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相見積の取り方を変えて本命サプライヤから実勢価格を引き出す

目次
はじめに:なぜ「本命サプライヤ」の実勢価格が重要なのか
製造業において相見積(あいみつもり)は、調達や購買活動の基本中の基本です。
しかし「本命サプライヤ」から本当に魅力ある実勢価格を引き出すのは、実は単なる価格競争ではありません。
長年、現場や管理職として幾多の見積交渉を経験してきた私が、製造業ならではの“昭和型”相見積の限界と、デジタル時代にふさわしい相見積の取り方、そしてサプライヤ目線でバイヤーが何を期待しているかまで、掘り下げてお伝えします。
現場のリアル:「相見積」は形骸化していないか
昔ながらの「とりあえず3社」は命取り
多くの現場でよく見られるのが、上から「3社から見積をとれ」と言われ、とにかく数合わせで見積を集めるスタイルです。
最初から本命が決まっていても、他社にも依頼して数だけは揃えておく。
けれど結局、価格も納期も寸分違わないようなものが提出されて終わり、社内稟議用のアリバイ作りに終始する。
この方法は、発注側だけでなく、サプライヤ側からも「うちはどうせ引き立て役だろう」と見透かされており、実は誰の利益にもなりません。
このアナログ手法から一歩抜け出す必要があります。
コストダウン効果が頭打ち
形だけの相見積では、本命サプライヤから本当に力の入った価格を引き出すこともできません。
なぜなら、「どうせうちは本命」とサプライヤは見抜いており、最小限の値引きしかせずに済ませてしまうからです。
つまり、単なる数合わせの相見積は、時代遅れであるだけでなく、現場の可能性を狭めてしまいます。
そもそも「本命サプライヤ」とは?業界動向から読み解く
安さ一辺倒の時代は終わり
かつての製造業では、価格至上主義が当たり前でした。しかし、グローバル化とサプライチェーンリスクの高まりにより、単純なコストによる評価軸だけでは調達先を選べない時代です。
品質・納期・技術力・サポート体制・サステナビリティ…本命サプライヤと呼ばれる会社には、付加価値が期待されています。
「パートナーシップ」の重視
今日の製造現場では、単なる価格の安さより、長期的なパートナーとしての信頼性や、緊急時の柔軟な対応力、技術提案力が重要視されています。
そのため、単発の取引のみならず、持続可能な取引関係を築こうとする志向が業界全体で強まっています。
本命サプライヤの心を動かす相見積の取り方5箇条
1. 事前情報の共有で「つながり」を示す
本命サプライヤに相見積を依頼する際は、単なる価格勝負ではなく、案件の背景や期待しているもの(例:品質改善、納期短縮、新技術の導入余地など)を丁寧に伝えます。
こうすることで、「なぜ今回の案件が重要なのか」「自社に何を期待しているのか」といった熱量が伝わり、サプライヤも本気の提案・価格提示をしてくれます。
2. 「ただの価格競争」でないことを伝える
本命サプライヤから本音を引き出すため、単刀直入に「価格は重視しますが、技術対応やサポートも評価します」といったポイントを事前に伝えましょう。
これまでのお付き合いの評価も踏まえ、他社にはない強みをアピールすれば、サプライヤも「競争ではなく、この案件は守り抜くべき価値がある」と感じてくれます。
3. 相見積先の選定にひと工夫
「とりあえず数合わせ」の見積先ではなく、本命サプライヤを本当に脅かす可能性のある競合を選ぶこと。
また、競合の動きを明確に伝え、緊張感を演出することも大切です。
この「競争相手」の設定だけで、サプライヤの提案姿勢は大きく違ってきます。
4. 「同じ土俵」で比較できる仕様・条件の明確化
現場では、仕様や納期、購入量、サービス内容、保守体制など条件があいまいなまま、複数サプライヤから見積をとってしまいがちです。
これでは、各社とも「条件が違うから、ベストプライスは出しません」と逃げ道を作ってしまいます。
必ず「この条件で」「この仕様で」とイーブンな土俵を用意しましょう。
5. 見積結果とフィードバックを必ず返す
すべてのサプライヤに、見積の採用・不採用理由や、勝因・敗因を必ず伝えます。
これを怠ると、次回以降の見積で「どうせ理由も教えてくれない」と思われ、真剣勝負の見積は二度と出してもらえなくなります。
ここは、アナログ的でも丁寧なフォローがカギです。
バイヤー目線で語る:「ここを見ている、ここを気にしている」
見積書の「数字」だけでなく「姿勢」を見ている
本命サプライヤであっても、見積書ひとつひとつに現れる「提案意欲」や「取引への思い」は必ず伝わってきます。
例えば、価格構成の内訳にしっかり理由が明記されているか、納期短縮の可否や、生産能力の制約が正直に説明させているかで、パートナーとしての信頼度が決まります。
価格以外の「新しい価値」の提示がカギ
高度化する製造業界では、品質や納期といった従来評価軸を超えた「プラスα」の差別化が重視されています。
例えば「この部品、将来的に仕様変更が予定されているので、今のうちに設計から見直しませんか?」といった先回りの提案があれば、バイヤーはぐっと心を動かされます。
サプライヤー視点でバイヤーの「本音」を読むコツ
見積依頼の「温度」を感じとる
依頼内容が形式的か、それとも本当に本命案件なのかは、ちょっとした会話や、添付資料の詳細度、担当者の温度感で分かります。
工場見学や仕様打ち合わせなど、密にコミュニケーションをとろうとするバイヤーであれば「本気度が高い」と判断し、自ずと攻めた価格やサービス内容を用意します。
「将来の展望」を語るバイヤーは要注目
「この案件がうまくいけば、将来的にはより大きなプロジェクトが控えています」といった発言や、現場課題の相談などをしてくるバイヤーは、パートナーとして真摯に向き合いたいと考えています。
サプライヤーは、単発の取引ではなく、中長期で複数案件を見据えた営業活動につなげるチャンスです。
これからの相見積~今こそ工場現場も「昭和」から抜け出そう~
紙ベースからデジタルへ、情報のオープン化が促進
現在、調達・購買の現場も電子見積やウェブプラットフォームでの案件公募など、急速にデジタル化が進んでいます。
これにより、サプライヤーとの情報格差が縮まり、見積依頼や条件設定の透明性も向上。
逆に最初から「値切るだけ」「情報を隠すだけ」では、良いサプライヤーとは出会えません。
「協働型調達」への発想転換を
単なる価格勝負ではなく、一緒にコスト改善に取り組む。
新技術・新製品の開発を通じ、現場を革新するような「協働型調達」が主流になりつつあります。
これからは、サプライヤーに無理な値下げを迫るだけでなく、どうすれば双方にとってウィンウィンとなるか――を軸に、見積依頼も再設計しましょう。
まとめ:本命価格を引き出すには「信頼×緊張感」が最強
製造業の調達購買で重要なのは、「ここだけは譲れない、本命」というサプライヤーといかに長く良好な関係を築きながら、適切な緊張感のもとで競争原理を活かすか、です。
単なる「数合わせ」から脱却し、案件の背景や期待、条件開示、フィードバックまで、すべてを丁寧に、戦略的に進めましょう。
これができてこそ、本命サプライヤから実勢価格を引き出し、ひいては工場の競争力そのものを高めることができます。
製造業現場に根付くアナログ思考をポジティブに活かしつつ、今こそ新たな相見積の時代へ、一歩踏み出しましょう。
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