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原産地規則対応で特恵関税を最大活用し着地コストを削減するEPA運用術

目次
原産地規則対応で特恵関税を最大活用し着地コストを削減するEPA運用術
EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の推進によって、製造業の国際取引は大きな転換点を迎えています。
中でも「原産地規則」の正確な理解と、特恵関税をフル活用したEPA運用は、着地コストを大きく圧縮し、企業競争力を飛躍的に高める鍵となります。
この記事では、製造現場のリアルな知見、昭和型のアナログ体質から脱却できない現状、そして最前線で活躍するバイヤーやサプライヤーの視点も盛り込み、現場に根差した「利益直結型EPA運用術」を徹底解説します。
EPA・原産地規則とは何か?現場目線で再定義する
なぜ今、EPA・FTAが重要視されているのか
従来、日本の製造業現場では「通関・関税=専門部署にお任せ」と考えられることが多くありました。
しかし近年、グローバル化や円安、エネルギーコスト高の中で「着地コスト=川下顧客への競争力」を突き詰めるには、EPAやFTAの活用が必須です。
EPAやFTAを活用すれば、協定締結国同士での貿易時に「特恵関税率(ゼロもしくは大幅減税)」が適用できるため、総コストの圧縮効果は絶大です。
その一方、協定ごとに異なる「原産地規則」という壁に直面し、正確な運用が伴わなければ特恵適用の権利を失う、また最悪の場合ペナルティや遡及金発生というリスクもはらんでいます。
原産地規則とは?現場の実感としての「難解さ」
EPAで設定される「原産地規則」は、製品が本当に協定締結国で生み出されたか、加工されたかを証明するためのルールです。
この内容は、「十分な加工」や「付加価値率」、「関税分類の変更(CTCルール)」など、かなり分かりにくく複雑です。
バイヤー・購買だけでなく、現場の生産管理や品質管理担当が書類作成に深く関わる場合も多く、十分な知見が組織内に蓄積されていないと「取得不可」「時機逸失」になりがちです。
昭和型の組織では、原材料の仕入れや生産工程の複雑化(多国籍サプライチェーン)などが進んでも、業務分掌や情報の属人化が根強く、原産地証明取得のハードルが残り続けています。
着地コスト削減の近道―“バイヤー的発想”からの全体最適
バイヤーは何を見ているか?コスト構造の解体から始まるEPA活用
バイヤーの本音は「納入価格の安さ」だけではありません。
今やグローバルサプライチェーンの組み立て、その中での通関コスト・物流コスト・リードタイム短縮など、すべてを総合した「着地コストの最小化」です。
EPA特恵適用で大事なのは、単なる輸入時の税率減だけでなく
・特恵を獲得できる部材の調達先選定
・原産地規則に基づいた生産工程の再設計
・書類管理・事務手続きの効率化
・突発的な税務調査や追加資料要求に備えた証跡管理
これらをサプライヤーといかに二人三脚でクリアしていくかです。
サプライヤーの立場で“バイヤー思考”を持つメリット
多くのサプライヤー現場では「バイヤーが何を考えて特恵関税を求めているのか?」がブラックボックスです。
しかし、EPA特恵を獲得・維持できないと、長期的に競争力のある購買先として選ばれなくなるリスクが高まります。
・輸入時に発生する関税率の差額(例:5%→0%)は早期の原価計画やベンチマークに大きな影響を与えます。
・調達購買側が“EPA対応可能か”を重視する流れは年々強まっており、原産地規則・書類作成体制の有無が取引先選定を左右する重要な要素です。
・サプライヤー自身が「自社や協力会社の工程・部材レベルでEPA対応支援できる」体制を強化することで、バイヤーにとって不可欠なパートナーとなり、新規取引や価格交渉においても有利な立場を獲得できます。
アナログ現場でも使える!EPA運用の実践ステップ
STEP1:自社のサプライチェーンの“棚卸し”から始める
まず重要なのは、「自社がEPA活用で適用可能な品目は何か?」を正確に把握することです。
部材一つひとつの原産地や、組立工程で発生する加工度(付加価値)をリスト化し、協定ごとのルールに対する適合可否を“見える化”します。
現場目線でのヒントは
・BOM(部品表)や仕入伝票から原材料の国別比率を算出
・“グレーゾーン”工程やサブ契約先の国名・加工内容を詳細チェック
・どうしても原産地規則に不安が残る場合は、地場材料や現地工程への切替検討
「原産地規則の落とし穴」を事前に潰しておき、特恵対象外リスクを減らします。
STEP2:“紙証明”から“デジタル証跡”への発想転換
昭和型アナログ工場では、原産地証明に使うデータが「紙での伝票・製造指図書・納品書」などバラバラに保管されがちです。
昨今は、RPAやOCRを活用し「EPA用データ統合管理」を進める中小工場も増えています。
例えば
・原産地証明のための材料入荷ロット・工程記録を、一元化システムで管理
・エクセルやクラウドで取引証明・サプライヤー宣誓書をデジタル保存
・システムに弱い現場ほど、最初は“紙+PDF”の二本立てでも十分
少しずつ情報の「属人化」から脱却し、いつ“調査(照会)”が入っても全社で対応できる仕組みをつくりましょう。
STEP3:現場・購買・事務担当の“すり合わせ文化”構築
EPA手続きは、購買担当だけでなく製造・品質・経理と横断的な連携が不可欠です。
現場実務では「証明書取得のための締切遅れ」や「書類の不整合」「用語の理解不足」が特恵関税適用の足かせになります。
有効なのは
・月1回の“EPA業務ミーティング”で調達~生産~輸出までの進捗と課題を共有
・事例共有や勉強会で現場の疑問点を即解決し、ノウハウ蓄積
・サプライヤーを巻き込んで「協力会社EPA勉強会」も実施
「紙を右から左へ渡す」だけの仕事から一歩抜け出し、“コスト削減の新たな地平”を自分たちで切り開く姿勢が求められます。
未来志向のEPA活用戦略――昭和からの脱却と現場イノベーション
EPA推進=日本製造業のグローバル競争力強化
日本の多くの製造業では、「川下顧客=海外進出日系企業」の拡大を受け、原材料~部品~製品の多層的なサプライチェーン構築が進んでいます。
この中でEPA・FTAの特恵を“とりっぱぐれ”なく獲得できる組織体制、現場知見の蓄積が、競合との差別化に直結します。
現場でよくある課題は
・アナログ伝票依存から進化できない
・協力会社・多国籍サプライヤーの“協力拒否”
・担当不在・情報不足で「最適解」が分からない
しかし、こうした課題こそ「イノベーションの種」。
シンプルなデジタルツールやチーム横断の連携で、着地コストの限界突破=粗利の最大化が見えてきます。
ラテラルシンキングで切り拓く“メイド・イン・日本”の未来
EPA活用は「経理や貿易部門だけの特殊作業」ではありません。
現場発のアイデアや改善活動――たとえば「製造工程で現地加工度を高める」「サプライヤーと一括で証明書発行体制を回す」「部品共通化で複数EPAに適格化する」など――
積極的にラテラルシンキングを発動し、“できない理由”を“できる仕組み”に転換することが成長への近道です。
この努力とイノベーションが、グローバル時代で生き残るバイヤー・サプライヤーの「新たな地平」を切り拓きます。
まとめ:原産地規則・EPAの“本質的活用”で切り拓く現場改革
バイヤー・サプライヤー・生産現場…それぞれの立場でEPAと向き合うことで、単なる「手続き」から「利益創出の原動力」へと昇華させることができます。
原産地規則対応は難解で手間も多く、アナログ業界の慣習も根強いですが、
・着地コスト削減による価格競争力向上
・現場イノベーションの種まき
・顧客・取引先との信頼関係構築
という三大効果をもたらします。
現場に根ざしたEPA運用術を武器に、日本製造業の競争力はまだまだ進化の余地があります。この機会に、自社のEPA・原産地規則対応を“現場主導”で再設計し、新たな価値創出の一歩を踏み出しましょう。
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