危険物船積み申請（DG申請）のリード不足を回避する社内カレンダー

はじめに：製造業現場で進行する「危険物船積み申請（DG申請）」の厳しい現実

日本の製造業はグローバルなサプライチェーンの一員として、数多くの危険物を船で輸送し続けています。
その中で避けて通れないのが、危険物船積み申請、通称DG（Dangerous Goods）申請です。

「危険物船積み申請のリードが足りず、納期遅延や損失につながる」
「どうしても申請の進行管理が属人化し、“うっかりミス”が絶えない」
こういった課題は、今も昭和のころから脈々と続く“紙文化”“口頭伝達主体”の製造業では根深いものです。

この記事では、調達購買から生産管理までひたすら現場を歩いてきた立場から、DG申請のリード不足で苦しまないための「社内カレンダー管理」の秘訣を解説します。
バイヤー志望者や、サプライヤーの立場からバイヤー心理を知りたい方にも有意義な内容です。

なぜDG申請のリード不足が多発するのか

業界特有の“アナログな申請運用”が原因

多くの製造業現場では、未だにDG申請の手順やリードタイム管理が、Excel・手書きシート・メールの連絡に依存しています。
グローバル化が進む一方で、この「人の記憶」「紙のメモ」に頼った申請管理が、申請リード不足の温床となっています。

全体スケジュールが共有されていなかったり、担当者しか詳細を知らない状況が、船積み直前での「申請漏れ」や「書類不備」の発覚を誘発します。

“その場しのぎ”に終始する背景

なぜ業務改善が進まないのでしょう？
それは、現場がとにかく“日々の出荷に追われる忙しさ”の中、個人プレー・属人的マネジメントで何とかやりくりしきた、長年の習慣です。
失敗のたびに「今後気をつける」で解決した雰囲気にしてしまい、根本的な仕組み改革まで踏み込めない。
これが昭和型アナログ業界で根強く残る課題です。

“いつも同じ人が同じミス”という構造

申請内容は専門用語や法規制が絡み、習熟に時間がかかります。
結果的に一部のベテラン現場担当者に「暗黙知」としてノウハウが蓄積。
ところが、彼らにもし万が一があれば――申請忘れ、記入ミス、不適切な対応が連鎖し、全社的な納期リスクに発展します。

このような“属人化の罠”を回避するために不可欠なのが「全社共有型の社内カレンダー」の導入です。

社内カレンダーによるリードタイム管理の全体像

DXとは言わずとも “全体可視化”が肝心

最先端システムをいきなり導入する必要はありません。
重要なのは「誰が、いつ、何を、どこまでやるか」を一元的に可視化し、複数人で進捗を共有できる全社カレンダー運用です。

全社カレンダーの運用ステップ

1. 「DG申請に必要な手続き工程」を全て洗い出す
2. 各工程の所要日数・締切日を設定する
3. 工程ごとに担当部署・担当者名を明確化する
4. 共有カレンダーに「工程＋期限＋担当者」単位でタスク登録する
5. 申請タスク完了時には必ず「履歴・証跡」を記録する
6. 進捗を週次や月次でレビューする体制を決める
特に、工程が「外部委託」や「社内稟議」など社外/他部署にまたがる場合でも、全ての締切・担当・進捗を横串で見えるようにしておくことが重要です。

属人化を砕く “カレンダー通知＋二重チェック”

一番の落とし穴は「○○さんに頼んであるから大丈夫」の思い込みです。
担当者に“やったつもり”ミスは必ず生じます。

社内カレンダーに「メール/チャット通知」機能を組み合わせ、タスク登録時・期限前リマインド・完了時の証跡保存まで徹底しましょう。
さらに、必ず“二重チェック（Wチェック）”体制を制度化することで、「担当Aが申請→担当Bが内容・期日を確認」をルーティン化し、属人リスクを分散させます。

カレンダー運用の実践ノウハウ

まずは“手元のカレンダー”から始める

社内ネットワークで使えるOutlookカレンダーやGoogleカレンダーで十分です。
最先端の大規模DXを導入する前に、まず現場ごとに危険物申請関連の工程を書き出し、既存のカレンダーに「期限管理用タスク」として登録しましょう。

現場では「月次生産カレンダー」「出荷予定表」など定例の紙資料が流通していますが、これに“危険物申請工程専用カレンダー”を重ねることがポイントです。

“工場長”が旗振りしてこそ現場定着する

カレンダー導入は、パートさんや若手担当者だけに丸投げでは絶対に形骸化します。
工場長やラインリーダーなど、現場のリーダー層が、“カレンダー運用の意義”を現場に毎回伝えることが大事です。
「納期に申請遅れ＝お客様に迷惑がかかる」「属人化では現場が回らない」など当事者意識を持たせて、現場主導で運用させるのが定着の鍵です。

“可視化”が生む一体感と学び

全社カレンダーで全作業が見える化されると、どこか一つが遅れても“他部署がアラートを発する文化”が生まれます。
トラブル発生時も「何が原因で申請遅延が出たのか」を明確に特定でき、「どうしたら繰り返さないか」を現場全員で議論できます。
新人研修やOJTの中でカレンダー活用法を伝えることで、ノウハウ継承にも大きな威力を発揮します。