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航空危険品申告のExempt数量誤用による拒否を避ける判断基準

目次
はじめに:航空危険品輸送における“Exempt数量”とは何か
製造業や商社で調達購買、生産管理、物流などに携わる方にとって、航空危険品の輸送は避けて通れないテーマです。
近年、海外サプライヤーとの取引量が増大する中、危険品の“Exempt数量”つまり「免除数量」に関する誤解が原因で、貨物が搭載拒否や通関ストップになる事例が絶えません。
とくに日本では、各現場で昭和のアナログな“慣行”が根強く残り、日常的に「これぐらいなら大丈夫だろう」という“なんとなく”の運用が続いています。
この記事では、製造業で長らく現場管理職を経験した筆者が、航空危険品申告のExempt数量について、バイヤー・調達担当者、サプライヤーの双方の立場から現場で役立つ判断基準や、誤用を避けるためのポイントを解説します。
航空危険品扱いの基本 — 免除(Exempt)数量とは
免除数量(Exempt Quantity)って具体的になに?
航空危険品規則(IATA DGR)では、化学品や電子部品、医薬品など多岐にわたり、基準を超える危険品は厳格な申告や特別なパッケージが義務づけられています。
一方、危険物の量が非常に微量の場合、「Exempt(エグゼンプト)数量」や「Excepted Quantity(EQ)」など、制度上例外的に通常の危険品規則から“免除”される仕組みが設定されています。
この数量以下の場合、安全対策が十分なら一部規制を省略でき、物流コストや手間の削減につながります。
ですが、ほんの数グラム、数ミリリットル単位まで規定が細かく、容器形式や貨物全体の危険性など、複数条件が絡み合います。
免除数量の“勝手な判断”はリスクだらけ
ありがちな現場逸話として、調達担当者やサプライヤーが「前回大丈夫だったから」「ベテランから大丈夫と言われた」と、根拠のない経験則で輸送可否を判断し、Exempt申告で荷物を出荷。
その後、航空会社や倉庫での書類審査で不備が発覚し、「この数量は免除対象外」「規定を超えている」と輸送拒否。
納期遅延や再梱包、追加費用の発生、最悪商品の廃棄・返品に発展する例も少なくありません。
ここに数字で語れない“現場の勘”と国際的な最新ルールの“ズレ”が存在します。
拒否トラブルの現状分析:アナログ現場がはまりがちな“落とし穴”
具体的なトラブル事例
1. サプライヤーが「この溶剤は一瓶30mlならExempt」と信じ、50本まとめて出荷。
2. 航空会社のカウンターで、合計量が免除上限を超過していたことが発覚。
3. 海外向け品質証明書(SDS)に危険性表示があったため、現場判断で通常貨物として積載し拒否。
4. 商社がロット単位申告したが、1インナーごとに免除基準を適用する必要があった。
現場は「ずっとやってきたやり方」で動いてしまいがちです。
昭和期から変わらぬ“仲介商社の感覚”や“現場任せ”が根深く、サプライヤーの現場では「たぶん大丈夫」という属人的な判断が少なくありません。
なぜ誤用が起きやすいのか
IATAやICAOなど航空法規は年々アップデートされています。
しかし、多くの現場では…
– マニュアルが更新されていない
– サプライヤー・現場オペレーターの教育が不足
– 英文規制が読めず、勘と前例主義に頼る
こうした“情報格差”が温床となり、実際には免除数量を超えているのにExemptと申告→空港で拒否、というパターンが頻発します。
また、危険物の“SDS”改訂やサプライヤーチェンジに追随できず、いつの間にか危険区分が上がっていた……という「つもりミス」も多発。
拒否回避のための現場実践基準・リスト
1. 危険品分類の正確なチェックは“絶対”事項
IATA DGR最新版や各国航空会社の規定をもとに、「正しいクラス分け」と「Exempt対象か」のダブルチェックを必須化しましょう。
– 危険品クラスやUN番号をSDSで確認
– 常に最新バージョンのIATA・ICAO規則と照合(年度や改版に注意)
– 1単位量、1梱包単位ごとの免除条件をリスト化
現場では「この品目=このまま送れる」というショートカット的思考をやめ、根拠のデータとルールで判断する意識が大切です。
2. SDS(安全データシート)の“アップデート”は必ず確認
SDSは化学品や電池の危険性記載が最新である必要があります。
サプライヤー経由で複数言語の最新版を取得し、物質名・成分・含有量・危険クラス・特記事項を突き合わせてリスト管理する習慣を構築します。
旧SDSや翻訳間違いのまま出荷し、大手航空会社で差戻しされるケースもあるため注意が必要です。
3. 輸出申告の前に“量と梱包形態”を再点検
Exempt数量は「単体量」「合計量」「容器ごと」など、品目ごとに条件が異なります。
– 1バイアルの上限と、インナー・アウターごとの最大数量を明確に区別
– 各パッケージがIATAの求める「パッキング指示」に従っているかチェック
– テープや緩衝材の素材も化学耐性・サステナブル規格対応の観点で見直す
物流現場には「輸送担当の最終責任者」を置いて、出荷前のダブルチェックリスト運用を徹底しましょう。
4. 書類とラベルの“書き分け”マニュアルを作成
– AWB(航空運送状)や“Shipper’s Declaration”、添付書類(インボイス等)の記載方法を標準化
– ラベル印字や危険品ステッカー貼付のガイドラインも「現場で見える化」して、分かりやすくマニュアル化
ここで曖昧な表現や、手書き訂正は禁物です。
グローバルサプライチェーンでは「正確な英語記載」「システム入力の一元化」が求められます。
5. 関係者教育と“他流試合”の推進
– 国内外の危険品スペシャリストのセミナーやIATA認定コース参加
– 社内勉強会や座学で最新動向と業界ベストプラクティスを共有
– 課題事例やヒヤリハットを「みんなで振り返る」文化づくり
他社事例や専門誌、専門家ウェブサイトを定期購読し「自分たちの常識が古くなっていないか」を現場ぐるみで見直しましょう。
バイヤー・サプライヤーの交渉現場で役立つ“危険品思考”のポイント
製造業流通の現場では「コスト優先」「納期優先」で、つい危険品規制を軽んじがちです。
しかし、Exempt数量の誤用で物流遅延や損害賠償に発展すると、部門間の信頼、そしてサプライチェーン全体の信頼性が大きく損なわれます。
ポイントは以下の通りです。
– 危険品輸送は“物流のボトルネック”と捉え早期に情報共有
– バイヤーはサプライヤーに「Exempt数量証明・SDS最新化」の厳格な提出を求める
– サプライヤーも「危険品取り扱い能力」を“強み”としてPRする時代
– 双方が“現場実態”を共有し、緊急時も責任の押し付けあいにならない仕組みづくり
昭和的アナログ体質から脱却するために
現場の“ノウハウ属人化”を断ち切る仕組みづくり
– 必須チェックリストや記入例を「デジタル化」
– 少人数のベテランに依存せず、作業手順を“誰でも再現できる”ようにプロセスマップ化
– 失敗事例やQA事例集をナレッジデータベース化し、常時ブラッシュアップ
最新ITツールの活用
– 危険品データシートのAI自動解析や照合ツール
– クラウドベースの物流管理プラットフォームでリアルタイム情報共有
– スマホ・タブレットで現場写真や書類を即時共有するアプリ導入
まとめ:グローバル製造業に必須の“安全保障”としての危険品知識
航空危険品のExempt数量の誤用は、現場の“慣れ”や“思い込み”が招く典型的リスクです。
現場目線からの実践ポイントは、ただマニュアルを読めばよいのではなく「自分たちの常識を疑い、常に最新ルールでダブルチェックする」こと、そして「属人化から脱却した仕組み・システムをいかに導入するか」にかかっています。
製造業現場の皆さん、バイヤーを志す方、そしてサプライヤーの皆さんも、グローバル物流時代において危険品の適正輸送は企業の「安全保障」であり、今後のビジネス発展の大きなカギです。
ぜひ日々の実践の中で、今日からできる改善に取り組んでみてください。
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