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衛生検疫SPSと適合評価TBTの要件整理で該当品の輸入ストップを回避

目次
はじめに:製造業の現場から見た衛生検疫SPSと適合評価TBT
製造業に関わる皆様、特に調達・購買、生産管理、品質保証に携わる方にとって、グローバル調達や生産拠点の海外展開は日常茶飯事となっています。
しかし、近年は世界各国の輸入規制が厳格化し、特に衛生検疫(SPS:Sanitary and Phytosanitary measures)と適合評価(TBT:Technical Barriers to Trade)の要件を満たしていない製品は、いとも簡単に輸入がストップされ、サプライチェーン全体に重大な影響が及んでいます。
本記事では、現場目線でSPS・TBT規制の本質を解説し、アナログ業界と言われる製造業だからこその実践的な対応策、そして最新の業界動向も交え、該当品の輸入ストップを回避するためのノウハウを共有します。
衛生検疫SPSと適合評価TBTとは何か?
SPS(衛生検疫):人・動物・植物の安全の壁
SPS(Sanitary and Phytosanitary measures)は、主に食品、農産物、畜産物や一部の工業品に対して、それが人間または動植物の健康を守るかどうかを評価する措置です。
SPSの典型的な例としては農薬基準や動物検疫、微生物検査基準などが挙げられます。
この規制は各輸入国が独自に設定することができ、自国の安全基準と合致しない製品は、たとえ国際基準を満たしていても輸入がストップするケースが発生します。
TBT(適合評価):技術要件という見えない障壁
TBT(Technical Barriers to Trade)は、製品の仕様・表示・性能・安全性といった技術的な基準、およびそれに対する適合評価手続きを規定しています。
具体的には電気製品のPSEマーク、化学物質の成分表示、RoHSやREACHの規制対応などが該当します。
TBTは”非関税障壁”とも呼ばれ、形式的には自由貿易を妨げないものの、現実にはその国独自の技術規格や手続きが輸入品に対して大きな壁となるのです。
なぜいまSPS・TBTが問題になるのか?
グローバル化の進展と“昭和”の調達プロセス
現場では依然としてFAXや電話、紙の帳票管理など、アナログな体制が根強く残っています。
このため、最新の法規制や国際基準の変更が現場に十分に伝わらない、対応工数の制約から対応が後手に回る、という事態が頻繁に発生しています。
*h3>各国の保護主義傾向と個別最適化の罠
中国やEU、アメリカなど主要各国は自国産業の保護のため、年々複雑かつ厳格なSPS・TBTの導入を進めています。
特にサプライヤーの立場では、現地調達品をグローバル展開する際「母国では問題なかったが、他国では却下された」「現地のバイヤー基準が直前で変わり、納入ストップ」というトラブル事例が急増しています。
該当品の輸入ストップを回避する現場目線のチェックポイント
1. 仕入稟議・仕様書レベルでのリスク洗い出し
まず最初に、仕入原材料もしくは完成品について「SPSまたはTBTで規制される品目か?」を仕様書レベルでチェックすることが重要です。
これを怠ると、購買実務担当者が手配を進めてからNG判定が下り、納期遅延や製造中止リスクに直結します。
原材料情報・HSコード(輸出入統計品目番号)・想定輸出国の規制リストの突合せを、社内購買フローの初期段階から必須タスクとして組み込むのが現場最強の対策です。
2. 信頼できる現地検査機関・指定ラボとのパートナーシップ
SPS・TBT規制は書類上だけでなく、”現地での証明力”が鍵を握ります。
現地指定ラボ(試験機関)が発行するレポート、第三者機関による監査証明、現地認証済工場からの調達…こういった根拠資料を、バイヤー・サプライヤーが早い段階で共同取得できているかどうかが、通関ストップ・輸入禁止の分岐点になります。
3. 規制情報のキャッチアップ体制と多部署連携
製造現場は目の前の生産性向上や納期対応に追われがちですが、SPS・TBT規制の情報更新は突発的・予告なく起こります。
法務・品質保証・現地調達部などの複数部門を横串でつなぎ、情報共有会や瞬時に内容確認できる社内チャット、基本設計変更フローへの法規制インプット欄新設など、”全社横断”での早期情報共有システムの導入が極めて重要です。
4. リスク分散型サプライヤー戦略の推進
ひとつの国・サプライヤー依存は、SPS・TBT要件強化によるリスクを助長します。
例えば特定国の農薬規制強化・動物疾病の発生で仕入れが不能になった場合、代替国や複数サプライヤーの確保こそ現場を救うカードです。
バイヤーは、「第二・第三ソースまで必ず評価し、中長期でSPS・TBT対応の脆弱性を最小化する」ことを標準化する必要があります。
代表的なトラブル事例と現場での教訓
Case1:中国食品添加物規制で突然の輸入ストップ
中国向けに調味料原料を輸出していたが、現地の添加物規制が突如強化。
輸入許可申請手続きの煩雑化もあいまって、1か月以上製造ラインがストップした、というケースです。
この現場では、事前に指定検査機関との連携および複数の仕入れ元の候補リスト化を徹底していたため、何とか早期復旧につなげることができました。
Case2:EU向け電子部品RoHS要件でバイヤーチェンジ
RoHS(有害物質規制)は広く知られていますが、実際にはその適用範囲・禁止物質リストは頻繁に更新されます。
長年取引していたサプライヤーが直前の規制改訂に気づけず、量産出荷分で輸入差し止め。
急遽、予備調査していた別サプライヤーにバイヤーチェンジし、調達継続を実現しました。
Case3:ASEAN現地政府対応の”担当者まかせ”落とし穴
工場新設時、現地バイヤーにSPS・TBT基準の適合確認を完全委任。
結果、担当者が「慣例」で進めてしまい、現場では新しい適合評価書類が未取得。稼働直前で大きなストップがかかりました。
この例では、メーカー本体側にも定期的な現地規制モニタリング体制を入れることで、再発防止が図られました。
求められるプロフェッショナル:昭和型購買からのアップグレード
アナログ現場でも通用する“攻めのバイヤー”とは
バイヤーは「値下げ交渉屋」の時代から、「全体最適のサプライチェーンリスクマネージャー」への脱皮が求められています。
昭和型の属人的かつ手作業依存の購買から、データベース・検査証明・サプライヤー分散戦略、そして現場との密なコミュニケーションを柱にするスタイルへ進化する必要があります。
サプライヤーに求められる提案力とは
従来は「バイヤーからの要求事項を満たせばいい」という姿勢がまかり通ってきましたが、今後は「いま●●国で新しい規制が出ています」「国際認証取得済です」といった【能動的・情報発信型サプライヤー】でなければ指名されません。
規制動向を先読みし、リスク回避提案ができるサプライヤーこそ、次世代グローバルマーケットの生き残りにつながります。
まとめ:SPS・TBT要件整理が製造業の競争力を守る
製造業を取り巻くSPS・TBT要件は日々厳しさを増しています。
しかし、この要件整理やリスク管理を自社の強みに変えられれば、サプライチェーン全体の競争力は数段レベルアップします。
現場主義とデータ・規制情報の融合、そして協働型の体制こそが、激動の世界市場での輸入ストップ回避、さらには攻めの事業拡大の鍵を握っています。
今なおアナログな体質が根強い製造業現場ですが、SPS・TBT対応を「面倒な規制対応」から「サプライチェーン勝者への戦略」として昇華させる。
その第一歩を、今日からぜひ実践してください。
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