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品質異常の再発防止策を提出しないサプライヤーへの不信感

目次
はじめに:サプライヤーとの信頼関係と品質管理の重要性
製造業の現場では、サプライヤーとの強固な信頼関係が求められます。
特に原材料や部品の品質が製品の出来栄えを左右するため、調達購買部門や工場現場ではサプライヤー管理に大きな力を注いでいます。
しかし、品質異常が発生した際、サプライヤーが適切な再発防止策を提出しないケースに直面した経験を持つ方も多いでしょう。
こうした事態はサプライヤーへの不信感を助長し、長期的な取引関係の維持を危うくします。
この記事では、サプライヤーが再発防止策を提出しない場合の現場で生じる課題や、なぜ昭和から続くアナログな商習慣が背景に残るのか、また、それでも現場として何に目を向け、どんなアプローチが有効なのかを現場目線で考察します。
品質異常の再発防止策とは何か
製造業における品質異常の定義とその深刻さ
製造業の現場では、受入検査や工程内検査の段階で「品質異常」に遭遇することは避けられません。
異常とは、規格外品や不適合品の発生、工程のばらつき、製品安全上のリスクなど、多岐にわたります。
これらの異常は、納入先への納期遅延や市場クレームを引き起こし、自社製品のブランド価値毀損や取引停止といった深刻な影響を及ぼします。
なぜ再発防止策が求められるのか
品質異常が発生した際、原因究明(なぜなぜ分析)とともに必ず求められるのが、「どうしたら同じことを繰り返さないか」を明文化した再発防止策です。
これがなければ、同様の異常が再発してしまう懸念が拭えません。
調達部門や生産管理部門は、サプライヤーに再発防止策を強く要求しますが、「検査を強化します」など曖昧な内容や、そもそも提出すらされないケースも後を絶ちません。
なぜ再発防止策をサプライヤーが提出しないのか
昭和的体質が残るアナログ業界ならではの背景
長年の取引で培われた「なあなあ」の関係、形式的な文書主義、「うちと取引したければ従え」という上下関係…。
製造業、とくに中小規模のサプライヤー側には、こうした昭和から続く商慣習が色濃く残っています。
書類提出や手順の文書化に慣れておらず、「現場で注意しておきます」「次は気をつけます」で済ませてしまう意識が根強く存在します。
担当者が高齢化し、デジタル化やIATF/ISOといった国際基準の導入が進まないことも影響しています。
品質管理リテラシー・スキルの不足
一方で、そもそも「なぜ再発防止策の書面化が求められるのか」「工程のどこに根本原因があるのか」をサプライヤー側が論理的に把握できていないことも多いです。
原因究明のノウハウや手法(FMEA、なぜなぜ分析、QC7つ道具など)が確立できていなければ、どのように再発防止策を策定すればいいか分からず、結果として「対応困難」となりがちです。
業界全体の「お客様主義」と発注者側にも課題
また、実は発注者側=バイヤー企業にも原因があります。
「再発防止策が内容として妥当か?」を吟味しないまま形式的に受領したり、毎回同じ文言でも「提出してくれたから」と深堀りや現場監査を行わないケースも少なくありません。
こうして「どうせ適当に書けばいい」「形だけのやりとり」で済ます文化が温存されてしまうのです。
現場で実際に起きる問題と、不信感が生まれる理由
調達購買・生産管理・品質管理それぞれの立場で生じる課題
サプライヤーが再発防止策を出さない場合、調達購買部門は先方に繰り返し提出を督促する手間が生じます。
生産管理部門は入庫部品の品質に不安を覚え、最悪の場合、工程ストップや再検査コストが嵩みます。
品質管理部門に至っては、「良品の保証は大丈夫か?」「顧客先への説明責任は果たせるのか?」とプレッシャーが高まります。
現場では「また同じ不具合が来た」「例のあのサプライヤーだけは信用できない」という声も挙がり、特定サプライヤーへの依存リスクや少数精鋭化、見直し要求につながることもあります。
この「信頼できない」という空気は、やがて取引縮小や他社への切替検討に発展します。
バイヤーから見た“本音”と“ジレンマ”
バイヤーの立場では「いずれ価格交渉や契約更改時の交渉材料になる」「本気で改善しないサプライヤーは取引リストから外したい」と考える一方、長年の付き合いの中で「ここしか作れない品番がある」「急には切り替えられない」と葛藤が生じます。
多くの企業が“コスト削減と品質保証”の板挟みになっている現実があります。
実践的なアプローチ:どうすればサプライヤーの意識を変えられるか
トップダウンの重要性と、現場支援のバランス
まず重要なのは、サプライヤーの経営層や工場長レベルに「品質管理と提出書類の重要性」を認識してもらうことです。
現場担当者へのみ要求しても「現場が大変なので…」の一言でうやむやになります。
経営トップや幹部を巻き込んだ品質会議や現場監査を年1回設けることで、品質マネジメントの“逃げられない仕組み”を作ることが効果的です。
また、「どう書けばいいか分からない」といった現場には、「指導型監査(ガイダンス型監査)」やQCサークル活動、教育資料の提供、フォーマット添付などで“手を取って教える”支援が欠かせません。
生産現場の「こういう現象があった時は、ここまで記載しよう」「なぜなぜ分析を一緒にやってみよう」と寄り添うことが、サプライヤーの現場改善やリテラシー向上につながります。
デジタル活用・仕組み化による抜本的改善
昭和的な“紙文化”から脱却するため、データベース化やWebフォームでの提出/承認フロー、AI補助によるなぜなぜ分析の一部自動化などを進める企業も増えています。
品質管理システム(QMS)と連携した“見える化”、“未提出に対するアラート機能”も有効です。
「申請しなければ納品できない」「自社で標準フォーマットに入力しないと取引更新できない」といった“仕組みの強化”が再発防止策定と提出の定着に結びつきます。
「信頼」に基づいたパートナーシップの再定義
何より重要なのは「お互いのために」「最終的な顧客満足のために」という“信頼”がベースにあることです。
単なる下請けではなく、サプライチェーン全体でWin-Winを目指す姿勢が「ちゃんとした再発防止策を出そう」という文化を醸成します。
バイヤーが「一方的に管理する」という姿勢ではなく「一緒に改善する仲間」「ともに成長するビジネスパートナー」と位置づけ、「今回の異常がどうしたら次に活かせるか」を定期的にテーマ化することが、サプライヤーの意識改革に大きく貢献します。
サプライヤーの立場で考える:なぜ提出が難しいのかと解決策
現場環境の多忙さ・リソース不足という現実
中小サプライヤーの多くは、日々の製造業務と納期対応に追われる傍ら、「社内には品質管理の専門家がいない」「まとまった時間が取れない」という現実があります。
経験的な勘や習慣の中での対処が多く、書類作成への苦手意識も強いのです。
「書類ばかりで現場には人が足りていない」「こんなに手間ばかりかけさせて」という不満も根深いです。
どうしたら前向きに改善できるのか
解決策としては、自社の簡素な標準フォーマットを活用、提出内容については「根本原因・短期対策・長期対策・Y/Nで回答」を明確にしたテンプレート運用が有効です。
また、現場の声(例:「こんな不具合があったらどんな風に原因を調べたらいい?」など)をバイヤーに伝え、双方で常にコミュニケーションを取ることが重要です。
「どこまでなら自社できちんと対応可能か?」を率直に提案することが信頼維持の第一歩です。
まとめ:品質異常対応の本質とこれからの製造業のあるべき姿
サプライヤーが品質異常の再発防止策を提出しない場合、その裏側にはアナログな商慣習、リテラシー不足、リソース難、そして仕組みや支援の未整備といった、古くて新しい業界課題が隠れています。
不信感が生まれるのは、「相手の顔が見えず、説明責任が果たされない」ことへの不安の表れであり、これは製造業界全体で乗り越えるべき大きなテーマです。
今こそ、“監視と指導”の関係から“共創と共有”のパートナーシップにシフトし、デジタル×現場力×コミュニケーションの三位一体で品質文化を進化させるべきです。
バイヤーもサプライヤーも、現場の課題に正面から向き合い、新たな価値創造の地平線をともに開拓していきましょう。
それが、昭和を乗り越えた令和時代の新しい製造業の在り方です。
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