投稿日:2025年8月23日

B Lのサレンダーと到着前手続きで滞船費用を回避する着地運用

B/Lのサレンダーと到着前手続きで滞船費用を回避する着地運用

はじめに:B/Lの重要性と現場の課題

製造業のサプライチェーンにおいて、輸出入取引は日々欠かせない業務です。

この中で「B/L(船荷証券)」という書類は非常に重要ですが、現場ではアナログな習慣やルールがいまだに根強く残っています。

特に、グローバル調達が当たり前の昨今、B/Lの扱いを誤ることで「滞船費用」というコストが思わぬ形で発生し、調達購買や生産管理の現場では頭を悩ませる場面が増えています。

この記事では、B/Lのサレンダーや到着前手続きの実践的な活用方法に加え、昭和的なアナログ運用が残る製造業現場での現実的な「着地運用」について、徹底解説していきます。

バイヤー、サプライヤー双方の視点から、今日から現場で活かせるノウハウとなるでしょう。

B/L(船荷証券)の基礎知識とトラブルの実情

B/Lの役割とは

B/Lは国際物流で貨物の所有権を証明する貨物受取証であり、輸出者・輸入者・銀行・フォワーダーなど多くの当事者が利用します。

昔から紙のB/Lが主流であり、金融取引や信用取引でも「輸入者はオリジナルB/Lが無いと商品が受け取れない」というルールが暗黙で守られてきました。

工場現場や購買担当者は書類の不備、入手遅延、煩雑なやり取りの中でB/Lトラブルに巻き込まれることが多く、「予定通り部品や資材が届かない」「滞船・デマレージ費用が発生した」という現象を何度も経験しています。

紙B/Lゆえの現場トラブル

多くの日本の製造業では、紙B/Lにこだわる文化や社内承認フローが残っています。

「書類が社内決裁待ちで滞る」「担当者が押印を忘れる」「郵送やクーリエの到着が遅れた」「船会社、フォワーダーへの提出タイミングがずれる」といったシンプルなヒューマンエラー、さらに突発的な自然災害や海外の政情が絡むと、容易にB/Lのトラブルが拡大します。

そして輸送スケジュールが乱れることで、結果として膨大な滞船費用や入庫遅れによるライン停止など、現場損失に直結します。

B/Lサレンダーと到着前手続きが現場を救う理由

B/Lサレンダーの仕組みとメリット

「B/Lサレンダー」とは、輸出地で発行されたB/Lのオリジナルを、船会社に返却(=サレンダー)することで、輸入地では紙B/Lの現物無しで貨物の引き取りが可能となる仕組みです。

サレンダーB/Lの導入により、

・オリジナルB/Lの郵送によるロスがなくなる
・電子メールで「サレンダー通知」が届けば直ちに通関・引取ができる
・担当者の物理的な移動・承認待ちが減り、リードタイムが短縮

といった極めて実利的な効果が得られます。

また、オリジナルのB/Lが外部流出するリスクも減るため、セキュリティ面でもメリットがあります。

到着前手続きでリードタイムを更に短縮

多くの現場で「貨物が港に着くまで手続きが進まない」という風潮が残っていますが、近年はB/Lサレンダーと合わせて「到着前から通関・納入手続き」を進めるのが主流です。

実務としては、

・輸入通関書類(パッキングリスト、インボイス等)も電子化して事前送付
・船積前に必要な書類、情報のチェックを徹底してミスを潰しておく
・サレンダーB/Lなら到着前から配送手配や倉庫受入れ準備を同時進行

という手法が定着すれば、従来の「貨物着後にバタバタする」アナログ現場から圧倒的なリードタイム短縮が可能になります。

滞船費用(デマレージ)の原因と抑え方

よくある滞船費用発生のメカニズム

滞船費用は、貨物が既に港に到着しているにも関わらず、必要書類や手続きが整っていない場合に発生します。

典型的な原因として

・B/L原本到着遅延(紙B/L文化の弊害)
・請求書、パッキングリスト、他必要書類の不備
・社内承認や決裁フローの混乱
・倉庫側の受け入れ態勢不備
・輸入関税や検疫等、法規制の対応遅れ

などが挙げられ、これらの課題は特に昭和的な管理ルールが色濃く残るほど顕著になります。

B/Lサレンダー×到着前手続きで滞船費用ゼロへ

実践的な現場対応策としては、

・事前に製品・書類情報を一元管理し、誰でも進捗が分かるようにする
・サレンダー方式を全社標準とし、A4のPDFで書類連携
・到着予定日の3~5日前には全ての手続きを完了できるフローを設計

これにより、コストインパクトの大きい滞船費用をゼロに近づけることができます。

配船遅延や予期せぬ事情が起きても、サレンダーB/Lならば「貨物到着後すぐに通関~倉庫納品」へと動き出せるため、調達リスクの低減にもつながります。

昭和的アナログ運用をどう突破するか

紙文化を脱却する現場改革のすすめ

長年続く製造業の現場では、紙の書類、押印主義、物理的フローの存在が根強く残っています。

特に法人の印鑑承認や管理者決裁は、サプライヤー現場・本社間、複数工場間でのやり取りを時間だけでなくヒューマンエラーの温床としています。

私自身の経験でも、「定例の朝会議で承認されておらずB/Lが送れなかった」「購買部と生産管理部がB/Lの所在で揉めた」など、さまざまなトラブルが頻発していました。

これらの課題に対しては、

・B/Lを始めとする貿易文書の電子化推進
・社内申請/決裁をワークフローシステムで可視化&自動化
・部署横断の進捗共有ツールで進捗モレゼロ化
・緊急時は誰でも対応できる組織横断のバックアップ体制

という現場主導型の改革モデルが必要です。

理想論ではなく現場実践の工夫

いきなり全て電子化・ペーパーレス化は不可能ですが、例えば「B/Lだけはサレンダーに統一する」「購買担当が現物を持たず、データで完結させる」という現実的なラインを設定します。

現場のキーマン(工場長、課長、購買リーダー等)が率先して「紙B/Lを持ち歩かない」姿勢を示すことが、意識改革の起点です。

調達サプライヤーにも「サレンダー方式しか受け取りません」と宣言することで、取引先の意識改革も促します。

バイヤー・サプライヤーの双方が知りたい、最新着地運用のノウハウ

バイヤーが押さえるべきポイント

バイヤー側としては、

・B/Lサレンダーで進める条件を、契約時点でしっかり提示する
・納品スケジュール管理と、必要書類のリストアップを徹底する
・サプライヤー毎の手配フローや癖を洗い出し、早期改善
・デジタルツールやチェックリストを駆使し、属人化からの脱却

これらを意識するだけで、トラブル抑止率は格段に向上します。

サプライヤー側が知っておきたいこと

サプライヤー(輸出側)は、

・顧客(バイヤー)が到着前手続きを強く求めている事実
・サレンダー/電子B/Lが「時代の流れ」であること
・書類不備/情報遅れのリスクは自社信用失墜にも直結すること

を正しく理解し、可能なかぎり出荷準備段階で必要書類を整理し伝達する、体制強化が欠かせません。

まとめ:デジタルシフトと現場運用ノウハウで差をつける

B/Lサレンダーと到着前手続きは、滞船費用ゼロ・リードタイム短縮・現場負荷低減という現場の本質課題をダイレクトに解決する着地運用です。

工場や本社、サプライヤーやバイヤーの立場に関わらず、社内外での情報連携、電子化、標準化へのシフトが、これからの製造業において「競争優位の源泉」となります。

今こそ、昭和的アナログ文化から一歩抜け出し、現実的に実践できるサレンダーB/L活用と到着前プロアクションによって、製造現場の新たな地平線を切り拓いていきましょう。

今日の一歩が、未来のトラブルゼロ現場を作ります。

You cannot copy content of this page