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輸送中温度管理が必要な品目のコールドチェーンを国際規格で実装

目次
はじめに:コールドチェーンの時代的要請と国際規格の重要性
日本の製造業は、かつての大量生産・大量消費の時代と比べると、「安全」「高品質」「信頼」という価値軸がより顕著になっています。
とりわけ食品、医薬品、精密部品など、温度管理が生命線となる品目については、コールドチェーン、すなわち低温流通網の適切な構築が不可欠です。
この分野では、昭和的な勘と経験則だけでは対応が難しい時代になりました。
グローバル競争が激化し、サプライチェーン全体でのトレーサビリティや透明性、そして国際規格への対応が求められています。
この記事では、コールドチェーンにおける国際規格の意義と、現場でどのように実装していくべきかを、20年超の現場経験をもとに詳しく解説します。
調達・購買、生産管理、品質管理に携わる方、サプライヤーの立場からバイヤー視点を知りたい方にも必見の内容です。
コールドチェーンとは何か?基本概念の整理
コールドチェーンの定義
コールドチェーンとは、原料生産から消費者に届くまで、温度制御を切れ目なく維持する物流網のことです。
たとえば、冷蔵・冷凍食品、ワクチン、血液製剤、半導体、バイオ試薬など、温度逸脱が品質低下や重大なリスクにつながる品目で必須となります。
なぜ温度管理が必要なのか?
・鮮度維持:生鮮品や食品は高温下で劣化や腐敗が急激に進みます。
・有効性保持:医薬品やワクチンは、規定温度を外れると効果を失うことがあります。
・安全確保:冷凍・低温に保つことで、食中毒や異常発酵などのリスクを抑制します。
日本の現実:アナログ体質とのギャップ
日本の中小工場や物流現場では、温度管理が手書きの記録や現場作業員のノウハウに依存している場合が多々見られます。
国際展開や大手バイヤーとの取引を狙う場合、そのギャップが障壁となるのです。
コールドチェーン領域で適用される主な国際規格
ISO 22000:食品安全マネジメントシステム
食品業界ではISO 22000がグローバル標準です。
ISO 22000はHACCPの考え方をベースにしており、温度管理工程の重要性が明記されています。
GDP:Good Distribution Practice(医薬品の適正流通基準)
ワクチン・医薬品ではGDPが必須となりつつあります。
国際的なガイドラインに準拠し、温度逸脱時のエビデンス提出や是正処置の仕組み整備が求められます。
その他関連規格・法令
・WHOガイドライン、欧州GDP、日本の薬機法
・IATA(国際航空運送協会)Perishable Cargo Regulations(傷みやすい貨物規則)
こうした基準に則り、温度記録の自動化やリアルタイム監視、データの真正性保持が必須になります。
実際の現場で「国際規格に対応したコールドチェーン」を構築するには
従来のアナログ手法の課題
従来の日本の現場では、以下のような温度管理が主流でした。
・冷蔵庫から一時的に商品を出して作業台に置く
・輸送中は温度ロガーを積むが、データの回収・管理は手作業
・温度記録表を現場で手書きしたものをファイリング
これでは「トータルコントロール」にはなりません。
国際規格が求める一貫性や正確性、リアルタイム性を満たすには、デジタル化が不可避です。
現場に根差したデジタル化のポイント
1. 温度ロガー・IoTセンサーの導入
温度計測を自動化し、クラウドにデータが送信される仕組みをつくります。
BluetoothやLTE、LoRaWANなどの通信手段も目的に合わせ選択する必要があります。
2. データ監視・アラート通知
センターでデータを監視し、閾値を超えた場合は即座に担当者へスマホやPHSに通知を送る仕組みが重要です。
逸脱があれば、是正処置と再発防止策(CAPA:是正・予防活動)が自動で記録されるワークフローも必須です。
3. データの真正性
「記録の消去・改ざん不可」「アクセス権管理」「タイムスタンプによる証跡管理」など、ALCOA原則(真実性、読めること、一貫性、同時性、正確性)を満たす必要があります。
現場定着のための工夫・マネジメント
最新システムを導入するだけでは定着しません。
現場作業者への教育、なぜ必要なのかという意義の周知、現場事情を取り入れた運用ルール構築が欠かせません。
昭和的な「現場の勘」を可視化し、ITと融合することで初めて「真に強いコールドチェーン」が実現します。
グローバル取引で「バイヤーが重視する点」とサプライヤーが取るべき戦略
バイヤー視点:何にこだわるか
強いバイヤー企業は、以下を重視します。
・規格・法令に適合した温度管理体制(ルール化、監査対応力)
・逸脱発生時の即時報告、エビデンス提出・閉ループ対応
・サプライチェーンの「見える化」(ISO 9001などとの連携)
すなわち、“IT化率”や“継続的改善”も選定基準なのです。
サプライヤーが差別化できるポイント
・国際規格や新技術への先行投資を積極展開
・顧客監査、サードパーティ監査に全工程のデータを即時開示
・「なぜやるのか」「顧客や最終消費者の安心・安全」のストーリーを作業者一人一人に落とし込む
これらを明確な形でアピールできれば、競合他社との差別化になります。
現場目線で考える今後のコールドチェーン革新のキーワード
完全自動化・予測メンテナンス
工場や倉庫の冷蔵設備のセンサーデータをAI分析することで、経時劣化や異常兆候を早期に発見し、IoTデバイスの予知保全を行います。
これにより、冷却トラブルによる温度逸脱ゼロを目指せます。
トレーサビリティのブロックチェーン化
温度・ロット・輸送記録をブロックチェーンに記録し、改ざん不可能な形で 製造・物流全体を可視化する動きが進んでいます。
食品偽装や輸送事故などが万一発生しても、迅速に原因特定と対応が取れます。
多様なアライアンスと共創
物流企業、資材ベンダー、ITベンダー、製造業、バイヤー企業が壁を越えて協業し、全体最適化を目指すのが新潮流です。
単独対応ではなく、「共創型コールドチェーン」が今後の競争優位を左右します。
まとめ:現場と国際規格、そして未来へ
コールドチェーンの国際規格対応は、一見、書類や仕組みに振り回される「面倒事」に見えるかもしれません。
しかし、グローバル経済下では、これが新たな「信頼」「安心」の基盤となっています。
昭和・平成の現場力に、現代のIT・データ・国際規格を融合させることで、日本のものづくりは次の飛躍が可能です。
バイヤー・サプライヤー双方が歩み寄り、最終消費者の「安心・品質」を支える仕組みを、本気で作り上げることこそが今後の製造業の競争力向上につながります。
ぜひ現場の皆様も、知恵と工夫、先端技術と現場の声を掛け合わせて、「明日の製造現場」を共に築いていきましょう。
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