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最小発注量の数式を見直し端数ロスと小口割増を同時に削る発注設計

目次
はじめに:最小発注量の見直しがもたらすべき本当の価値
製造業の現場では、「最小発注量」(MOQ: Minimum Order Quantity)の設定が、サプライチェーン全体の効率とコスト構造に大きく影響します。
かつては、シートや鋼材の定尺単位、部品や原料の箱ごとロットなどが“当たり前”のようにMOQに反映されてきましたが、これは昭和時代から連綿と受け継がれるアナログ的思考の残滓でもあります。
「端数ロス」とはMOQに見合わない発注によって生じる余剰や廃棄品のことです。
また、「小口割増」とは小ロットで発注したことによる単価増や手数料の上乗せを意味します。
この二つは表裏一体で、多くの現場で“しょうがないコスト”とみなされてきました。
しかしDX(デジタルトランスフォーメーション)やIndustry4.0が叫ばれる今、最小発注量の数式を現場目線で根本から見直し、端数ロスと小口割増を同時に削減する発注設計に挑戦する必要があります。
本記事では、従来型の考え方の課題と最新トレンド、そして現場で実践可能な具体策を詳しく解説します。
最小発注量の数式と従来の落とし穴
最小発注量の教科書的な決まり方
最小発注量は多くの場合、“経済発注量(EOQ: Economic Order Quantity)”と呼ばれる理論式で決定されます。
EOQの数式は次の通りです。
EOQ = √ (2DS / H)
– D:年間需要量
– S:発注1回あたりのコスト
– H:単位保管コスト
このモデルは理論的には合理的ですが、“需要は常に一定” “リードタイムはブレない” “端数や発注ロットは自由に設定できる”という前提が現実離れしています。
多くの現場で現実的に採用される「MOQ」は、
– 原材料や部品サプライヤーが要求する最小数量
– 工程上の制約(マシン稼働ロットなど)
– 梱包仕様、輸送事情や保管スペース
などにより、機械的に決められていることがほとんどです。
従来式の効率化の限界
現場でよくある発注パターンは、最小発注量を下回る場合、端数ロス(余り)を許容して余分に買うか、逆に小口割増(単価や手数料増)をあきらめて必要最低限のみ発注するかの二択です。
– 端数ロス:使わない材料が残り、廃棄や過剰在庫となりコスト増
– 小口割増:必要量だけ注文できるが、単価・手数料が高騰しコスト増
この「どちらを取っても損をする」構造から抜け出せていない現場が多いのが実情です。
業界動向:昭和アナログからの脱却とサプライヤー構造の変化
デジタル化とサプライヤーの多様化がMOQの意味を変える
ここ数年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が製造業にも浸透し、部品供給のデジタル見積もりサービスやフレキシブルな生産対応など、新興サプライヤーの参入が進んでいます。
かつては「仕様変更も最小発注量も柔軟化できない」という硬直した商習慣が主流でしたが、クラウド・受発注プラットフォームの登場で、
– 必要量に応じた即時見積り
– 小ロット生産の標準化
– 端数部品は他社とマッチングで消化
といった新しい調達モデルも成立しつつあります。
とはいえ昭和的現実はまだ色濃く残る
一方で、安定操業や過去の設計資産を重視する大手メーカーや地場サプライヤーでは、「一箱からじゃないと対応できない」「MOQ未満は受け付けません」など旧態依然のやり方も根強いのが現実です。
ここに“サプライヤーの選定眼”と“現場起点の変革”が必要になっています。
端数ロスも小口割増も削る!発注設計の現場実践ポイント
1. 端数発生の真因を具体的に見抜く
端数ロスが発生する理由は、“社内プロセス”か“サプライヤーの論理”か、それとも“設計上の融通が効かない”のかをまず棚卸しましょう。
例:
– 部品表(BOM)が1セット単位、実消費とズレていないか?
– 材料発注時、各部署で微妙に数値が丸められていないか?
– サプライヤーが便宜的にMOQを繰り上げ設定していないか?
現場で“なぜこの数値なのか”をヒアリングし、複数部署合同で見直すことで、本来必要な発注単位が明確になります。
2. 梱包単位の“クセ”を主導権で見直す
梱包単位は物流・工程が理由と思われがちですが、実は“管理しやすい” “梱包コストを一定以下にしたい”というサプライヤー側の論理が多く含まれます。
– 例えば10個入箱なら、15個や7個―実際の消費単位―でも対応できないか交渉
– 梱包資材の持ち込みでコスト・工数を補填できないか模索
サプライヤーと共にデータを比較し、双方にロスのない単位でWin-winを実現することが現代のバイヤー/工場長の役割です。
3. 需要予測の精度向上とバックオーダー分散
「欲しい時に必要数だけ発注」が理想ですが、ばらつく需要や工程のズレが発注ロットを肥大させます。
生産管理システムの見直し、売上・出荷データのAI活用による“本当に使う分”の予測精度UPが近年のテーマです。
さらに、A社とB社で同じ材料や部品を使う場合、両者でタイミング調整しバックオーダーを束ねてMOQ達成、小分けして納品コスト最適化といった応用策も効果大です。
4. 小口割増回避へ「サプライヤーと交渉する理由」をデータで持つ
小口割増はサプライヤー側の手間増・管理増という理由で設定されるケースが多いですが、「注文ごとに異なる」でなく「定期ミックス便」や「コア顧客として優先レーン」などのデータで柔軟性が出てきます。
– 過去1年分の発注・納入データを時系列で提示
– どの製品・時期にまとめてくれれば効率化可能か?を提案
– 単なる値引き交渉でなく、双方のコストダウンに直結する“根拠”を出す
これができれば小口割増を合理的に抑える道筋が現実的となります。
サプライヤーもバイヤーも共存する新たな発注単位の考え方
バイヤー視点:コスト・リスク・手間の最適化
調達担当者はつい「とにかく単価を下げる」「端数を出すな」と現場に指示しがちですが、“コスト”以外の要素――工数・在庫リスク・手間工数・サプライヤーとの信頼関係――も発注設計の大切なファクターです。
意思決定直前に「このMOQが現場とサプライヤーに与えるインパクトは?」と一呼吸入れることで、現実的で納得感の高いバランスが見えてきます。
サプライヤー視点:顧客単位を越えたロット最適化
サプライヤー側も、「単発で小口ばかり=負担増」という思い込みを捨て、「複数顧客分まとめてロット最適化」「定期納入で編成効率UP」など、新しいコスト設計で提案する企業が増えています。
バイヤーとサプライヤーがデータを共有し、互いにメリットを出し合う“共創型の発注提案”が今後の主流となるでしょう。
今すぐできる端数ロス削減・小口割増圧縮アクションリスト
– 成立根拠の曖昧なMOQや小口割増は根拠を明確に洗い出す
– サプライヤーの梱包単位や仕様を交渉し、工程・在庫負担を「見える化」
– 自社内の複数部署・複数現場でバックオーダーを束ね調整
– デジタルツールや需給予測AIを活用し、必要数に最適化
– サプライヤーと「発注内容の見直しワーキンググループ」を設置する
– 両社のコスト・手間・生産性をトータルで比べ、Win-win策を探索
– 少しずつでも柔軟なMOQや梱包単位に実験的にトライし「現場データ」を蓄積
まとめ:発注設計は両輪の最適化が鍵
最小発注量の見直しは、単なるコストダウン以上に“現場、生産管理、バイヤー、サプライヤー”全体のロスを減らし、競争力を強化するチャンスです。
昭和的な「この数式だから仕方ない」や「サプライヤーがこう決めているから変えられない」といった固定観念から脱却し、現代にマッチした柔軟な発注設計へとシフトしていくことが求められます。
現場こそが経営の最前線であり、端数ロスや小口割増といった“見えないコスト”を顕在化させ、新しい発注ロジック、調達交渉力、デジタル活用で製造業全体の生産性を底上げしていきましょう。
この実践こそが、アナログ業界を未来へ導く“新たな地平線”といえるのです。
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