OEMペットケア用品における成分表示と安全性確保の重要性

はじめに：なぜ今、OEMペットケア用品の「成分表示」と「安全性」が重要なのか

近年、ペット需要の高まりとともに、ペットケア用品市場は著しい成長を見せています。

国内外問わず、多くの新規ブランドやサプライヤーが誕生し、その多くがOEM、いわゆる他社による製造委託によって商品供給を行っているのが現状です。

しかし、消費者の目が厳しくなる中で「成分表示の正確性」や「製品の安全性確保」という製品本来の価値が今ほど問われている時代はありません。

これは一過性の流行ではなく、業界全体の成熟と市場における信頼担保のために越えねばならない大きなハードルです。

本記事では、20年以上製造業の現場で培ってきた経験をもとに、OEMペットケア用品製造における成分表示と安全性確保の重要性、および現場で直面する課題・実践ポイントについて、現場目線で深掘りしていきます。

バイヤー、サプライヤー、そしてこれから製造業に携わるすべての方にとって、身近かつ現実的で本質的な「気づき」と「ヒント」になることを目指します。

OEMペットケア用品の基本構造と市場動向

OEMペットケア用品の製造フロー

OEM（Original Equipment Manufacturer）によるペットケア用品の開発では、主に以下の流れで商品が作られます。

1. バイヤー（ブランドオーナー）が市場ニーズを基に商品企画を立案
2. サプライヤー（受託メーカー）が要望に応じて処方設計や試作、品質規格を設定
3. 成分調達→製造→検査→パッケージングという工程を経て製品化

この過程で最も重要なのが「成分選定」と「品質管理」ですが、それぞれの役割や責任範囲が明確でないまま、価格だけでサプライヤー選定が進むケースも少なくありません。

業界特有のアナログ構造と現代的ジレンマ

昭和世代から続く製造業現場では、今なお「昔のやり方」「慣習」に頼る場面が色濃く残っています。

とりわけペットケア用品のOEMでは、食品・化粧品よりも法規制が緩い側面もあり、成分表記の曖昧な商品や、サプライヤー主体の“お手軽開発”がまかり通る例も。

売上・利益の最大化を志向するあまり、バイヤー側の「安価・短納期志向」とサプライヤー側の「効率至上主義」が合致し、製品の本質的な信頼性や安全性は後回し――。

こうした現状に強い危機感を抱く現場担当者は少なくありません。

成分表示と安全性――現場で本当に起こる“リアルな課題”

なぜ成分表示が「形骸化」するのか

OEMにありがちな問題として、成分表示の“おざなり”があります。

例えば、バイヤーから提示された仕様書に「天然由来エキス○○％配合」とだけ記されていた場合、その裏にどんな原材料が、どんな濃度で使われているのかをサプライヤーと十分に議論せず、書類上「それらしい表現」で済ませる場面が多々見受けられます。

さらに、ロットごとの微妙な原材料の違いを吸収するため、「微量成分は開示しない」「主要成分だけ記載」といった省略も暗黙の了解とされがちです。

この“慣習”は、消費者を守るべき最終的な成分表示の信頼を著しく損ねる原因となります。

安全性確保の難しさと現場での対応

OEM現場では「ラベル表示上」では問題なしでも、実際の製品に問題が発生した事例（アレルギー反応や皮膚障害、使用後の変色・異臭など）は珍しくありません。

原因には、主に次のような現場事情が潜んでいます。

– コストダウンのための原材料グレード変更
– 製造ラインでの洗浄不十分やコンタミ（異物混入）
– 試作時と量産時の設備・工程違いによる品質ブレ
– サプライヤーからの報告遅延・不十分

サプライヤー側の認識とバイヤー側の要求レベルがずれたまま「まあいいだろう」で流してしまう“現場感覚”が、製品事故に直結してしまうのです。

法規制やガイドラインの現状

人用コスメ・食品と比べて、動物用のケア用品の法規制はまだ曖昧な領域が残っています。

日本国内では農林水産省による動物用医薬部外品の規制、各自治体による指導等がありますが、「雑貨」として流通させる場合には成分詳細や効能の根拠を問われない“グレー商品”も少なくないのが現実です。

消費者の「安心安全志向」が高まる中で、今後いっそう透明性・信頼性が求められることは間違いありません。

現場で実践すべき「成分表示・安全性確保」のポイント

1. 成分の出所・証明書類の徹底取得

信頼性の高いOEM構築のためには、「原材料のトレーサビリティ（追跡可能性）」が不可欠となります。

具体的には以下の取り組みです。

– 原材料仕入先・ロットナンバー・分析証明書（CoA）を全て履歴管理する
– 受託側サプライヤーに一次・二次サプライヤーの証明書提出を求める
– 法規対応成分（危険物や規制対象添加物etc.）は国際標準と照合

これら情報をもとに、「正しい成分表示」を作成し、必要に応じて即時開示できる体制が信頼構築への第一歩です。

2. 製造現場でのダブルチェック・現物確認徹底

昭和的な現場では「書類はきれいだが現場はグレー」ということも起こりがちです。

重要なのは、書面上だけでなく実際の現場を同行して“現物確認”を行うことです。

– 原材料の実物サンプル確認
– 製造工程内での異物検査（目視、検出器両面）
– ロットごとの物理的・化学的検査結果の現物目視
– 清掃・環境維持手順の現場立会い

サプライヤー任せではなく、バイヤー自らが現場に足を運び「現物主義」に立つことが、取引関係に「信頼の空気」を生み出します。

3. 製品品質・安全性の「二重三重のガード体制」

量産開始後でも油断は禁物です。

安定品質・事故防止のため、次のような体制が有効です。

– 毎ロットごとの成分サンプリング検査
– 外部専門検査機関での安全性試験・アレルギー試験
– 消費者クレーム情報の即時フィードバック体制
– 製品リコールフロー（万が一事故発生時の対応計画）

現場レベルのノウハウとしては、「事故は必ず起きる」「だからこそ起きても迅速対応できる仕組みを準備する」ことが、長期的なブランド信頼を生み出します。

4. 属人化からの脱却・デジタル化の推進

従来の“昭和的”な現場ではベテラン担当者の勘や経験則が幅をきかせがちですが、これらはサプライチェーンの拡大・複雑化時代にはリスク源ともなります。

– 成分管理・工程履歴をすべてデジタル化し、誰でも追跡可能な台帳構築
– 検査記録・事故対応マニュアルをデータベース化
– バイヤー・サプライヤー間の定例レビュー会（オンライン推奨）

DX（デジタルトランスフォーメーション）を積極導入し、脱・属人化体制を進めることが、業界全体の底上げに直結します。

OEMサプライヤー・バイヤー双方が心得たい“現場目線”のアドバイス

サプライヤーの立場から：

– コスト・納期だけでなく「現場を見せる・共有する」価値を伝える
– バイヤーへ成分提案時、なぜその成分なのか、安全面の裏付けを論理的に説明する
– 「隠れた工程」「副資材」も含め積極開示し、信頼を得る

バイヤーの立場から：

– 「わかっているだろう」「任せておけば大丈夫だろう」といった作業分担意識は捨てる
– サプライヤーと一緒になって成分選定・現場検証・品質保証体制を築くスタンスが重要
– 消費者からクレーム時も逃げず、原因究明と再発防止策の徹底を最優先する

まとめ：未来志向の「安全・信頼」OEM現場へ

OEMによるペットケア用品市場は今後ますます成長が期待されるフィールドです。

しかし、消費者に寄り添った「透明性」「安全性」への取り組みを怠れば、いずれ業界全体が信頼を失い、淘汰されていく時代が確実にやってきます。

成分表示と安全性確保は、単なるルール遵守やコスト要件ではなく「人と人」「現場と現場」の信頼構築に直結します。

長年現場に携わって痛感するのは、データや書類以上に現場担当者の“熱意”や“謙虚さ”、そして「事故がないように」を日々徹底する地道な努力こそが、真のブランド価値を育みます。

サプライヤーもバイヤーも、そしてこれからOEMビジネスを志すみなさんにも、現場が持つ「生きた知恵」を共有し、令和の時代にふさわしい新しい信頼のカタチを、一緒に創っていきましょう。