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OEEの損失三分類を価格に紐づけ改善効果を単価低減へ直結

目次
はじめに:OEEの本質を価格で語る
製造業において「OEE(総合設備効率)」は、多くの現場で用いられる現場KPIです。
しかし、現場改善の取組みは盛んでも、それが直接「価格」や「単価低減」と結び付いたストーリーで語られる機会は、多くないのが実情です。
本記事では、OEEの損失三分類(停止ロス・速度ロス・不良ロス)を、バイヤー目線や工場長としての価格感覚に直結させて考察します。
アナログ体質が根強い製造業の現場で、現状をいかに打破し、単なる数値改善から「価格優位性」と「差別化」に昇華させるか?
そのヒントを、私の実務経験から具体的かつ実践的に解説します。
OEEの損失三分類を振り返る
OEEとは何か
OEEとは、Overall Equipment Effectivenessの略で、日本語では「総合設備効率」と呼ばれます。
OEEは、「稼働率(可動率)」「性能(速度)」「品質(良品率)」の3要素を掛け合わせて算出します。
それぞれの要素は、以下のようなロスに対応しています。
- 可動率:稼働停止ロス(段取り、調整、故障など)
- 性能:速度低下ロス(機械の本来スピード未達など)
- 良品率:不良ロス(不良・手直しなど)
現場ではこの三つに分け、様々な改善活動が行われています。
「なぜOEEを上げるのか?」現場とバイヤーの視点
OEEを上げることは、本音では「生産性向上」や「コスト低減」につなげることが目的です。
バイヤーは「QCD(品質・価格・納期)」のバランスを見て、サプライヤーを選定します。
工場の現場としても、真の目的はQ(品質)C(コスト)D(納期)を、OEEの観点からどう好転させるか、に尽きます。
OEEの損失を「価格」に落とし込むアプローチ
停止ロスの価格貢献:隠れた固定費低減
稼働停止の発生は、直接的な生産量の減少を招きます。
そのため、同じ数量の製品を作るのに、より多くの人件費、保全費や電力消費などの固定費がかかります。
これらは製造原価の「間接経費」「工場コスト」に直結し、一品あたりの単価にジワジワと効いてきます。
この固定費構造は、製造業界が昭和時代の「総原価主義」から抜け出せない一因でもあります。
停止ロスを徹底的に減らすことで、同じリソースでより多くの製品が作れます。
この生産数量の「分母拡大」は、直接的な単価〈減〉に結び付きやすいのです。
速度ロスの価格影響:設備能力=売場の棚面積
速度ロスとは、「機械は動いているが、本来のMAXスピードより遅い」状態です。
スピード改善は、設備当たりの時間当たり生産量を上げ、短納期にも対応できるようになります。
これは大量生産が求められる自動車や電子部品などの業界だけでなく、「段取り替えが多い」「多品種少量」の現場にも通用します。
売場の言葉で言えば「同じ棚面積(=設備・人員)で、より多くの商品を陳列できる」ことに他なりません。
また、「省人化」や「残業削減」「休日出勤削減」などの効果面でも、速度ロス低減は現場の負担とコストダウンの両面から価格競争力に直結するのです。
不良ロスの価格直結効果:見える損失、見えない損失
不良ロスが価格に与えるインパクトは非常に分かりやすいです。
良品率が98%から99.8%になったとき、得られる「歩留まり改善」によって原材料・労務費・エネルギーなどすべてのコストが下がります。
さらに、不良品の再加工や廃棄、クレーム対応などは表面に出にくい「拡大損失」を生み出します。
これらは仕損費や保証費というコスト科目で把握できますが、バイヤーからは評価されづらいものです。
本質的には「サプライヤーの事故リスク=信頼コスト」として、取引価格に隠れたマージンを乗せざるを得なくなります。
不良ロス低減は、「見える単価低減」と「見えないリスクプレミアム低減」の両面で効いてくるのです。
OEE改善活動を価格提案に活かす方法論
OEE数値⇔原価モデル:定量インパクトの可視化
OEE損失三分類を原価モデルに落とし込む際、最も有効なのは「損益分岐点分析」による価格シミュレーションです。
– 停止ロス改善→生産数量(分母)増→固定費配賦分の単価低減
– 速度ロス改善→生産期間短縮・外注/残業費低減
– 不良ロス改善→有償原材料/人手の最適化、クレームコスト抑制
現場の改善活動を「価格インパクト」に翻訳するカギは、「OEE1%アップで原価がいくら下がるか」を可視化し、それをバイヤーにストーリー立てて説明することです。
バイヤーとの折衝現場で効く「価格根拠」としてのOEE
バイヤーはサプライヤー選定の際、単なる「安い」だけでなく、「なぜ安く提供できるのか?」を重視します。
OEE由来の改善(IoT活用・人材教育・自働化・段取り短縮など)は、核心的な競争優位性の根拠となります。
営業部門がOEE改善活動をしっかりと「提案力」に落とし込み、「これだけ損失を減らし、だから御社には市場価格よりも有利なオファーができます」と論拠立てることが、価格交渉の強力な武器となるのです。
競争力向上の”本質体質”としてのOEE
単なるOEE数値の向上だけでなく、その活動を通じて現場の改善力や問題解決力が鍛えられ、会社全体の体質強化につながります。
「良い現場が良い製品・納期・価格を生む」ことを実証するための客観的KPIとしてOEEを位置づけ、経営の意思決定やバイヤーとの信頼構築の材料として活用しましょう。
現場で根強く残る「アナログな壁」に風穴を開けるには?
なぜアナログ体質が残るのか?昭和と令和の現場ギャップ
実際の製造現場では、古い設備や紙の帳票、職人技への依存、不透明な原価管理などが根強く残っています。
これらの課題を解決するためには、「見える化」と「定量評価」が必須です。
OEEは数値で公平に現場を評価できるため、アナログ体質の現場にもじわじわと浸透しています。
これまで「経験と勘」だった損失改善も、OEEで定量的に「価格」に直結すると打ち出せば、現場が動きやすくなります。
DX(デジタル化)とOEE:中小企業でも活かせる仕組みづくり
大手だけでなく、中小や下請企業も、OEEの考え方は十分に使えます。
市販のIoTセンサーやレコーダで設備稼働データを簡単に取り、エクセルや安価なBIツールで損失三分類や改善インパクトを可視化できます。
「高額なIT投資」以前に、現場に根付く「改善力」と「OEE的な数字思考」をいかに醸成するかが重要です。
バイヤー・現場の双方で「価格優位性」を実現するために
OEE三分類から見た改善活動を、現場のみならず経営・営業・調達・バイヤーの各部門が「価格づくり」の柱として認識することが重要です。
サプライヤーの現場は、OEEの見える化→損失撲滅→「価格」への落とし込みまで一貫したストーリーを描きましょう。
バイヤー側も、「OEEの改善提案がしっかりできているか」を新規取引基準や既存サプライヤーの評価軸の一つに据えるべきです。
これが「共創型ものづくり」「競争から協調へ」と進化するための本質的な第一歩となります。
まとめ:OEEを使いこなし「価格競争力」で業界の壁を超えよう
現場改善のツールとしてだけでなく、「価格につながる改善」や「バイヤーへの説得力のある根拠」としてOEEを活用しましょう。
OEEの損失三分類を原価・単価にひも付けて語れる現場こそが、これからの製造業のダイナミズムを牽引する存在となります。
ぜひ、皆さん自身の職場や調達現場でOEE改善を単なる数字遊びに終わらせず、「価格」という現実の勝負所に結びつけてください。
それこそが昭和から続くアナログ的なしがらみの壁を貫く、本当の攻めの現場力だと、私は信じています。
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