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重量超過・偏荷重での荷崩れ事故を防ぐラッシングとデバニングの標準

目次
はじめに:荷崩れ事故が及ぼす影響と、その現場のリアル
製造業の現場では製品の納期やコストだけでなく、安全に対する配慮も極めて重要となっています。
特に、物流工程で発生する「荷崩れ事故」は現場担当者だけでなく、バイヤーやサプライヤーにも大きな影響を与えます。
重量超過や偏荷重による荷崩れは、近年になってもなかなか根絶できないアナログな課題です。
昭和から続く現場の慣習や手抜き作業が原因となる一方で、熟練者の「カン」と職人的技能に依存してきたことも問題の根本にあります。
この課題を根本的に解決し、サプライチェーン全体の安全性を高めるためには、標準化されたラッシングとデバニングの運用ルールが不可欠です。
本記事では、現場視点でのリアルな課題から最新動向まで、荷崩れ事故を防ぐための実践的な標準について詳しく解説します。
荷崩れ事故の構造 – どこにリスクが潜んでいるのか
荷崩れ事故の根本的な原因
荷崩れ事故の根本原因として、重量超過、偏荷重、不適切なラッシング(貨物固定)が挙げられます。
現場では、フォークリフト運転手や作業リーダーの経験や「勘」に頼って積荷作業が行われることが未だ一般的です。
物流標準などを策定せず、不明確な状態で作業が進む企業も少なくありません。
また、納期重視が強調されるあまり、手戻りや是正にかける時間・コストが後回しになる現場もあります。
しかし、この意識の低さや現場任せの作業は、事故発生時に膨大な損害となって跳ね返ってきます。
事故発生時のインパクトとは
例えば、自動車部品のサプライヤーであれば、納品先ラインがストップするリスクを孕みます。
バイヤーの立場では「納期遅延・品質損失・信頼毀損」が一瞬で発生します。
重量物が崩落した場合、作業者の人的被害や近隣貨物の損傷、荷降ろし作業に伴う余計な工数増加も避けられません。
肝心の現場では「過去に事故になっていないから大丈夫」という危ない前提が根深く残っているのも現実です。
昭和から現代へ、現場のアナログ作業と意識の壁
経験則と「これまで通り」の落とし穴
製造業は本来、安全第一を掲げてはいるものの、その内実は現場任せになりがちです。
「この商品ならこれくらいで十分」「これまで荷崩れしたことはない」といった経験則で、根拠のない自己満足的な運用が常態化しています。
ラッシング資材にしても、使い古されたロープやストラップを「もったいない」と再利用したり、適正な張力管理がなされていないケースも目立ちます。
昭和世代の作業者が多い現場では、「あいつがやるから大丈夫」といった属人的な作業分担になっていることも珍しくありません。
デジタル化・自動化の遅れと意識改革の必要性
自動車やエレクトロニクスなどの先進的な工場では物流の自動化が進みつつありますが、多くの中小現場では紙ベースのチェックリストや口頭伝承に頼る実態があります。
AIやIoTで荷重分布やラッシング強度を「見える化」する技術は出てきましたが、現場浸透にはまだまだ時間がかかります。
こうしたデジタル技術を受け入れるには、まず現場リーダーや管理職が「安全への投資は利益を生む」という意識改革を自ら牽引する必要があります。
バイヤーの立場から見ても、そうしたサプライヤーを優先指名した方がリスクマネジメント上、有利になるでしょう。
ラッシングの標準 – 適正な固定と安全確保のポイント
ラッシングの正しい使い方とよくあるNG例
ラッシングとはコンテナやトラック内部で貨物やパレットをしっかり固定することです。
基本原則は「全体の荷重バランス」「貨物ごとの特性を考慮した固定」「磨耗した資材の交換」にあります。
例えば、積み荷がパレット積みされている場合、下層のパレットが重量超過で変形し、静かに荷崩れが進行することもあります。
ラッシング資材も、単に固定すれば良いというものではなく、
「ベルトの張力」
「荷物との接点状況」
「滑り止めシートの併用」などの細部に気を配らなければなりません。
よくある失敗例として、
・ロープが緩んでいて動荷重で隙間が生じる
・片側だけを重点的に締めてバランスを崩す
・複数列積みの間に隙間材がなく、積み荷同士が相互に干渉する
といったことが挙げられます。
重量超過と偏荷重への対応策
根本的には「積載前の重量測定と配分シミュレーション」が必須です。
コンテナやトラックへの積込時には、貨物ごとの重量、サイズ、中心位置を事前に確認し、積み方を計画する「ロードプランニング」を実施すると良いでしょう。
近年の大手メーカーでは「積付図」をCADや物流システムで自動作成する事例も増えています。
中小現場でもエクセルを応用し、積付計画を“見える化”するだけで大きな事故抑止効果があります。
また、重量物の集中的な積載を避けてバランス良く配置し、ときに軽量物や緩衝材を組み合わせて全体を安定させる工夫は重要です。
端材やすき間ポールのような安価な資材も活用すると安全性が格段に向上します。
デバニングの標準 – 荷降ろし時の落とし穴とその対策
デバニングに潜むリスクと現場の盲点
デバニング(コンテナ等から積荷を取り出す作業)でも、油断や作業の「慣れ」から荷崩れ事故が起こります。
特に、長距離輸送後の積荷は「見た目には崩れていなくても」運送途中の振動で内部応力が偏っています。
慎重な解放・取卸作業をせずにラッシングを一気に外すと、突如として荷物が雪崩のように崩れて事故に繋がる危険があります。
安全なデバニング作業の手順
まず、現場管理者がデバニング開始前に現状確認とリスクアセスメントを実施すべきです。
積荷の一部を慎重に傾けて隙間や荷重の変化を確認したり、必要ならば「先に仮止め用のロープを追加」した状態で荷崩れを防止します。
複数人で声を掛け合い、「誰が何を操作するか」「荷物が動く可能性がある場所には誰も入らない」といったルールを徹底します。
搬出順番も、順番を誤って「重い荷物で全体が崩れる」ケースを回避できるポイントです。
現場目線で考える標準化プロセス – 継続できる体制作り
現場発のルールづくりと「なじむ」工夫
どんなに優れたマニュアルを作っても「運用し続けること」が一番難しい課題と言えます。
そのためには「現場の作業者が主体的に議論しながら標準を作成・見直す」ことが肝要です。
現場リーダーは毎日の朝礼や作業終了時に、気づいた点を即時フィードバックし、小さな改善を重ねていきましょう。
バイヤー側の管理職は、単なるコストや品質のみでなく「安全対策・標準運用を重視しているサプライヤー」を積極的に評価する視点を持つべきです。
トヨタ生産方式に学ぶ「見える化」と安全文化の醸成
トヨタ生産方式(TPS)では安全対策も“異常の見える化”を重視します。
ラッシング資材の色分け管理や、毎回チェックシートの使用、積荷写真の記録などをルーチンにすると、不備発見や標準逸脱の早期是正につながります。
また、定期的な教育や「ヒヤリハット」の共有も、現場全体の意識を変えるカギです。
事故未遂事例や「危なかった話」をオープンに話せる現場は、事故発生率も低くなります。
まとめ:バイヤー・サプライヤー双方から見た最強のリスク管理
重量超過・偏荷重による荷崩れ事故は、決して過去のものでも例外でもありません。
荷主もバイヤーもサプライヤーも、それぞれの立場で「目の前の安全」を変えていくことができます。
ラッシング・デバニングの標準を“紙に書いただけ”“マニュアルがあるだけ”で終わらせることなく、「実際にやり続ける」サイクルを継続しましょう。
現場の知見を活かしたルール作りと、双方のフィードバックをもとにしたパートナーシップこそが、真のリスク管理・事故防止に繋がる最短ルートです。
製造業に関わるすべての方が「安全と信頼」を最優先に考え、荷崩れゼロの現場を現実のものにしていきましょう。
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