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危険品のUN番号誤記載で船積み拒否されたときの是正フローと再申請手順

目次
はじめに:製造業の現場で頻発するUN番号の誤記載
製造業に携わる多くの方々にとって、「危険品のUN番号の誤記載」は、決して他人事ではないトラブルです。
特にグローバル展開を進めるメーカーやサプライヤーにとって、船積み時の危険品管理は品質問題や納期遵守と並ぶ重要な業務領域です。
一方で、長年の“昭和的な流儀”が色濃く残る業界慣習やアナログな情報管理体制が、こうしたミスの温床となっているのも否めません。
本記事では、実際にUN番号誤記載で船積み拒否された場合の是正フローや再申請手順について、現場目線の具体事例を交えながら、発生原因や未然防止策まで深掘りします。
UN番号とは何か?製造現場での重要性
UN番号(United Nations Number)は、国連が定めた危険物輸送時の物質固有番号です。
船舶・航空機輸送においては、事前の申告時に正しいUN番号を記載することが国際的なルールになっています。
ひとたび番号を誤ると、誤った取扱いによる事故リスクを高めるばかりか、リジェクト(積載拒否)、多額のペナルティ、サプライチェーン停滞の要因となります。
特に製造現場では、小分け充填、化学材料、バッテリーや電子部品など多様な危険品が日常的に物流を通じて動くため、UN番号管理は“現場品質”の一部と見なす必要があります。
UN番号の誤記載による船積み拒否の実態
船積み拒否に至る主な原因
UN番号の誤記載による船積み拒否は、下記のような現場のヒューマンエラーや管理体制の隙間から発生しています。
・仕様変更や荷姿変更の際、番号変更に気づかない
・慣例的な「コピー&ペースト」で古い書類を使い回し、記載を誤る
・社内の危険品マスター登録情報の陳腐化
・輸送先の法改正・分類変更へのキャッチアップ漏れ
・サプライヤー任せで自社がリスク管理せず、そのまま書類を転送
こうしたミスが通関手続きや船会社のチェックで発覚し、コンテナ丸ごとリジェクトされるケースもあります。
現実にどうなる?現場で生じる影響
UN番号誤記載で船積み拒否を受けた場合、現場では次のような深刻な問題が発生します。
・納期遅延:船積み再手続きから最悪1〜2週間はタイムロス
・追加コスト:再申請手数料、保管料、書類修正費用など
・顧客信用毀損:「標準化」「安全管理」への信頼低下
・サプライチェーン全体の調整:生産計画や在庫帳票の変更作業
特に自動車・電子部品・医療機器の現場では、1本の出荷遅延がその後の工程全体にドミノ式の影響を及ぼすため、現場リーダーの危機管理が問われます。
船積み拒否発生時の是正フロー
現場で実践されている初動対応
船積み拒否が発覚したら、まず現実を正面から受け止め、迅速な是正を行うことが最優先です。
1. 問題の全容把握と関係者への第一報
・どの貨物が、どのUN番号で誤記載されたか
・いつ、どの部署/誰が記載したか
・顧客やサプライヤー、物流業者に即時連絡
2. 現物確認と状況ヒアリング
・該当製品の物理的確認
・担当者へのヒアリングで原因特定
3. 本部や危険品管理責任者と協議
・是正の進め方、再申請の可否判断
・必要な証憑・是正書類の提示
4. クライシスマネジメント会議
・リカバリープラン策定
・顧客への影響最小化アクション
是正作業の具体的なステップ
1. 正しいUN番号を特定し、技術文書・安全データシート(SDS)を再確認する
2. 書類(危険品申告書、インボイス、パッキングリストなど)を正しいUN番号で改訂する
3. 新書類と、エラー発生に関する説明文書(“エラーレポート”や“是正報告書”など)を準備する
4. 必要に応じて社内の品質保証部門、または外部検査機関への再提出と承認を得る
5. 船会社、および通関業者に是正済み書類を再提出し、リスケジュールを調整する
6. 顧客に経過説明と新たな納期計画を提示する
是正の過程で「エラーレポート」には、発生背景、是正内容、今後の再発防止策を明記することが求められます。
昭和的な現場では「書類の上書き」で済ませがちですが、近年は“なぜ起きたか”の明文化が再発防止の鍵です。
再申請の実務手順と注意点
再申請に必要な書類と流れ
1. 修正済みの危険品申告書(Dangerous Goods Declaration :DGD)
2. 正しいUN番号が記載されたインボイス、パッキングリスト
3. 購入先や生産部門からの技術資料、Safety Data Sheet(SDS)
4. 是正報告書(Corrective Action Report)、発生原因や対策を記載
5. 物流会社やフォワーダー宛ての「再申請指示書」
再申請プロセスでは“すべての関係書類を同時に、正確に手配・確認する”ことがトラブルシューティングの肝です。
一点のミスでも再度リジェクトされることが珍しくないため、Wチェックや第三者レビューが不可欠です。
また、港湾・輸出入通関の混雑状況や船会社のスケジューリング制約(カットオフタイム等)も事前確認が重要です。
現場実務で頻発しがちな“落とし穴”
・システム入力の「別名義」や「旧バージョン」のUN番号転記
・“似た番号”“近似物質”との混同
・再発防止対策が形骸化(メール一斉送信だけで終わる 等)
・サプライヤー側からの確認レスポンス遅延
・委託先物流業者との認識齟齬による再ミス発生
現場では、生産部署/法務/物流/営業など部門横断的な連携が必要になります。
バイヤー、サプライヤー、それぞれの立場で求められる意識改革
バイヤー目線で考えるべきリスク管理
・自社荷主責任の明確化(「サプライヤー任せで丸投げ」にしない)
・UN番号や危険品分類のマスター定期点検
・新規・変更時には“現場の声”を吸い上げ、教育徹底
・トラブル初動時は、迅速・毅然とした顧客対応(隠ぺいは致命傷)
サプライヤーだからこそ知っておくべき現場の期待
・客先の仕様変更連絡や法規制変更の最新情報キャッチアップ
・「危険品登録情報」「SDS」の同梱や同時送付の徹底
・船積み過程での「もう一度確認」ルールの独自運用
・トラブル発生時は“即時・事実ベース”での情報開示
「言われたからやる」ではなく、「自ら気づいて是正する」姿勢を評価される時代になっています。
昭和体質のアナログ現場を変えるラテラルな視点
業界全体が昭和的な“人間系”信頼や経験則主導の管理になりやすい現実があります。
一方で、以下のような“ラテラルシンキング”での業務刷新がいよいよ必須です。
・デジタルマスター化:危険品一覧・UN番号管理の専用DB構築
・AIによる書類ミス自動検出、承認プロセスの標準化
・クラウドベースのリアルタイム共有、進捗見える化
・社内外合同のハンズオントレーニング、現物確認ワークショップ
・VRやARを活かした「危険品取り扱い仮想訓練」
加えて、「担当者ひとりの責任」とせず、多能工化や部門間“相互監査”でのチェック体制構築も推奨します。
ミスの発生自体を「現場の学び」と捉え、個人へのペナルティや詰問よりも「仕組みで支える」文化こそ重要です。
まとめ:UN番号誤記載トラブルを学びに、次の組織力へ
UN番号の誤記載による船積み拒否は、現場では“ありがちなヒューマンエラー”として片付けられがちです。
しかし、これをきっかけに自社・自部門の「情報管理」「危険品教育」「コミュニケーション」「デジタル刷新」のあり方を根本から問い直す好機と捉えることが大事です。
バイヤー志望者も、サプライヤーとして現場に携わる方も、今一度、「なぜ自分たちは危険品を扱い、UN番号管理を行うのか」という本質と向き合ってみてください。
そこには、モノづくりを支える現場力、現場知の継承、新しい技術活用という無限の可能性が広がっています。
今こそ、現場の“昭和の知恵”と“令和のデジタル”を掛け合わせ、次世代の安全・安心なサプライチェーンを築いていきましょう。
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