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保証費用負担を一方的に押し付けられるサプライヤー課題

目次
はじめに:サプライヤーにおける保証費用問題の現状
日本の製造業は、戦後から令和の現代まで長い年月を経て発展し続けています。
しかし、昭和時代から引き継がれている古い商習慣や構造的な問題も未だ色濃く業界に残っています。
特に、調達・購買の現場では「保証費用負担」の問題がサプライヤーの大きな課題として挙げられます。
保証費用とは、不具合品やクレーム発生時に発生する交換費用や修理費用、物流費用、場合によっては顧客やメーカーへの損害賠償金までを含めます。
本来ならば、責任区分や発生原因をフェアに調査し適正に按分されるべきですが、実際にはバイヤー側(調達部門やOEMメーカー)からサプライヤー側へ一方的に費用負担が押し付けられるケースが後を絶たないのが実態です。
このような状況は、日本の製造業界が持つ構造的な力関係や、長年の慣習、またデジタル化・グローバル化の遅れとも深く関わっています。
本記事では、現場目線を持ったプロとして、サプライヤーが直面する保証費用負担の実態、背景、その抜本的な課題を深掘りしつつ、新時代における課題解決の方向性についても考えていきたいと思います。
保証費用問題が生まれる背景
業界構造としてのバイヤー・サプライヤー力関係
日本の製造業では、元請側(バイヤー)と下請側(サプライヤー)の力関係が非常に強固です。
サプライヤーは、価格決定権・納期調整権・品質基準設定など多くの事項をバイヤー主導で進められるため、「取引先のいうことは絶対」「言われたことはまず受け入れる」という空気が今も根強く残っています。
昭和から連綿と続いた、多重下請け構造によって、サプライヤー側が意見や異論を唱えることを“御法度”とする文化が土壌として形成されてしまいました。
品質責任の曖昧さと保証範囲の拡大
バイヤー側の設計・評価・品質基準に基づいて生産しているにも関わらず、現場での不具合やエンドユーザーからのクレームが発生した場合、その原因解析や責任分担が曖昧なままサプライヤーに費用負担が強いられるケースが非常に多いです。
例えば「要因不明・グレーゾーンだが、とりあえず立て替えてほしい」「使用環境や組み立て側要因かもしれないが、ひとまずサプライヤーが持ってくれ」という、やや理不尽とも思える負担要請が横行しています。
また、OEMメーカーも製品保証期間が年々長期化(3年、5年保証など)し、それに伴いリンクしてサプライヤーに対する保証期間も長くなっています。
ところが、増大するリスクと責任に対して契約・契約外問わず、一方的な「泣き寝入り」状況が続いているのが現状です。
アナログ商習慣と契約内容の曖昧さ
未だにFAXや対面でのやり取り、口頭での決定事項など、文書化・契約明文化が徹底できていない業界特有の慣習も問題を難しくしています。
実際、「こんな大きな金額まで保証するなんて聞いていなかった」という行き違いも少なくありません。
欧米では細かく契約書に記載される保証事項が、日本の現場では「信頼関係」や「あうんの呼吸」で済まされ、後々になってから法的な盾も得られず不利な立場に陥りがちです。
保証費用負担の実態とサプライヤーへの影響
過重な経済的プレッシャー
保証費用の負担は、サプライヤーの経営に深刻なダメージを与えます。
小さな部品や材料であっても、リコールや顧客クレームが広範囲に及ぶと何百万・何千万、時には億単位の負担になるケースもあります。
部品単価が非常に安価な場合、サプライヤーの利益は紙一重で積み上げるようなものです。
そこに突如として発生する大きな保証費用は、一気に数年分の利益を食い潰し、場合によっては事業の継続自体が困難になります。
人的リソースの浪費・モチベーション低下
クレーム発生時は、生産現場、生産管理、技術部門、品質管理部門がその対応に忙殺されます。
本来であれば新しい取り組みや現場改善に注力できるはずの人的リソースが、原因調査・現場立ち合い・再発防止のための資料作成などに膨大な時間を費やされるのです。
しかも、その多くが原因特定されず曖昧なまま「とにかく負担すれば丸く収まる」となりがちなので、現場の士気・やる気低下にも直結します。
ビジネスリレーションシップへの影響
表面的には「信頼関係」と言いつつも、保証費用負担問題をきっかけに長年の取引関係がぎくしゃくするケースも少なくありません。
サプライヤーが常に我慢し、泣き寝入りする状況が続けば、やがて品質や納品安定性にも悪影響を及ぼす、というまさに悪循環が生まれます。
なぜ変われないのか?昭和的アナログ体質の深層
現場の慣習と“空気”による支配
「うちの業界はこういうもの」「今までもこうやってきたから」といった現場の空気感に押し流され、個人や企業単位で声をあげにくい風土が依然として根強く残っています。
それはバイヤー側も同様で、「他社もみんなサプライヤーに負担させているし」「自分だけが抜け駆けできない」といった同調圧力が働いています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ
保証費用発生時の責任区分を明確にするためには、製品のトレーサビリティや製造データのデジタル管理、設計段階からの品質リスク共有などが不可欠です。
しかし、紙伝票やアナログな製造指示、口頭中心のオペレーション体制のままでは、「本当はどこに問題があったのか」がブラックボックス化しがちです。
その結果、誰も反論できず、「一番声の小さいサプライヤーが泣かされる」構造が温存されてしまいます。
課題解決への新しいアプローチ
契約の明確化と交渉力強化
どこまで保証するか、また責任分担や調査手順を契約書や基本取引条件書に明記し、合意形成を徹底することが何よりも重要です。
欧米では当たり前の“契約力”を、日本の製造現場も持つ必要があります。
サプライヤー側も、品質保証や現場監査、設計レビュー時に「この場合は保証範囲外ですよね」と積極的な意思表示・交渉を重ねることが求められます。
これによって「泣き寝入り」や「押し付け合い」を防げる第一歩となります。
リアルタイムな品質情報共有とトレーサビリティ強化
DX推進によって、製品ライフサイクル全体での品質データ・トレーサビリティ(製品履歴管理)を強化することで、「事実」に基づいた責任区分ができるようになります。
たとえば、素材メーカー、部品メーカー、組立メーカー、最終製品メーカーが共通で閲覧できるクラウドデータベースを整備し、不具合発生箇所・工程・時期を特定できる仕組みを整えれば、曖昧な「責任のなすりつけ」から脱却できます。
サプライチェーン全体の協調による“共存共栄”モデルへの転換
サプライヤーが健全な経営を続けられなければ、最終的にはバイヤー側も安定調達が難しくなります。
「コストダウン」や「保証費用の押し付け」ではなく、サプライチェーン全体での負担分担(例:一部費用をバイヤーも負担、保険商品を活用する等)や、不具合の再発防止のための共同改善活動を推進するモデルへの転換が重要です。
今こそ、バイヤー・サプライヤーが“同じ地平線”で課題に向き合い、「問題が発生してしまった後」の負担だけでなく、「未然防止」に向けた投資・協調こそが競争力の源泉であるという意識改革が求められています。
まとめ:新時代のサプライヤー像とは
保証費用問題は、サプライヤーの収益と存続だけでなく、日本の製造業全体の持続可能性にも直結します。
従来の「力関係」や「空気」に支配されたアナログ業界から脱却し、DXの活用や契約文化の醸成、サプライチェーン全体での協調によって、より健全なビジネス環境が形成されるべきタイミングに来ています。
サプライヤーは単なる“従属的存在”ではなく、高い技術力や現場の知恵、現状の課題感を武器にバイヤーにも提案ができる、“ビジネスパートナー”としての立場を確立しましょう。
また、バイヤー側もコスト優先主義や責任転嫁による短期的なメリットよりも、長期的なサプライチェーン安定と持続的発展を優先した新しい価値観へ転じることが不可欠です。
保証費用負担の課題は深刻ではありますが、現場の知見を活かし、新しい発想・協調の精神で、製造業発展のためより良い未来を一緒に切り拓いていきましょう。
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