投稿日:2025年9月6日

海外工場と国内工場を比較したペット用品OEMのメリットとデメリット

はじめに:製造業の現場視点で考えるペット用品OEM戦略

ペットブームの拡大とともに、ペット用品市場は近年ますます多様化しています。

ペットフードからトイレ用品、ケアグッズまで、その種類は実に様々です。

新規参入者やブランドは、OEM(相手先ブランドによる製造)を活用しスピーディーかつ効率的に商品展開を実現しています。

ですがOEM先を選ぶ際、海外工場と国内工場のどちらを選ぶべきかは、今も多くの現場担当者やバイヤー、サプライヤーにとって大きな悩みの種です。

昭和型の「顔が見える安心感」を重んじる風土が残る一方、グローバル化や自動化推進の流れもますます加速しています。

本記事では、20年以上製造業の現場を歩んできた実務目線から、海外・国内工場の比較を踏まえたペット用品OEMのメリット・デメリットを深掘りします。

また、バイヤーが求める“本音”、昭和から続く業界独自の商習慣、そしてサプライヤー側に求められる適応力についても詳しく解説します。

ペット用品OEM市場の現状とOEM活用の意義

ペット用品OEMが拡大する背景

かつてペット用品といえば、限られたメーカーが大量生産した汎用品が店頭の大半を占めていました。

しかし近年は、個性的なブランドや機能特化型の商品が続々と登場しており、小ロット・カスタマイズ・多品種少量生産のニーズが急伸しています。

OEMを活用することで、ブランドオーナーは高額な自社工場投資や人員確保の負担なく、コンセプト・仕様にフォーカスして商品開発を進めやすくなりました。

この流れは今後も加速すると見られます。

調達購買・生産管理の現場で求められる能力

取引先からは「低コスト・高品質」「短納期・小ロット」「高い柔軟性」といった点が総じて強く求められます。

バイヤーや生産管理担当者は、価格交渉力のみならず品質保証体制やリスクマネジメント、サプライチェーン全体を俯瞰できる幅広い知見と現場感覚が問われる時代です。

サプライヤーとしても、時代の変化や業界再編に粘り強く適応し、従来の“人のつながり”を尊重しつつも、合理的・科学的な視点へのアップデートが不可欠です。

海外工場OEMのメリットとデメリット

メリット:コスト優位性と生産能力

まず最も大きな魅力は「コスト競争力」です。

中国、東南アジアなど人件費の安い国では、同等仕様の商品を日本よりも低コストで大量製造できます。

特に成形品やテキスタイル系商品、量産型ケアグッズなどは現地の大規模工場のラインを活用することで、調達コストを大幅に圧縮できます。

加えて、海外大手工場は生産キャパシティがケタ違いに大きく、大規模需要にも迅速に対応できます。

メリット:製品多様化と独自技術へのアクセス

東アジアや欧州の工場では、日本未参入の特殊技術やユニークな素材、先端プロセスを持つ場合が少なくありません。

こうした現場とつながることで、競合差別化を実現した独自商品開発が可能です。

また、現地の流通企業とのネットワーク構築による新市場開拓も視野に入れることができます。

デメリット:品質管理の難しさとリスク要因

一方で最大の課題は“品質保証の壁”です。

現場監督や検査基準に日本流の厳格さを求めても、意識や慣習の違い、語学・ITインフラ環境のギャップによって、安定的なQC(品質管理)の確立には手間と時間がかかります。

「検査書類は合格だが現品はNG」「途中工程や原料の証跡が取れない」「ロットごとにバラつきが激しい」など、現場でしか気づけないトラブルも発生しがちです。

サステナビリティ対応や労務環境など、ESG対応リスクも今後は無視できなくなっています。

デメリット:商習慣・リードタイム・文化的障壁

海外OEMでは、文化・商談スタイルの違いによる誤解やトラブルも絶えません。

交渉過程での“阿吽の呼吸”や書面にしづらい合意事項など、昭和型ものづくり現場で重視される「暗黙知的なコミュニケーション」が通用しづらいのです。

また、海外生産品は輸送リードタイムが長く、燃料費や国際政治リスクによる急なコスト変動にも晒されます。

コロナ禍におけるロックダウンや物流混乱を経験した現場担当者ほど、この難しさを痛感しているはずです。

国内工場OEMのメリットとデメリット

メリット:品質安定性と柔軟な生産対応

国内工場の大きな強みは「現場を自分の目で確かめられる安心感」と「安定した品質」です。

細やかな仕様変更や小ロット対応、“思いついたらすぐ現場と打合せ”といったフットワークの軽さは、昭和からのものづくり文化として強く残っています。

トレーサビリティや細かな工程管理も徹底しやすく、重大な品質クレーム、リコールなどリスクが大きい分野では今も国内生産が主流です。

また、物流リードタイムも短く、異常発生時の対応スピードは他の追随を許しません。

メリット:信頼構築と柔軟性、商習慣の一致

昭和時代から続く“顔を合わせた商談”や“人づきあい=信用”の文化は、今も根強く残ります。

仕様に現れない現場独自のノウハウや、お得意さま同士の緊急時協力など、長期的な相互利益重視の志向を共有しやすいのも国内OEMならではです。

契約文言だけでなく、「やると言ったことはきちんと守る」という現場感覚が通じやすい仕組みは、長期安定供給を重視するバイヤーにとって心理的メリットが大きいでしょう。

デメリット:コスト高・生産キャパシティの限界

一方、コスト競争力はやはり海外勢に劣る現状があります。

人件費・エネルギーコストの高騰、24時間稼働困難な働き方改革、人材確保の難しさなど、国内製造業が直面する構造的課題は年々深刻化しています。

さらに規模の大きいOEM案件や一括大量生産の案件では、生産キャパシティ自体に物理的限界がある場合も多いです。

このため「シリーズ主力品は海外で」「新商品や高リスク品は国内」といった柔軟な使い分けが実際の現場で採用されています。

デメリット:イノベーション対応の遅れと旧態依然の商習慣

日本の製造現場は“品質優先”を徹底する反面、海外の躍進工場に比べ新素材・製造DX・自動化対応のスピードで遅れがみられる現実も否めません。

例えば欧州や中国では、生成AI・IoTによる生産最適化やロボット導入が急進展していますが、日本の中小工場では投資負担や社内文化の壁から導入が進みづらいのが現実です。

また、昭和型の上意下達・根回し・ハンコ文化など、非効率な商習慣が根強く残る現場も少なくありません。

この点をどうアップデートしていくかが国内OEMサプライヤーにとっての大きな課題です。

バイヤー的視点からの最適解と現場がとるべきアクション

総合的なマルチサプライヤー戦略の構築

バイヤー側に求められるのは、コスト・品質・納期・リスクといった複数の要素バランスを柔軟に考慮し、海外・国内OEMを適材適所で組み合わせることです。

“価格だけ”“品質だけ”といった単純基準ではなく、用途や納品地域、リスクアセスメント、BCP(事業継続計画)対策を踏まえ中長期的視野で調達構造を設計する視点が不可欠です。

新規調達先選定時には、見積だけではなく
– 送付サンプルの実見・比較
– 現地工場監査
– 品質保証体制の実地確認
– サステナビリティポリシーの有無
など“目で見て・肌で感じる”現場感覚が今も重要です。

サプライヤー側に求められる現場変革と連携力

サプライヤー側は、昭和から続く“信用・長期取引重視”の価値観を失わず、変化に対応する柔軟性と技術革新への前向きな姿勢が求められます。

例として
– 新素材やペット関連法規への迅速なキャッチアップ
– 海外基準をクリアする品質管理・情報開示体制の整備
– アナログ商習慣からデジタル化への転換
– 小ロット・短納期生産の自動化設備導入
– 自社開発&海外協業による商品バリエーション強化
などが今後ますます重要になります。

また、多様化するバイヤー側のニーズをよく知り、現場担当者同士の“腹を割った対話・提案力”が信頼構築のカギを握ります。

まとめ:これからのペット用品OEM調達戦略とは

ペット用品業界のOEM戦略は、ますます複雑化・多様化しています。

昭和型“人ベース”の安心感も、グローバルな効率重視も、決して一方だけでは失敗しやすい時代です。

国内外双方のOEM工場のメリット・デメリットを正しく見極め、現場目線の実践的な連携体制とリスク分散を実現することが重要です。

最後に、製造業の発展は“現場の知恵”と“外部との柔軟な連携”、その両輪あってこそ生まれます。

バイヤーやサプライヤーを目指す方は、調達購買・品質管理・生産管理など幅広い職能と現場経験を積むことで、変化の時代にも強い製造人材として活躍できるはずです。

“昭和の安心”も“令和のグローバル知見”も融合した、新しいペット用品OEMパートナーシップの構築にぜひチャレンジしてください。

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