できる・できない”を把握する
- カーボンニュートラル対策やデジタル導入など最新の業界動向も設計現場に反映する
製造業は“現場がすべて”という側面もありますが、新たな設計発想が現場を動かし、製品の価値と利益を次のレベルへ導きます。
肉盗みとリブ配置を磨き上げ、一歩先をゆく設計で製造業の発展に貢献しましょう。
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