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航空セキュリティ(Known Shipper/RA)の未整備での遅延を回避

目次
はじめに:航空セキュリティ対策の必要性と「未整備リスク」
航空貨物を扱う製造業にとって、物流の遅延は致命傷につながります。
特に、国際輸送では航空セキュリティ体制がとても重要です。
なぜなら、「Known Shipper(既知荷主)」や「Regulated Agent(RA:規制代理人)」といった制度の未整備が、深刻な配送遅延やコスト増につながるからです。
この問題は、製造現場で製品を出荷する立場の私たちだけでなく、仕入れを担うバイヤーやサプライヤーの双方にとって、避けては通れない課題となっています。
この記事では、航空セキュリティ対策の仕組み、未整備の場合に起こる具体的なリスク、そして現場目線でできる未然防止・対策について詳しく解説します。
航空セキュリティ(Known Shipper/RA)とは?現場目線で解説
1. Known Shipper、RAの基礎知識
航空セキュリティとは、テロや違法物資持ち込みを防ぐ目的で、安全な貨物配送のために設けられた規制の総称です。
世界の主要な空港では、貨物を航空機に積載する過程で、荷主(Shipper)や運送業者(Agent)に一定以上の信頼性が求められます。
・Known Shipper(既知荷主):厳格な審査・認定を受けた荷主で、航空会社や代理店に「安全で信頼できる荷主」として事前登録される
・RA(Regulated Agent:規制代理人):Cargoを取り扱うエージェントの中でも、国の認定を受けており、安全チェックやトレーサビリティ管理ができる
この2つのどちらにも該当しない場合、貨物は「Unknown Cargo」として扱われ、より厳密で時間のかかる追加検査やX線、開梱検査が必須となります。
2. なぜ、未整備だと致命的な遅延が発生するのか
現場で起こる「未整備リスク」の多くは、「Known ShipperやRA認定を取っていない」「書類や登録手続きが間に合っていない」といった、認証プロセスが未完了のまま出荷してしまう点にあります。
未整備で出荷した貨物は、空港で「不審物」とみなされ、ランダム検査だけでなく、全量開梱検査やX線・爆薬検査などが発生。
その分、時間も手間もかかり、出荷日どころか搭載日まで大幅遅延につながる恐れが高まります。
さらに、この追加検査により
・検査待ちで1日、2日とストップ
・作業費や倉庫代、検査料などのイレギュラーコスト発生
・最悪の場合、「航空搭載不可」で引き返しまたは海上貨物へ回される
といった“連鎖遅延”リスクも付き纏います。
昭和的アナログ慣習の落とし穴:なぜ未整備が起きるのか?
昭和から脈々と続く日本の製造業は、実は「航空セキュリティの仕組み」の普及が欧米や中国と比べてもやや遅れています。
「ずっと使っているフォワーダーがやってくれるだろう」
「現場に任せていれば何とかなる」
と、現場担当の経験則や人脈任せにするアナログ文化が根強いのです。
また、社内や取引先間でも「Known Shipperって何?」「別に登録しなくてもアウトソーシング業者が何とかしてくれるのでは」という認識不足や、書類・データ管理の煩雑さも要因です。
さらに、サプライチェーン内でバイヤー・サプライヤー間の情報連携が弱いと
「相手(納入先か納入元)のどちらが登録すべきか」の責任分界も曖昧になります。
これにより、蓋を開けてみたら「お互い未登録」で、現場で慌てて手配する事態が年々増殖しています。
現場でよくある“勘違い・失敗パターン”
・急な航空便出荷、現場担当がフォワーダーに丸投げしたまま
・サプライヤー側の工場が田舎で、都心の倉庫まで持ち込まないとKnown Shipper登録不可
・RAのアップデート情報が社内で知らされていなかった
・「以前は大丈夫だったから今回も」という思い込み
このような昭和的な「なんとなく大丈夫」が、現代の厳しいセキュリティ環境では致命傷となるのです。
現場でできる実践的な対策:遅延を未然に防ぐラテラルシンキング
1. サプライチェーン全体で“航空セキュリティ意識”を高める
まずは、自社だけでなく、バイヤーやサプライヤーパートナーまで巻き込んだ“全体最適”を意識しましょう。
・新規取引先や海外拠点とも、初回打ち合わせ時に「Known Shipper/RA登録状況」を必ず確認
・商流のどの段階で、誰が責任を持ち、どの書類をどのタイミングで準備するか明確化
・「毎回確認シートでチェック」をルーチン化し、人任せを回避
といった、組織横断的なスタンスが非常に有効です。
2. データ・工程管理も“航空便対応”モードに
アナログ慣習から脱却するためには、システムやデータ管理の活用も欠かせません。
・出荷管理システムに「航空セキュリティ登録情報」欄を必ず設けて、未登録・期限切れをアラート化
・納期ギリギリ出荷を避け、計画段階で航空貨物の可否・リードタイム・検査待ち日数を反映
・RAの認定一覧や手続き変更、海外規制情報をリアルタイムで社内共有(掲示板やクラウド利用)
こうした“デジタル×現場力”の融合が、アナログ遅延リスクの未然回避に直結します。
3. サプライヤーポジションでも「逆算」したスケジュール感を持つ
バイヤーやサプライヤー、OEM、ODM問わず、「相手がやってくれているはず」から、「自分からも能動的に確認・催促」する逆算発想が極めて重要です。
特に、納入先(バイヤー)がグローバル本社、納入元(サプライヤー)は国内地方拠点など、物理的距離がある場合ほど
・出荷日から逆算してKnown Shipper/RA認定や検査リードタイムをスケジューリング
・前倒し共有/エビデンス(証明書や登録番号)の迅速入手
を徹底しましょう。
「自分ごと」として未整備リスクを“自社が吸収する”くらいの危機感が、現場トラブル抑止力になります。
ラテラルシンキングで見る「将来の航空セキュリティ」
1. デジタル認証・自動化への潮流
今後は、紙書類→電子化・クラウド化へと一層移行します。
ブロックチェーンやサプライチェーンマネジメントシステムが広がり、「誰がどの時点で認証・検査したか」を自動記録・追跡できる時代が到来します。
現場担当もバイヤーも、「システムを活かし、アナログ作業に頼らない」新しい働き方を意識しましょう。
フォワーダー任せから、データ活用による先回り管理へと、マインドセットを更新することが重要です。
2. サプライチェーンの“心理的安全性”とリーダーシップ
セキュリティ未整備の根底には、「責任のなすりつけ」や「現場任せ」文化があります。
バイヤー・サプライヤーどちらの立場でも、「言いにくいことを言える」「お互いの情報を率先してシェアできる」チーム作りが不可欠です。
トラブルの早期発見・回避には、単なるマニュアル整備だけでなく、現場メンバー同士が心理的にフラットな関係を築くことも大切です。
「疑問や違和感をすぐに声に出せる」「知識やノウハウを惜しみなく共有できる」職場風土でこそ、精度の高いリスクマネジメントが可能になります。
まとめ:航空セキュリティ未整備回避は、全員型“現場力経営”で
航空セキュリティ未整備による遅延・コスト増リスクは、今後も業界全体で避けて通れません。
しかし、考え方とオペレーションを少し変えるだけで、致命的なトラブルは大幅に減らせます。
・サプライチェーン全体の情報連携(部分最適から全体最適へ)
・現場現物現実主義とIT・デジタルの組み合わせ
・現場メンバー同士の心理的な安心感・協調
という「昭和的現場力」と「令和的ラテラルシンキング」の融合こそが、今求められている航空貨物オペレーションの新標準です。
自社、顧客、パートナー、すべての立場へ「今、何がリスクで、どうすれば防げるか」を一歩踏み込んで一緒に考えること。
それが、ひいては製造業全体の信頼性や成長力の底上げにつながります。
今日から、「自分の会社は大丈夫か?」と、一度チェックリストを見直す行動が、未来の遅延ゼロ、損失ゼロへの第一歩です。
現場の知恵とネットワークを最大限活かし、激変する物流環境を一緒に乗り越えましょう。
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