投稿日:2025年9月3日

代替部品使用が未承認で発覚した際のクレーム対応と再発防止策

はじめに:製造業の現場で頻発する「代替部品」問題

サプライチェーンの混乱や原材料価格の高騰、納期短縮へのプレッシャーなど、現代の製造業を取り巻く環境は日々変化しています。

そのなかで、「代替部品」の使用が現場でもますます増えています。

しかし、未承認の代替部品が使用され、出荷後に顧客からクレームが入る――。
これは、製造現場や調達、品質管理部門を悩ませる大きな問題です。

現場は納期とコストの狭間で苦しみながらも、お客様の信頼を損なわない対応と原因究明、再発防止策の策定が強く求められています。

ここでは、
・現場目線での実践的なクレーム対応方法
・なぜ未承認の代替部品使用が起きるのか、その背景
・昭和から続くアナログ体質がもたらす課題
・再発防止に本当に役立つ具体策

これらを、“ラテラルシンキング”の視点も交えながら深掘りしていきます。

未承認代替部品が発覚したときのクレーム対応フロー

初動対応のポイント ―「品質」と「誠意」が命

まず重要なのは、顧客からの指摘・クレームを受けた際に、「事実確認」と「初動報告」を誠実かつ迅速に行うことです。

具体的な流れは次の通りです。

1. 担当者が顧客の申し出を丁寧にヒアリングし、使用部品のロット・型番・使用目的・納入時期を即座に確認します。

2. 製造記録、購買履歴(部品の受入記録や変更承認記録)を調査し、どこで未承認の代替部品使用がなされたかを特定します。

3. 初報として「いつ」「どのロット」で「どんな部品の置き換え」が起きたのか、事実ベースで顧客へ簡潔に伝えます。
このとき、推測や曖昧な情報は基本的に伝えない方が賢明です。

4. 社内の品質保証・生産責任者と連携し、「該当部品が当該製品の性能・安全・環境に与える影響」を迅速に評価します。

5. 重大な安全性や法規制違反のリスクがあれば、リコールなど速やかな回収を検討します。
もし大きなリスクがないと判断できる場合でも、後述の「再発防止策」を必ず明示しましょう。

現場リーダーが実践すべき「謝罪」と「説明」の仕方

クレーム対応においては、単なる謝罪では信頼回復できません。

「なぜ未承認の部品を使ったのか?」
「なぜ気付かなかったのか?」
「なぜ防げなかったのか?」

これら一つひとつに納得感ある“事実ベース&メカニズム”で説明する。
加えて、“お客様の立場でどんな不安があるか”を先回りしてケアする。

具体的には、

・「関係部門間の合意形成プロセスの不備があった」
・「調達先の納期遅延に対し、現場判断で代替を進めてしまった」
・「承認手順⇔現場オペレーション間の連絡ミスがあった」
という因果関係と組織の背景まで説明できると、お客様も理解を示してくれる場合が多いです。

どんなに小さなトラブルも他人事にせず、「全社的な問題意識」として捉え、再発防止に全力を尽くす姿勢を示す。
これが現場経験豊富な管理職こそが示すべき誠意の一つです。

サプライヤー企業からバイヤー企業へ…立場逆転視点も忘れずに

自社がサプライヤーとしてクレーム対応をする場合も、お客様(バイヤー)が求める視点をしっかり意識しましょう。

たとえば、バイヤー担当者は社内で上司やエンドユーザーへの説明責任を負っています。
「あなたの言い訳=相手担当者のトラブル説明材料」という現実です。

だからこそ、「代替部品を使った理由」「起点となった課題」「再発の抑止策」を、
“バイヤー担当者が社内説明しやすい形”でアウトプットすることが、自社の信頼と継続受注につながります。

なぜ現場で「未承認代替部品」が発生するのか?

アナログ志向から生まれる「現場任せ」と「伝言ゲーム」

多くの製造業の現場では、
・設計、調達、生産技術、現場作業員が縦割り
・変更手順やルールは存在しているが現場で守られていない
・デジタル化が遅れていて情報共有が紙・電話・口頭中心

こうした昭和的なアナログ志向が今なお強く残る企業が少なくありません。

特に「現場判断による応急措置」「担当者不在時の口頭指示」「伝票の手書き修正」などは、部品管理ルールを崩す大きな要因です。

現場の「納期最優先」は善意ですが、部品変更のリスク評価や顧客承認フローが徹底されず、変更事実が購買・設計に伝わらない“伝言ゲーム化”が頻発します。

ベテラン作業者による“暗黙知”の運用

例えば、A部品の納期が間に合わず「昔から似たB部品で大丈夫」と経験的に判断し、正規手順を飛ばして現場実装するパターンも多いです。

このような「経験則×職人技」には敬意を払いつつも、
設計変更の意図や承認ルールを全員が理解し直す必要があります。

サプライチェーン多層化による“盲点”とリスク分散の失敗

海外調達や複数社購買の普及により、部品ソースや承認範囲が把握しづらくなっています。

サプライヤー側で「部品在庫切れ、でも似たものなら…」と未承認品を納入。
それが自社で見抜けず出荷してしまう、といったリスクも年々高まっています。

再発防止に向けた実践的アプローチ

「人」頼みから「仕組み」へ ― 権限と情報共有でミスを減らす

再発防止の基本は、「ヒューマンエラーを前提としたシステム作り」です。

・部品変更管理(ECO,ECN)システムの電子化
・現場作業員でもワンクリックで変更履歴を閲覧可能に
・代替承認申請は「購買⇔品質部門⇔設計部門」自動通知
・サプライヤー変更時に帳票自動生成

こういった「現場で止まる」「伝言ゲームになる」リスクを見える化する仕組みづくりが効いてきます。

現場教育の再設計 ―「なぜ手順が必要か」まで腹落ちさせる

手順書を配るだけでは「作業者の納得感」につながりません。

なぜ設計変更承認フローがあるのか、
なぜ代替品が安全・品質に影響するのか、
過去にどんな重大事故があったのか――

これらを現場ミーティングやeラーニング、事故事例共有会で定期的に浸透させましょう。

特に「作業現場のリーダー」が率先して“隠す文化→伝える文化”へシフトすることが現場改革の要です。

「内部監査+サプライヤー監査」の連動強化

・期初または定期的に“部品管理の監査計画”を立案
・「現場在庫」「作業記録」「出荷ロット」を部署横断で追う
・サプライヤー監査でも代替提案時の承認ルール徹底を評価

現場単独での改善に限界を感じたら、サプライヤー巻き込み型の品質協議会、
またバイヤー企業とサプライヤーの定期レビュー会議でリアルタイム情報共有するのも効果的です。

デジタル化・自動化による「昭和的管理」からの脱却

ペーパーレス・クラウド管理による可視化

・部品承認、ECO履歴は全員がクラウドで即時確認可能
・設計図と部品マスターを紐づけて差分検出を自動化
・QRコードやIoTで現場在庫のリアルタイム監視

こういったペーパーレス施策を導入することで、「誰が、いつ、どこで変更したか」「このロットは大丈夫か」をひと目でチェックできる環境を作れます。

AI・RPA活用によるミス検知&アラート

・部品受入時や出庫時の手動記録ミスをAIで検知
・承認フロー抜けや、意図しない代替をアラートで警告
・サプライヤーからの未承認品納入時に自動アクション

こうした仕組み化によるエラー抽出こそ、昭和的「現場の目」や「勘と経験」に依存した管理体制から抜け出す突破口となります。

今後の展望:現場と経営をつなぐ「変革型バイヤー」の重要性

社内バイヤー・購買担当の新たな役割

調達購買部門は単なる価格交渉役ではありません。

・現場の声を聞き、ミスやヒヤリハットの本質を分析する
・サプライヤーとの情報共有でリスク発見力を磨く
・バイヤー企業なら社内展開しやすいアウトプットを整える

これからは「現場と設計・品質を橋渡しするコミュニケーター」として、
社内トラブルの未然防止や早期発見にコミットするバイヤーが求められます。

まとめ:クレームは現場成長の最高の教材

代替部品の未承認使用によるクレームは、製造業に“ありがちなトラブル”であると同時に、組織全体の成長に向けた貴重なチャンスです。

あえて「全ての業務に完璧を求める」体制でなく、
現場のヒューマンエラーを柔軟な仕組みで補うデジタル変革と、現場に根ざした教育・文化の刷新。

この両輪があってこそ、製造業とバイヤー・サプライヤーの相互信頼の土台が築かれていきます。

現場で働く方も、バイヤーになりたい方も、サプライヤー担当者の方も。
ぜひ「未承認部品クレーム対応」というテーマを、自社の成長ストーリーの起爆剤に変えてください。

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