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ミルクランと共同配送の併用で地方仕入の内陸費を安定的に圧縮

目次
はじめに:内陸費圧縮が製造業のカギを握る時代背景
多くの製造業メーカーが抱える共通課題、それは「コスト削減」と「安定調達」です。
なかでも、調達購買や生産管理の部門が特に頭を悩ませるのが、地方サプライヤーから原材料や部品を仕入れる際に発生する“内陸費”の高止まり問題です。
都市部から距離のある工場やサプライヤーを活用しようとすると、どうしても輸送に関わるコストが重くのしかかります。
この内陸費をいかにして安定的に圧縮するかは、サプライチェーン全体の最適化ひいては企業競争力強化に直結します。
従来より「ミルクラン」や「共同配送」といった手法が存在していますが、これらを“併用”することで、意外と気付きにくいメリットが生まれるのです。
今回は、筆者が実際の工場現場や複数のサプライヤーとの調整業務で培った経験をもとに、ミルクランと共同配送の併用による内陸費安定圧縮のポイントや、昭和から続くアナログな商習慣と先端デジタルの間で起こっている現象も交え、具体的な実践策について詳しく解説します。
なぜ内陸費は地方で重くなるのか:現場視点で深掘り
地方サプライヤーの活用は、部品調達の多様化やBCP(事業継続計画)対策の観点からもとても重要です。
しかし、都市部から離れた工場やサプライヤーと取引を行う場合、下記のような課題が現実問題として立ちはだかります。
- 積載効率の悪いスポット便利用 → ロットあたり運賃が高い
- 帰り便の空車率が高い → トラックの片道利用で費用増大
- 貨物量変動のブレに対応しきれない
- 納入リードタイムのばらつき → 生産計画の不安定化
特に日本の製造業においては、長年続く“系列”や“昔ながらの商習慣”から脱却しきれず、効率的な物流ネットワークを構築する障壁になっていることも少なくありません。
サプライヤー側とバイヤー側の情報共有が遅かったり、突発的な発注変更に柔軟に対応できる体制が整っていない、といった現象も業界現場ではよく見かけます。
この構造的課題こそ、ミルクランと共同配送を“うまく併用”することで大きく改善できる余地があるのです。
基本をおさらい:ミルクラン・共同配送とは
ミルクラン配送の特徴とメリット
ミルクランとは、牛乳集荷のルート配送(Milk Run)が名前の由来です。
複数のサプライヤーや拠点を一台のトラックが順番に巡回し、製品を集めて自社工場へまとめて納入する方式です。
以下が主なメリットです。
- 積載効率UPで1回あたりの運賃がダウン
- 小口・頻度発注でも柔軟に対応しやすい
- 自社主導で納入日・ルート設計ができる
- 現場工程の見える化・標準化がしやすい
しかし、物流量が少ない場合や、遠方の一社のみが対象だとコスト効果が頭打ちになったり、ルート構築の手間が膨大になる、というデメリットもあります。
共同配送の特徴とメリット
一方で共同配送とは、複数のメーカーや荷主が同じ地域・エリアで納入先やルートを共有し、合同で配送を行う手法です。
主なメリットは以下の通りです。
- 近隣サプライヤー・荷主間で配送コストをシェアできる
- 運送会社のネットワーク活用で安定した配送リソースを確保
- CO2削減・環境規制にも対応可能
- 中堅・中小サプライヤー単独では難しい内陸配送も実現可能
こちらも「サプライヤー間の調整負担が大きい」「配送リードタイムが固定され柔軟性を欠く場合がある」などの注意点があります。
ミルクラン×共同配送の“併用”で開ける新たな地平
ミルクランと共同配送は従来個別に語られることが多いですが、両者を“組み合わせて使う”ことで、意外なほど柔軟かつ安定的なコスト圧縮が可能となります。
具体的な併用モデルのケーススタディ
例えば、自工場がA県にあり、地方サプライヤーがB県・C県・D県に点在しているとします。
この場合、
1. 最も取引量の多いB県・C県は自社主導でミルクランを設計し、ルート集荷を行う
2. 一方D県は取引量が少ないため、同地域の複数メーカーや近隣バイヤーと“共同配送”を活用する
3. さらに、B県・C県のミルクランルートの“すそもの”として、スポット的に共同配送枠に組み込む
など、各エリアの“貨物ボリューム”や“サプライヤーの物流能力”、さらに工場の生産計画上の“荷動きピーク”を精査し、ミルクランと共同配送の“いいとこどり”をしていくのが実践上のコツです。
実際、筆者が担当していた電子部品メーカーでは、月間の出荷量や天候・季節波動に合わせてミルクランと共同配送の配分率・回数を調整。
結果として年間約12%の内陸費圧縮&納入遅延リスク低減を実現しました。
古い慣習が残るサプライヤー現場との“向き合い方”
併用を進める上で「昭和的な商習慣」が顕在化しやすいのも事実です。
例えば、
- “毎日納入が当たり前”という習慣に固執したサプライヤー
- “指定業者への配送依頼しか許可しない”独自ルール
- 貨物積み合わせに難色を示す社内・工場現場の反発
こういった場合は、現場に実際に足を運び、サプライヤー責任者やドライバーとの意見交換を重ねることが現実的な一歩です。
また、物流コストの実態(金額の推移)を“見える化”し、“物流DX”や補助金活用の情報も伝えて“経営層”の理解を得つつ、“現業現場の作業負担”が増えないよう小さな成功事例から着手します。
この「現場感」と「経営目線」の両方を持つことが、安定的な併用モデルの定着には不可欠です。
進化する物流:デジタルの力とアナログ現場の融合
最新の物流管理システムやIoTを導入すれば、ミルクランと共同配送の“最適化条件”を更に高度に設定できます。
具体的には、
- 各サプライヤー拠点の出荷情報をリアルタイムで可視化
- AI・アルゴリズムで積載率やピックアップ順を自動最適化
- 路線便との組み合わせやスポット配送の自動提案
- 異常気象や道路状況をシステムが自動通知・経路変更
このように内陸物流の“見える化”と“効率化”を徹底することが重要ですが、日本の多くの工場現場では「紙の伝票」「担当者の経験値頼り」のアナログ運用がいまだ根強く残っています。
したがって、いきなりすべてをデジタルに切り替えるのではなく、現場で納得・体感してもらえる“小さなデジタル”から始めること――たとえば、伝票のPDF電子化や簡単なスケジュール共有アプリの導入――など、ラテラル思考で“現場に合わせた段階的な進化”が何より肝心です。
バイヤーが押さえるべき 指標とサプライヤー視点での注意点
仕入コストの真の可視化
単純な配送単価だけでなく、「納入頻度×リードタイムブレ×発注ロット×歩留まり率」など多面的な指標で物流コストを再計算することで、“内陸費の圧縮余地”がより明確となります。
サプライヤーとの関係構築が鍵
サプライヤー側から見れば「自社の物流負担が増しすぎないか」「品質や納入タイミングが守れるか」といった不安も当然あります。
バイヤーとしては“自社のコストダウン”だけを強調せず、双方の“WIN-WIN”を目指して、時にコストダウン分の一部をサプライヤーに還元するなど、持続的な関係作りを心がけるべきです。
まとめ:現場・経営・業界全体から見たミルクランと共同配送の併用価値
ミルクランと共同配送の併用は、「単なる物流費削減テクニック」の枠で語るべきものではありません。
サプライチェーン最適化、BCP策定、現場負荷軽減、サプライヤー共創など、“2020年代の製造業”が直面する多層的な課題を横断的に解決しうる現実的なアプローチです。
そして、まだまだアナログが根強い製造業界こそ、「現場に寄り添った小さな変化」からスタートし、デジタル技術の進化と融合させていく余地が大きいのです。
これからバイヤーを目指す方、サプライヤーの立場でバイヤーの論理を理解したい方、そして日々現場改善に取り組む全ての製造業関係者の参考になれば幸いです。
地方仕入の内陸費圧縮は、決して夢物語ではありません。小さな一歩を、ぜひ今日から始めてみましょう。
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