- お役立ち記事
- 保証対応に必要な調査費用を認めてもらえない問題
保証対応に必要な調査費用を認めてもらえない問題

目次
はじめに:製造業現場の「保証対応」について
保証対応とは、納入した製品や部品に不具合が発生した場合、サプライヤー側が責任を持って対応することを指します。
この対応には、不適合品の調査から原因分析、場合によっては現場立ち合いや再発防止策の提案まで、多くの工程が含まれます。
しかし、保証対応に関する調査費用――つまり、サプライヤーが負担するコストについては、必ずしもバイヤー(購買担当者や依頼主企業)側に理解されているとは限りません。
実際、現場では「なぜ調査のための費用まで負担しなければならないのか?」という声がサプライヤーから上がっています。
本記事では、保証対応時の調査費用問題に焦点を当て、業界全体の課題、調査費用の正当性、そして解決の糸口まで、実践的なノウハウや現場目線で解説します。
1. 保証対応に必要な調査費用とは何か
保証対応の流れと発生する主なコスト
保証対応のプロセスには、次のようなステップが含まれます。
1. 不具合通知の受領
2. 不具合品の現品回収または現地調査
3. 原因調査(自社・場合によっては協力会社との連携)
4. 報告書・再発防止案の提出
5. 調査関連の外部委託や部材購入(必要時)
この中で特にコストが発生するのは、「2.不具合品の回収や現地調査」「3.原因調査」および外部委託や分析装置への費用です。
現場に出向く人件費、交通費、専門的なラボでの分析費用、社内リソースの稼動コストなどが該当します。
調査費用が発生する典型的なパターン
・不具合がサプライヤーに帰属しない場合(設計や使用環境起因のケース)
・バイヤー側の取り違えや誤使用が疑われるケース
・双方の責任分界点が曖昧で綿密な根本原因追求が必要なケース
・高度な素材分析や第三者機関の鑑定が求められる場合
このように、サプライヤーの責任が明確でない場合や、非常に複雑な調査が必要となる場合、調査そのものがサプライヤーの「持ち出し」となりがちです。
2. 「調査費用を認めてもらえない」現場の実態
サプライヤー・バイヤー間の力学
大手メーカーを取引先にもつサプライヤーは、交渉力の面でしばしば弱い立場に立たされます。
いわゆる「下請け構造」が残る業界においては、「保証対応はサプライヤーが無償で行うもの」といった暗黙の了解が根強く残っています。
そのため、「調査費用を請求したい」と申し出ても、「うちとの付き合いはこれきりでいいの?」と圧力をかけられたり、単価交渉で不利になったりするリスクがつきまといます。
バイヤー側の本音とボトルネック
品質保証や購買部門のバイヤー側では、「サプライヤー責任による不具合」であれば無償対応が当然という感覚が強くあります。
一方、原因がグレーゾーンである場合でも「とにかく早く結論と再発防止策を出してほしい」と、スピード重視が優先される現場も多くみられます。
予算や決裁権の面でも、現状の社内稟議フローでは「調査費用の支払根拠」が整っておらず、却下されるケースがほとんどです。
結果、調査が杜撰になったり、本質的な原因究明がされないまま、再発リスクだけが残るという構造的矛盾に陥っています。
3. なぜ「調査費用」を認めてもらえないのか
昭和的アナログ業界に根付く「無償対応当たり前」文化
多くの日本の製造業では、いまだに「お客様は神様」精神や、「納品後責任はサプライヤーが背負うもの」といった価値観が根強く残っています。
高度経済成長〜バブル期に確立したこの構造は、令和の時代になった今も、現場の意思決定に強く影響しています。
サプライヤーは「長い取引があるから」「ここで逆らうと取引が切れるかもしれない」といった消極的な理由で、無償で動いてしまっているのが実情です。
グローバルとの意識ギャップ
欧米の多国籍企業や外資の購買部門では、「調査は有償が基本」「不具合起因者を第三者が合理的に特定する」という考えが浸透しています。
しかし、日本のメーカー、特に中堅クラス以下では「まずは現場が汗をかけ」「立場で譲れ」の昭和型思考が今なお根強い現場が多いです。
契約・合意文書の不在の弊害
そもそも契約書や合意書に「調査費用」について明記していないケースが大半です。
商習慣や口頭合意に頼るため、後になってトラブルの元になるパターンが多発しています。
バイヤー側の視点:コスト抑制と「ムダ嫌い」文化
また、バイヤー側では「調査なんて自社もやっているから、他社の分まで払う意味がわからない」「そもそもサプライヤー側の商品管理が悪いから発生しているのでは?」という発想も骨の髄まで浸透。
コストダウン圧力が強い業界だからこそ、「本当に必要な調査・費用なのか?」が厳しく判定されやすい傾向があります。
4. 現場で身につけるべき「ラテラルシンキング」的アプローチ
問題の本質を問い直す
表面的には「調査費の請求・支払い」だけの問題に見えますが、その裏には下記のような構造的問題が存在します。
– サプライチェーン全体の最適化に資する投資がなされていない
– 品質リスクや情報が曖昧なまま見過ごされている
– 真の原因追究より短期的な責任回避が優先されている
この “立場を超えた視点” で問題を捉えなおすことが、長期的に信頼を得る鍵となります。
先進的サプライヤーの交渉術
進んだサプライヤーは、保証対応契約段階から下記の点を合意・文書化しています。
・「保証範囲」=不具合の責任区分、想定外起因の扱いを明文化
・「調査費用発生時の説明責任フロー」
・「第三者分析が必要な場合の費用按分ルール」
・「保証対応に関わったリソースの時間記録」
また、案件ごとに「調査内容・仮説・費用見積もり」を提示し、納得度の高い説明・根拠作りを徹底しています。
最初から「ただの下請け」ではなく、「真のパートナー」として発言・行動することが信頼につながります。
5. アナログ業界を脱却するために現場が今日からできること
契約・取り決めの明文化とカルチャー醸成
契約段階で「調査にかかる費用」や「原因不明の場合は費用折半」などのルールを盛り込むことが、今後は不可欠です。
場合によっては、過去の事例や費用データもセットにして提示し、納得度を高める努力も必要です。
バイヤーとの真のパートナー関係構築
一方的に請求するのではなく、
「なぜ本調査が必要なのか」
「この調査を通じてどんなメリットがバイヤーにあるのか」
「調査をしなかった場合に起こるリスク」
まで、丁寧に合意形成していくことが、現場で評価される“攻め”の姿勢です。
ラテラルシンキングによる「提案型保証対応」
・「調査ノウハウ」をバイヤーに共有し、品質文化の共有者となる
・調査結果や分析データを製品開発フィードバックに活かす仕組み作り
・問題発生後ではなく予防的な品質改善提案をセットで提供
このような「全体最適思考」「攻めの品質保証」は、アナログ体質の製造現場を変える強力な武器となります。
6. 今後の展望とバイヤー・サプライヤー双方へのメッセージ
多様な物づくりパートナーがグローバル化する現代において、「ただの下請け・発注者」という既存の枠組みは着実に崩れつつあります。
調査費用の問題は、その象徴ともいえるでしょう。
サプライヤーは、現場力・提案力を武器に「攻めの交渉」を。
バイヤーは、自社だけが得するのではなく、パートナー全体でコスト・品質の向上を目指す「全体最適」の発想と制度設計が求められます。
未来の「つくる現場」をより良くしたい全ての方へ――。
調査を「コスト」ではなく、「未来への投資」「品質革新の出発点」として捉える新たな一歩を、あなたの現場から始めてみませんか。
資料ダウンロード
QCD管理受発注クラウド「newji」は、受発注部門で必要なQCD管理全てを備えた、現場特化型兼クラウド型の今世紀最高の受発注管理システムとなります。
NEWJI DX
製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指す請負開発型のコンサルティングサービスです。AI、iPaaS、および先端の技術を駆使して、製造プロセスの効率化、業務効率化、チームワーク強化、コスト削減、品質向上を実現します。このサービスは、製造業の課題を深く理解し、それに対する最適なデジタルソリューションを提供することで、企業が持続的な成長とイノベーションを達成できるようサポートします。
製造業ニュース解説
製造業、主に購買・調達部門にお勤めの方々に向けた情報を配信しております。
新任の方やベテランの方、管理職を対象とした幅広いコンテンツをご用意しております。
お問い合わせ
コストダウンが利益に直結する術だと理解していても、なかなか前に進めることができない状況。そんな時は、newjiのコストダウン自動化機能で大きく利益貢献しよう!
(β版非公開)