投稿日:2025年9月3日

消耗品OEMにおけるデザインと機能性の両立ポイント

はじめに:消耗品OEMの時代背景と業界動向

消耗品OEM(Original Equipment Manufacturer)は、今や多くの製造業が海外との競争やコスト削減、高品質の両立を図る中で、なくてはならない事業形態となっています。
しかし、一方で製造現場には昭和から続くアナログな風習や、属人的なノウハウ至上主義が根強く残っているのも事実です。
そんななか、「デザイン」と「機能性」を両立させることは大きな課題となっています。
本記事では、現場目線に立ちつつ、新しい地平を切り拓く考え方で、消耗品OEMにおけるデザインと機能性を両立させるポイントを探ります。

消耗品OEMで求められるものとは何か

消耗品OEMは、取引先ブランドの指示や要望をもとに、人知れず製品を安定供給するのが、一般的なイメージかもしれません。
ですが、ただ言われた通りに作るだけでは、激しい競争の中で選ばれ続けることは難しいのです。

機能性の追求:現場主義の本質

なにより大切なのは、使い勝手や安全性、コストを徹底的に追求する機能的視点です。
たとえば工場で毎日使う消耗品なら、少しの工夫で作業効率や品質に大きな差が出る場合があります。
私の経験では、「本当に現場で使えるか?」「想定外のトラブルに強いか?」という目線が欠かせません。
「昔からこれで良かったから…」に甘んじず、現場ヒアリングや実際の観察を繰り返すことが肝要です。

デザインの新しい潮流:競争力の源泉

最近では消耗品といえども、顧客のブランドイメージや職場環境、サステナビリティへの配慮といった「デザイン」的視点が求められています。
目に見えるパッケージだけでなく、「使いやすいデザイン=作業負担の軽減」「間違えにくい設計=ヒューマンエラー低減」といった、機能美と融合した新しい価値を提案できるかが、OEMメーカーの競争力に直結します。

サプライヤー・バイヤー双方で「真の価値」を考える

消耗品OEMでは、バイヤーもサプライヤーも「最安値」に目を奪われがちです。
しかしこれからの時代は、「現場の課題をどう解決するか」「どこまで寄り添えるか」が問われます。
これを突き詰めれば、製品自体だけでなく、それを通じて得られる体験価値まで提案することが、付加価値の本質となるのです。

昭和的なアナログ業界からどう抜け出すか

消耗品OEM業界には、いまだにFAXでの受発注や、スキルの見える化がされていないなど、アナログゆえの非効率が多く残っています。
こうした現場の課題を解決せずして、デザインと機能性の両立は実現しません。

なぜアナログは現場に根付くのか

理由は大きく2つあります。
一つは「失敗が怖い」「変化の手間やリスクを取りたくない」といった心理的な壁。
もう一つは、「現場が本当に納得する新しい仕組みを作れていない」ことです。

かつて私も、生産管理の自動化システムを導入した際、現場リーダーが「今までの紙と鉛筆が一番分かりやすい」と反発した経験があります。
しかし、一つ一つ現場の悩みや要望に耳を傾け、ともに小さな成功体験を積み上げていくことで、自然とデジタルの価値が浸透していきました。

現場と連携した開発フローの重要性

消耗品OEMでデザインと機能性を両立するためにも、設計・製造部門だけではなく、生産現場、品質管理、物流、場合によってはエンドユーザーまで巻き込んだ「バリューチェーン全体での連携」が鍵になります。

開発初期から現場スタッフを交えて試作やユーザーテストを行い、本当に現場で使いやすいか、不安全行動を引き起こさないか、手順が分かりやすいかを徹底的に検証します。
ここで得られた「現場知」をデザインや仕様に反映できれば、一気に他社との差別化が図れます。

デザインと機能性を両立させるための5つの実践ポイント

これまでの経験や成功・失敗事例から、実践すべきポイントを5つにまとめます。

1. 機能定義を現場視点で明確化する

最終的に必要な機能は現場が決めます。
たとえば、手袋なら「グリップ力」「通気性」「装着のしやすさ」などのスペックだけでなく、作業中にどんな不満や困りごとがあるのかを定量的・定性的に洗い出すことが重要です。

2. デザイン思考で「使う人」に寄り添う

ユーザーがどう感じ、どう行動するかを徹底して想像します。
最先端のデザイン性を追求するだけでなく、「パッと分かる識別性」「持ちやすい形状」「エラーが起きにくい工夫」まで、細かなポイントを現場ヒアリングや観察から抽出しましょう。

3. 試作とフィードバックで磨き上げるPDCA

紙上での設計や本社の会議室での議論にとどまらず、サンプルを現場に持ち込み使ってもらい、毎回フィードバックを得ましょう。
この現場PDCAを高速で回すことで、はじめて「本当に使える消耗品」に近づきます。

4. コストと品質のバランス=QCD最適化

バイヤーとしてはコスト削減が大命題となりますが、現場では「安かろう悪かろう」では意味がありません。
QCD(Quality, Cost, Delivery)の最適解を求めて、仕様や工程ごとにコストダウンの余地を厳密に洗い出し、必要な品質を維持したまま余分な機能・工程をカットする工夫が求められます。

5. サプライチェーン全体での情報共有と協力

サプライヤーとバイヤーが目的やゴールを共有し、ロスや不要なコストを「仕組み」で減らす仕掛け作りが重要です。
たとえば、受発注や在庫管理をデジタル化して情報の透明性を高めたり、共同開発で双方が納得するスペックやコスト目標を握ったりすることで、無駄な摩擦を減らせます。

ラテラルシンキングで新たな解決策を発掘する

変化の激しい今だからこそ、固定観念にとらわれず“横断的(ラテラル)思考”で解決策を考えていくべきです。
たとえば、他業界のデザインや工程改善ノウハウを、消耗品OEMにも応用できないか考えてみる。
また、IoTやビッグデータといった最新技術を、消耗品の仕様最適化や使用状況の可視化に生かすアイディアも考えられます。

異業種連携の可能性

最近では、異業種と組んだ新規事業や新たな材料開発の事例も増えています。
消耗品においても、異業界の課題解決法や最新のデザイン思考からヒントを得ることで、従来にはない機能美や製品開発が生まれるはずです。

デジタル化・自動化でアナログの壁を突破

ペーパーレスの受発注、RFIDによるトレーサビリティ、AIによる需要予測といったデジタル化の波は、消耗品OEMでも確実に競争優位になります。
現場起点のデジタル導入で「いつも誰でも確実に高品質」を実現しやすくなりました。

まとめ:現場力×デザイン思考でこれからの消耗品OEMを切り拓く

消耗品OEMにおけるデザインと機能性の両立は、単なるコスト競争や仕様確認のみに留まる時代を終え、「現場発の気づき」と「使う人への共感」をもとに新しい価値を生み出す挑戦だといえます。
バイヤー・サプライヤーどちらの立場であっても、従来のやり方に縛られず、現場からの声を“デザイン”に落とし込み、PDCAを回し、異業種やデジタルの知恵も積極的に取り入れていく姿勢が、これからの現場競争を勝ち抜く鍵となるでしょう。

消耗品の世界にも、「自分たちは変わっていい」「現場がもっと輝くためのデザインができる」という新たな発想を、皆さんと一緒に考え、カタチにしていきたいと願っています。

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