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作業姿勢の人間工学評価で疲労起因不良を抑え品質費用を低減

目次
はじめに:製造業の現場力と人間工学の重要性
製造業の競争力を左右する大きな要素の一つが、現場の生産効率と品質です。
その裏には現場で働く人々の作業姿勢や動線、そして作業時に感じる負担が大きく影響しています。
とくに、多くの製造現場では作業員による疲労が、不良品の発生や作業ミス・さらには人為的な事故を招くことが少なくありません。
このような時代背景や業界課題を踏まえ、近年注目されているのが「人間工学(エルゴノミクス)」による作業姿勢評価と、その改善です。
人間工学は単なる安全対策にとどまらず、品質不良やムダな品質コストを抑制し、工場全体のパフォーマンスを底上げする非常に有効な手段です。
本記事では、現場目線で見る人間工学評価の実践ポイントや、昭和的なアナログ現場でも導入しやすい方法、さらにはバイヤーとサプライヤーの両方の視点から見た効果についても掘り下げていきます。
現場で起こる「疲労起因不良」とは何か
疲労がもたらす不良・品質問題
製造現場の不良の要因を紐解くと、熟練者であっても単純な「手ミス」や「見落とし」から発生することが多く、その背景には“作業者の疲労”が潜んでいる場合が少なくありません。
例えば、下記のような事象が日常的に起きています。
– 体勢がつらい部位での繰り返し作業による集中力低下
– 無理な持ち上げや姿勢での作業による一時的な筋力低下
– 腰や肩への慢性的な負荷による判断ミス
特に、不良品の発生だけでなく、連続不良や異常停止などの「高コストリスク」として顕在化するため、要因分析をすると「人間の疲労」が根本原因と特定されるケースが多いのです。
アナログ的現場で根強い旧態依然の作業慣習
「ウチは昔からこのやり方でうまくまわっている」
この昭和時代からの“暗黙のルール”が、現代の製造現場にも色濃く残っています。
現場の工夫や職人技そのものは誇るべき文化ですが、一方で合理的な改善を妨げている側面も否定できません。
多くの現場では、“人のガマン”によって無理やり工程が回っている場面も数多く見られます。
しかし、繁忙期や人員の入れ替え、要求品質の高度化により、その“ガマン”の限界が品質トラブルという形で現れるのです。
人間工学評価の基本:どこを見て、何を変えるべきか
MOE法やRULA法など工学的アプローチの活用
人間工学の作業姿勢評価には、国際的に標準化された手法が存在します。
例えば「MOE法」「RULA法」「OWAS法」といった評価指標は、作業時の姿勢や身体部位への負担度を定量的にスコア化できます。
こうした方法では以下の観点で評価を行います。
– 腰部の曲げ角度やねじり・反復回数
– 腕・手首・膝など特定部位への負荷
– 動作の持続時間や繰り返し頻度
– 根本的な作業レイアウトや可搬重量
評価結果を分析することで、体に無理のかかった動作や、即・長期的にケガや疲労要因となる動作工程を特定し、改善につなげられます。
現場ヒアリングと映像分析を組み合わせる
人間工学的評価は“数字やスコアの導入”がハードルだと思われがちですが、現場主導でできる簡易的な糸口もあります。
それは「作業者自身のヒアリング」と「作業工程のビデオ撮影・観察」です。
例えば作業者が「ここが痛い」「ここだけ異様に疲れる」と語るポイントは、ほぼ例外なく工程の設計ミスやIoT化しきれていない部分です。
ビデオでその動作を振り返ることで、リーダーや担当設計者、管理職の方も客観的に問題点を把握できます。
こうした“小さな気づき”を積み重ねることで、大きな現場改善の流れに変えることが可能です。
実践的な現場改善と具体的なアプローチ
基礎は「高さ合わせ」と「重量バランス」から
どのような現場でも、下記2点を見直すだけで不良と疲労は大幅に減ります。
– 作業台(机・棚・設備)の高さを作業者の身長や工程内容に合わせる
– 定置器具の配置や材料供給位置を変更し、無駄な動線・移動を削減する
これらは「コストをかけずに、すぐ始められる」改善です。
私の経験上、こうした単純設計の見直しで、腰や背中の痛み訴えが激減し、作業速度や不良削減の好効果が如実に現れます。
重量物「持たせない」「運ばせない」の徹底
現場の改善は時に「ちょっと重量物もそのまま持たせよう」と妥協しがちですが、ここにメスを入れる覚悟が大切です。
– リフターや台車の活用
– 「持つ」から「滑らせる」に工程変換
– 積載制限(上限5kgなど)ルール徹底
一時的な投資はかかりますが、中長期的には人的ミスやけがによる損失防止、生産維持の鍵になります。
インターバル導入と「小休止セル」の設置
無理な作業姿勢が続くと、筋疲労にとどまらず集中力が持続せず、微細な不良や検査抜けが増えます。
工程内にインターバル、小休止やストレッチ可能な「待機セル」を導入し、リズムよく作業できる仕組みも効果的です。
休憩は“ムダなコスト”ではなく、高品質を低コストで維持するための戦略的投資なのです。
デジタル化との融合で「現場の見える化」を実現する
IoT機器・センサーによる負荷計測の導入
最近の先端工場では、動作解析センサーやスマートウォッチなどのIoTツールを導入して、客観的なデータとして「異常姿勢」や「疲労兆候」を自動記録する例も増えています。
– 作業姿勢データのリアルタイム記録
– 各作業プロセスでの滞在時間や反復回数の分析
– “疲れやすい工程”のプロファイル作成
こうしたデータは、従来の現場経験則と組み合わせることで改善点の根拠や経営層への説明にもつながり、さらなる改善サイクルを呼び込みます。
アナログ現場でもできる「作業分析表」「負荷地図」
「どうしてもデジタルは苦手」「予算がない…」という現場も多いでしょう。
その場合は、シンプルな作業分析表(手書きOK)や、現場の「疲労地図」をつくって自主点検する方法から始めるのが効果的です。
例えば、「工程ごとの疲労度・不具合発生傾向」をレイアウト図に色分けして見える化すれば、関係者の“納得感”が格段に上がります。
バイヤー・サプライヤー視点:人間工学の訴求ポイント
品質コストの低減がパートナーシップ強化につながる
バイヤー(調達担当)は「安く、速く、安定して良品を確保する」ことが最大のミッションです。
そのため、現場の「ヒューマンエラーによる不良=品質コスト増」が、最も回避したいリスクです。
サプライヤーの立場では、「人間工学による作業改善」や「定量的な不良低減」の成果は、品質保証性や納期遵守力のアピールポイントとなります。
「当社は疲労起因不良を○%削減し、安定供給体制を実現しています」と、具体データで示せることは大きな強みです。
交渉力と信頼構築にも直結するので、トップ営業戦略のネタとしても重宝します。
ESG・SDGs対応としても注目度アップ
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)視点での「働きやすい現場づくり」も、取り引き企業の評価軸になっています。
人間工学の取り組みは、作業者の健康・労働安全という社会的意義も訴求でき、長期的なパートナーシップ構築に非常に有効です。
まとめ:人間工学評価は、品質とコストの両輪改善に直結する
製造現場において「人間工学評価による作業姿勢の最適化」は、疲労起因不良の低減だけでなく、品質コストの根本的な削減、さらには現場従業員のエンゲージメント向上につながります。
最新技術の導入が難しい現場であっても、ちょっとした観察や現場談義・簡易的な道具の工夫から始めることで、大きな成果を生み出せます。
それが結果的に「攻めの品質経営」や「安定調達・信頼獲得」につながり、事業成長の新たな地平線を開拓する一歩となります。
まずは今の現場で、身近な工程や作業姿勢を観察し、「本当に無理をしている部分はどこなのか?」を洗い出すところから始めてみてください。
きっと、これまで見えなかった品質やコストの改善余地が自分の目で発見できるはずです。
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