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調達購買と設計が同じダッシュボードを見る共通指標設計と運用

目次
はじめに:なぜ調達購買と設計は共通指標が必要なのか
昭和のものづくり現場といえば、「隣の部署で何をしているのか分からない」という壁が当たり前でした。
特に調達購買と設計は、業務内容が大きく異なるうえ、お互いの指標やKPIも独立して設定されがちです。
納期遅延やコスト超過、品質トラブルが起きて初めて相互連携の重要性が認識される――そんな現場を何度も目にしてきました。
しかし、デジタル技術の進展、グローバル競争の激化を受けて、設計―調達の分断はもはや許されるものではありません。
今や両部門が同じ「ダッシュボード」を見て共通の目的を追求することが、競争力の源泉といえる時代に突入しました。
本記事では、調達購買と設計が共通指標を設計・運用し、ダッシュボードを活用する意義や代表的な指標、導入の課題と展望について、現場目線で具体的に解説します。
共通指標が生み出すシナジー:サプライチェーン全体最適への第一歩
部分最適から全体最適へ:業務の壁を超える施策の必然性
たとえば「設計が指定した部品をより安価に、より確実に調達せよ」というのが調達部門の大命題です。
一方、設計側は「品質を落とさず、早く形にし、市場に新価値を提供する」ことが使命です。
それぞれ独立した成果を追い求めるあまり、設計は部品スペックを過剰設定し、調達はコストダウンだけを求めて品質リスクの高いサプライヤーを選ぶ、という“すれ違い”が数多く発生してきました。
この分断をなくし、お互いが同じアウトカムを目指せるように共通ダッシュボードを持つことで、“サプライチェーン全体最適”=最短納期・最適コスト・最高品質を同時に達成する土壌が生まれます。
組織KPIと現場KPIの違いをどう埋めるか
組織KPI(いわゆる経営指標)は売上や利益率、CO2排出量や納期遵守率など広範なもの。
一方、現場KPIは一部品の原価、設計リードタイム、図面修正件数や発注レスポンスタイムなど具体的です。
このギャップを埋め、両部門が“同じ言語”で状況認識できる指標設計が、プロジェクト成功の鍵を握ります。
ダッシュボードに載せるべき代表的な共通指標とは?
1.設計変更対応リードタイム
部品設計の変更依頼から調達先決定・部品納入までの総リードタイム。
設計と調達両方の努力値が反映されやすいリアルな指標です。
2.コスト目標進捗率(ターゲットコスト達成度)
製品・部品ごとに設計原価と調達実績コストを紐付けて集計。
「設計が理論的コストダウン策をうち、調達が実現する」一体感をダッシュボードで可視化できます。
3.不具合件数・品質トラブル再発率
初期立ち上げ~量産まで、設計品質・調達品質を共に評価。
バラツキの多い不具合情報を共有し、「責任のなすり合い」を防げます。
4.CO2排出量・環境インパクト指標
グローバルサプライ企業ではScope3対応が避けられません。
設計段階からサプライヤー選定時まで、環境負荷の透明化を狙います。
5.納期遵守率・緊急手配件数
「QCDすべての出発点は納期にある」と言われます。
設計遅延、調達遅延が上流下流でどのように伝搬するか、数字で共有します。
共通指標運用の3STEP:失敗しないための導入シナリオ
STEP1:現場ヒアリングで“お互いの痛み”を言語化
机上の理論ではなく、設計・調達現場が日々感じているボトルネックをリストアップします。
「なぜ設計変更が調達に伝わらないのか」「調達先がなぜ想定外のコスト高になるのか」など、両者の不満をテーブルに持ち寄ることが最大のスタートです。
STEP2:既存データの見える化&クレンジング
ダッシュボードで共通指標を見せるには、“積み重ねてきたデータ”の整備が欠かせません。
部門ごとにバラバラな管理体系、手書き台帳やFAX伝票の混在。
ここを抜本的に見直し、「現場が本当に使いたい情報だけ」を精選し、指標候補を絞り込みます。
いきなり100項目では失敗します。
“現場が見れば動ける、変われる”5~10項目に限定しましょう。
STEP3:毎日のオペレーションに定着させる
共通ダッシュボードは「作って終わり」では意味がありません。
毎朝の打ち合わせや在庫会議の冒頭で“指標グラフ”を必ず表示し、現場の話題の中心に据えます。
現場のリーダーや工場長が日々口にすることで、自然と行動管理が指標起点になります。
さらに、評価制度や表彰制度にも“共通指標の達成度”を組み込み、「自部門が良ければいい」から一段上の連携文化を定着させましょう。
現実的な壁とアナログ業界の抵抗感
レガシー文化が根強く残る製造業のリアル
「そんなダッシュボード作ったって、うちの現場は動かんよ」
「ウチはウチ、ヨソはヨソ。設計が余計な口出しするな」
こういった声が、昭和流の現場では今も根強いです。
理由は、長年の属人的なノウハウに加え、“可視化されることへの潜在的な不安や抵抗感”が大きいからです。
ベテラン担当者ほど「数字で評価される」ことを嫌がります。
ITリテラシー・現場負担の問題
最新のダッシュボードツールは直感的に操作しやすい反面、「毎日の入力が増える」「余計な管理負荷が増す」という現場の声も無視できません。
この“デジタル化のマイナス感情”を放置したままでは、導入が形骸化します。
上層部の本気度と運用推進者の重要性
共通指標運用の成否は、現場リーダー・管理者の本気度に直結します。
「これくらいでいいだろう」と思うか、「絶対に形にする」と思うかで、ダッシュボード上の数字が実態を示すものになるか、単なる“報告用”になるかが分かれます。
そして、運用を日々チェック・改善できる“推進リーダー”の役割も非常に大きくなります。
バイヤー目線・サプライヤー目線 それぞれに与えるインパクト
バイヤー(調達担当)目線
すべての購買担当者に共通する課題は、「設計とどうすれば納得のいくQCD最適案を出せるか」です。
共通指標ダッシュボードを使いこなすことで、「設計主導でコストアップした案件」「サプライヤ選定に要したリードタイム」など可視化による根拠ある交渉が可能になります。
部門間のブラックボックスをなくし、お互いが“見える化”できれば、バイヤー業務そのものの生産性が劇的に向上します。
サプライヤー(供給者)目線
実際に部品・加工品を納入するサプライヤーにとっても、バイヤー側の指標が事前に分かれば提案の仕方や納期交渉の戦略を練りやすくなります。
例えば、「設計変更提案を歓迎する文化」「環境負荷低減の優先順位が高い」などダッシュボードから方針を読み取れば、“単なる価格競争”から“パートナーシップ提案”へ大きく転換できます。
共通指標運用の未来:製造業DXの本丸へ
共通指標ダッシュボードをきっかけに、部門横断型のイノベーションが日常的に生まれやすくなります。
設計~調達~生産~品質~物流を統合した「デジタルツイン」構想にも、ダッシュボードが核となります。
現場から見れば面倒でも、「見える化=あらゆる無駄の壁を壊す」魔法のツール。
特に人手不足・高齢化に悩む製造現場では、共通指標の運用が“負担”でなく“強み”になる日が、必ずやってきます。
まとめ:昭和からDX時代へ。製造業を変えるのは、現場の“可視化×共創”
調達購買と設計が同じダッシュボードを見て共通指標を運用する――
それは単なるシステム導入ではなく、各部門の論理を統一し、現場の協力体制を根本から変える本質的な改革です。
現場の“肌感覚”を徹底的に尊重しつつ、着実な一歩から始めましょう。
データで壁を壊し、人で協力し合い、新しい時代の日本のものづくりを強くしていきましょう。
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