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輸出規制や通関対応をサプライヤーに丸投げされる課題

目次
はじめに:製造業の「丸投げ文化」がもたらす現場のジレンマ
今も多くの製造業現場では、輸出規制や通関対応といった専門性の高い業務を、サプライヤーに「丸投げ」する文化が根強く残っています。
目の前の業務に忙殺される中、バイヤーは「サプライヤーがなんとかしてくれるだろう」、サプライヤーは「バイヤー主導でもっと情報を出してほしい」と考えがちです。
こうした状況が、取引先同士でのトラブルやリスクの顕在化、最悪の場合には法令違反につながるケースも珍しくありません。
時代は平成、令和となり、グローバルな調達網が当たり前となった今、昭和のアナログな慣習に頼るだけでは立ちゆきません。
本記事では、現場目線で「丸投げ文化」がもたらす課題、そして企業として脱却すべきポイントや、サプライヤー・バイヤーの双方が主導的に連携しながらリスクを最小化するための実践策を深掘りしていきます。
輸出規制と通関業務の基礎知識
輸出規制とは何か
輸出規制とは、日本政府や輸出先国政府が、特定の貨物や技術の海外移転に制限を設けている制度です。
外為法や輸出貿易管理令などに基づき、デュアルユース(民生目的と軍事目的の双方で使える技術・製品)や特定の危険物、知的財産の制限などが定められています。
簡素に説明すれば、ある部品・原料・装置が「特定の国」「特定の用途」「特定の最終ユーザー」に対し、輸出することが原則禁止、または、事前に許可が必要となる場合がある、ということです。
通関業務の現場実務
輸出入の貨物は、事前申告・許可・検査など一連の通関手続きを経なければなりません。
書類作成(インボイス、パッキングリスト等)、HSコードの特定と記載、税関窓口とのやりとりまで非常に多岐にわたります。
複雑な規制商品では、通関時のヒアリングが厳格になることも多く、根拠書類や説明責任が求められる実務負荷は相当なものです。
バイヤーが陥る「丸投げ」の背景とリスク
なぜ丸投げが起こるのか?
多くの企業バイヤーが、輸出管理規制や通関関連の業務について「サプライヤーがきっと何とかしてくれる」と、サプライヤー任せにしてしまう傾向があります。
その主な背景としては、以下が挙げられます。
・業務範囲の “縦割り意識”
・社内人手不足による最小リソース配分
・規制や法律の変化が激しく、追いきれない
・過去の慣 مثالが通用すると思ってしまう
・責任回避やリスクヘッジ目的(自部門にリスクを残さない)
リスクの例:想定外の規制違反
例えば、サプライヤーが規制対応をきちんと把握しておらず、必要な許可申請をしないまま出荷してしまった場合、最終的な責任を問われるのは発注した側(バイヤー側)となります。
また、通関書類に不備があった場合、貨物の留め置きや遅延、最悪の場合は没収・罰金などの処分のリスクも発生します。
このように、丸投げはリスクの説明責任やコンプライアンスの観点からも大変危険であり、企業価値そのものを毀損しかねません。
サプライヤーが抱える現場の苦悩と課題
情報不足のストレス
サプライヤーは、顧客から曖昧な要求だけが伝えられ、具体的な要求事項や最終用途、出荷先国の詳細が不明確なまま作業を依頼されることが多々あります。
この場合、どの規制に該当するか、どの程度まで責任を持つべきか判断がつかないため、想像以上のストレスとなっています。
現場の膨大な手間・コスト増大
例えば、化学物質製品の成分表の開示、RoHSやREACH対応の適合証明、または米国輸出時のEAR(Export Administration Regulations)等が例として挙げられます。
これらに対応するためには、社内の複数部署の連携や、海外規制のリサーチ・書類作成の専門知識、さらにはコストやリードタイムを計算し直すなど、非常に多くの手間と管理コストが発生します。
丸投げされるたびに、その負担は累積していき、現場の疲弊やモチベーション低下にも繋がっています。
抜け出せない昭和的慣習に潜む業界の根深い体質
グローバルビジネスが拡大し、輸出管理や通関手続きの重要性が高まる中でも、製造業業界の現場には「見て覚えろ」「前任者からの口伝マニュアル」のような昭和的な習慣が根強く残っています。
現場任せの責任転嫁、自身の担当範囲外のことには関わらないという閉鎖的な風土が、デジタル化・標準化の妨げとなり、業界全体が時代の要請に応えきれない構造的問題を抱えています。
これからの製造業現場が目指すべき姿
情報連携と主導権の共有
これからの時代、バイヤー・サプライヤー双方が「共にリスクを把握し、適正な対応を協議・分担する」姿勢が必要です。
具体的には、
・最新の規制情報の共有と定期的なアップデート
・出荷先や用途など、必要な情報を事前にバイヤーがきちんと伝える
・NDA(秘密保持契約)等を適用し、機微情報の開示・リスク分担を明確化
・役割分担の明文化(SDS作成はサプライヤー、規制該非判定はバイヤー等)
・社内外へのQA教育・実践ノウハウの積極共有
といった、具体的な連携強化を推進しましょう。
デジタル化の推進で負担軽減
アナログな現場の効率化も不可欠です。
社内に散在する規制情報・管理台帳をシステム化し、
「該非判定」「書類テンプレート」「規制リンク集」などを共有することで、サプライヤーや他部署とのコラボレーション自動化が可能です。
最新の輸出規制情報はAI・RPAツールにより自動通知記録も可能となる時代です。
社内ワークフローの標準化と一元管理による負担軽減こそ、これからの現場改革の切り札です。
バイヤー・サプライヤー双方の視点から:事例とベストプラクティス
ケース1:自動車部品メーカーの通関遅延事例
海外顧客向けに新製品を納入予定の自動車部品メーカーで、バイヤーが規制判定を現場へ詳細説明せず「通常通りお願い」とだけ伝え出荷指示をしたところ、実は開発品に該当する技術が米国のEAR規制対象であることが判明。
結局、製品は抜き取り検査となり、追加申請や書類作成のために1週間超の納期遅延・追加コストが発生しました。
このケースでは、バイヤーが顧客ニーズや規制情報を早い段階から現場と共有し、輸出コンサル契約や専門家への相談を手配していれば、大きな遅延は回避できました。
ケース2:化学品分野でのリスク分担と成功
ある化学品原料メーカーでは、サプライヤーが定期的に社内外の規制動向セミナーを開催し、バイヤーとも最新事情の共有を積極化しています。
情報共有シートやFAQ集を運用、トラブル発生時も迅速に両者で原因分析と改善点をドキュメント化。
このような体制により、現場の自主性もアップし、クレームや法令違反リスクも激減、顧客から「頼れるパートナー」と高い評価を得ています。
まとめ:これからの時代、丸投げから共創へ
輸出規制や通関対応の丸投げは、一時的な省力化は叶えても、いずれ重大なリスクやコスト、信頼低下を企業にもたらします。
昭和的慣習や従来型の責任転嫁に頼らず、「現場視点の気づき」と「デジタルの活用」といった新たな地平を切り拓く姿勢が不可欠です。
バイヤーもサプライヤーも、知らず知らずのうちに“自部門バイアス”に陥っていないか。
もっとオープンに現場同士で悩みを共有し、創造的な課題解決へと一緒に歩みを進めましょう。
これからの時代、「丸投げ」から、真のパートナーシップ=共創のステージへ進むことこそ、製造業の発展を支える鍵だと、私は信じています。
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